谷中を歩く…ああ日本、歴史の深さ、すてきすてき!
日本に帰国中、しばらくぶりであった友人が「生まれた国はいいものよ。外国で一人で暮らすあなたのことを思うと,とても心配よ。帰っていらっしゃいよ」
「そうね今度は住む家をさがす目的で日本に帰ってくるわね」
と笹塚の駅でニューヨークで暮らしたことのある友人と名残惜しく別れた。
その夜中の12時過ぎ、彼女からのお電話で
「私の姪の住んでいる家の1階があいているそうよ。見るなら明日連れて行ってあげるわ」 私は翌日ニューヨークに帰ることになっていたが「見てみるわ」と答えた。
西日暮里駅から特別に印象的でもない道を2階建ての家の2階に夫と娘、3人家族で住んでいるという家まで一緒に歩く。お墓を囲んだ塀の上から、塔婆がカタカタと音を立てて揺れている細い通りの前にその家はあった。
家中をめぐったあと、幸福に暮らせる予感がした。この日から6ヶ月後に私は谷中の住人になった。
下町とはどういうところかも知らず、廻りの地図も知らず、日本のことを無知な私が半世紀近く住んだニューヨーク生活を引きあげることは、ニューヨークにきて住み始めるよりも簡単なことではなかった。ニューヨークにいった時と同じようにトランク1つで帰りたかったが、それはまったく無理であった。
とにかく何も知らないニューヨークを3か月も上から下まで、西から東へくまなく毎日歩いたことを思えば、ここはとにかく怖いこともない優しい日本の町だ。
さっそく谷中めぐりをはじめた。
寺の多い町。何世紀も経た寺々はよく手入れされ、古ぼけていないのは凄いと思う。お墓の町。美しい塀のある町。石垣の町。路地の町。猫の町。坂の町。 見上げても、見降ろしても美しい町。日暮らしの里、日没の太陽にきらきらと輝く町。知らない人に挨拶をしたくなる町だ。
同じ道を歩いて眼があった人に
「素敵な町ですね」と言うと私の家までおしゃべりをしながらおくってくれた人、地図を自転車で届けてくれた人、美味しい店を教えてくれた人、僕の名前を言ってその人にぜひ会いに行きなさいと言った人。
知らない人に教えたり、分かち合うのは町を愛している人たちの誇りなのだろう。時がゆったりと幸福に流れている。
谷中の墓地でみつけた徳川慶喜のお墓は感無量だった。ついこの前ニューヨークを訪ねた友人に、ウオール ストリートのジョージ ワシントンの銅像の前で会おうというというと 「徳川慶喜より100年も前に生まれたアメリカ独立の最初の大統領の銅像の前で会うなんてとても素敵なアイデアね。」といった友人を思い出す。墓地は人影もなく湿っぽく、暗い感じがした。
谷中には猫が多く、その昔墓地に猫を捨てたので昔から猫が多いそうだ。ネコ グッズの店が多い。何も知らないで歩くのも感激があり、想像力が働き、また来るぞと犬がおしっこをかけて歩く気分で振り向き振り向き歩くのはとても楽しい。
谷中の本屋でこの辺のこと勉強するよい本ありますか?」と聞くとおじさんは「ザ・この本です」 ザとは言わなかったけれども、これが森まゆみさんの”谷中スケッチブック!”と本を振り上げて持ってきた。
ウーンなるほどなるほど。そして”路地の匂い 町の音”を読む。
下町発見。森まゆみさんは素敵な人だ。彼女の心意気に 「そうか!こういう人もいるのだ!」と嬉しくなった。心から敬愛しちゃう。有名でない普通の人が好きというのは何十年も感動してきたアメリカで学んだ私の価値観と同じだ。コミュニティを考える人は日本人では少ないのではと思っていたけれど、今の時代、彼女の愛情に支えられた町だとおもう。素敵な貢献をしている。
前から日本に住んでいたら彼女の自転車の後ろについて谷中めぐりをしたかった。残念だ。
これから彼女の文献の後を追って谷中を堪能したいと思っている。森まゆみさん、あなたはすてきです。ありがとう。
「森まゆみさんという人はすばらしい!」と友人に電話をかけ回ったら森まゆみさんを知らないのは私だけだった。 本当に恥ずかしい。ごめんなさい。
でも心は躍る。
森まゆみさん、ありがとう!あなたの足あとをたどって歩く楽しみは日蓮上人のご縁があるかも。谷中に住むようになったのは人生最大のプレゼントだと思う。
谷中は猫が多い。可愛い声で寄ってくる。 ニューヨークでは週末猫愛好家に貰い手を探している。
ニューヨークのレストランとの広告マン パークアベニューのインスタレーション:キティちゃん
江戸の町に時にはかっこいい新しい看板もある。三崎坂にて。 ニューヨークのアーチストのアトリエの前ににて
小林恵のラグ・デイ実験教室
お知らせ:
手作りはストレス解消にもなります。誰も私に関心を持ってくれないと悩まないで、手作りで自己主張をしてみましょう。150年前からアメリカ人は必要と機能を兼ねてキルトやラグを作りました。
集まって作る。この手作りが開拓時代に必要であった助け合い、コミュニティの集まりが社会現象となってアメリカで花咲きました。
名もない人の手作りが今も人々の心を温めてくれます。匠の世界は日本の宝です。しかし時間がない。すでにほど遠ーい世界!
”誰でも作れる” "貴女らしさ” を発揮し、表現することは楽しいことです。評価は自分でしましょう。アメリカらしい自由さでラグ デイに参加し、楽しみながら作り皆で励まし合いましょう。
ラグ デイ お問合わせはホームスパン 03-5738-3310 原、稲船まで