小林恵のNY通信

NY在住47年、2011年より東京谷中に居住。創造力をのばすためのエッセンス、スパイスをいれた私の暮らしの手帖です。

「セキュリティ」

2005-07-26 07:13:42 | ニューヨーク暮らしの日々
自由を守り通す!
 
 マンハッタンに向ってたいまつを掲げる自由の女神を、そばで仰ぎ
見た人はどんな人でも何らかの感動を呼び起こすと思う。 
 地上から尖塔のたいまつまで92.99m,世界で一番大きい彫刻だ。
大きさで感動するのではない。それぞれが思うアメリカの”自由と希
望”失意の人たちの心にも灯火を照らし続けるヒューマニズムに感
動するのだ。アメリカだけの女神ではない。移民の国アメリカの心の
女神、自由のシンボル、みなで共有する世界の女神だ。 宗教的な
理由、政治的な理由、職をもとめて、または家族をたずねて世界中
からアメリカにやってきた人たち。自分の国をあとにした見知らぬ国
への旅にはそれぞれの運命的センチメンタルジャーニーがあるだろ
う。
 1892年から1954年まで歓迎の手をさしのべる女神の元に、移民し
てきた人たちは12ミリオンといわれている。  自由の女神は理想と
自由を守り通してくれるのだろうか?  しかし、9月11日以来、世
界中が変わってしまった。人の持つ包みの中を疑わねばならない不
幸な時代になってしまった。高邁な理想を掲げる自由の女神を訪ね
る観光船の両側には、ライフル銃が前後に取り付けられたコースト
ガードの護衛船が付いてくる。破壊から何を得るのだろうか。恐怖
から何を得るのだろうか。やられたことを忘れないといって何を得る
のだろうか。 質問の解決がないまま莫大なセキュリティの予算が
増えていく。

「空いているスペースを有効につかう」

2005-07-23 01:18:55 | ニューヨーク暮らしの日々
「空間を売り経費を稼ぐ。

「コミュニティの共有アイデアで社会に還元する」 
 ニューヨークのスペースが高価になってから数年たつが、現在も下
がりそうにもない。現在はスペースの値段の単位が1フイート(約30
センチ四方)になり、マンハッタンが一番高く、アパート1部屋2.000ド
ルはするので、若い人の年間6万ドルの最低初任給では暮らしはな
りたたない。100%市の収入になるのは土地、家屋税以外にないの
で現在の建築ブームはニューヨークが力を入れている証拠だ。
 
 また土曜、日曜空いたパーキング場や学校の校庭は蚤の市になり、
市へそしてコミュニティへ還元されている。コロンバスアヴェニューの
76丁目、公立学校PS44は、週末空いた校庭を蚤の市に開放し、近く
に住む人の楽しみの一つになっている。PTAが学校のために積極的
に協力し、蚤の市はマーケットをマネージする会社にまかせる。利益
は学校に還元し、校庭のワイヤーフェンスが立派になり、窓も直した。
それを見ていくのは本当に楽しい。

 多くの美術館もスペースを閉館後、公共に提供している。勿論スペ
ースによって値段も違い、寄付金の多い人が場所の選択、優先権を
持つ。パーティ、結婚式、ディナー、レクチャー、コンサートなど、スペー
スはフル回転している。市民に幸せを贈るスペースはアイデア次第で
市民に還元できるばかりでなく、失うものがない。再利用のアイデアが
働いているのを身をもって感じことは暮らしのエッセンスにもなる。
 
 セキュリティで難しい時代になったけれども、
日本も借りるのが不可能な高価な値段でなく、スペースを公共に還元し
、共有していけばもっと暮らしが豊かになるのではないかと思う。
 ”儲からないとやらない”というアイデアは寂しい。

「移民の嘆き」

2005-07-05 07:28:21 | ニューヨーク暮らしの日々

巨大ラットの発言
 
 私の住んでいるイーストサイド70丁目界隈にある大企業といえば
ABCテレビ局である。正面玄関前に歯をむき出し、両手をゴリラの
ように挙げている大ネズミ(ラット)が立っている。
 この巨大な風船ラットは抗議発言用のラットである。
「我々の会社にはラットがいる!給料不分立。社長の1分間の給料
を知っているいるか?」30人ばかりがプラカードをもってピケをはって
いる。
 数日前には7番街のブランドファッションメーカービルの前にこのラ
ットが立っていた。チラシには
「ニューヨークのど真ん中のこのビルで、臨時雇用者採用に不当エー
ジェントを使っている会社がある。オーバータイム無給、タックスが引
かれていないチェック、(タックスが引かれないのは社会保障がない
こと)明細書なしのタックス不正をやっている。該当者は税務管理所、
電話000へ。このチラシは雇用、デリバリー阻止のためではありませ
んと付記されている。 
 ファンシーなロックフェラーセンターでもラットがお目見えする。
「ニューヨーカーに告ぐ。 20ロックフェラープラザのクリスティーのボイ
コットに協力ください。クリスティーは危険な石綿撤回作業に社会保
障抜き、移民ワーカーを使っている不当会社を起用しています。
無責任なコントラクターを使わないようにプロテストします」 
 プロテスト用ラットを借用できない人たちはどうするのか。
言葉も出来ずコネクションもないドメスチックワーカー(メイド)から65
%ピンはねしている凄腕マダムもたくさんいるのが現実である。 
 ラット貸し出しのおじさんに聞いてみた。
「儲かりますか?」「儲からないよ!でも俺の仕事だからね」とウイン
クした。
  殆どのニューヨーカーはラットに無関心、無感情で通り過ぎて行く。


「世の中に役に立つことをする」

2005-07-02 03:41:06 | ニューヨーク暮らしの日々
生か死か。

スピードにかけた男のビジネス 
 ある日テレビのスイッチを入れると、ヴェトナムで傷病兵を病院に
飛行機で運んでいた男性が「生きるか死ぬか、早いか、手遅れか、
1瞬で決まる仕事を必死でやっていました。このコンセプトを仕事に
しようと思います。」と淡々と話していたパイロットの話は実に印象
的であった。
 1970年代の初め、ジョンソン大統領がヴェトナム戦争の苦悩にあ
えいでいた頃のことである。其の男フレッド・スミス(Fred Smth)が
設立した運送会社フェデックスは現在世界の200国以上、25万人
を雇用し、所有する飛行機は662機、45,000車、200万個を1日で
配達し、20ビリオンダラーのビジネスをしている。スピードとサービス、
信用、誠意、が企業理念である。 フレッド・スミスはエール大学卒
業後、ハーヴァードのロースクールに行く予定であったがヴェトナム
に徴兵されパイロットとして13ヶ月間、戦地から傷病兵を病院に運
んだ。この経験は学問より大きかった。1973年フェデックス創設。
 小さな4機のファルコンジェット機からスタートした。雇用人は自分
の車を持っていること、ピックアップと配達が出来ることが条件であ
った。

 私のブログ”お葬式の涙とお墓”のコラムにunknownさんからコメント
が入っていた。偶然に発見したという電力王、松永安左ヱ門
http://homepage1.nifty.com-matunaga)の言葉が書かれてあった。
 「人間はこの世に生を受けるがいつかは土にかえる。誰にでも出
来る後世への最大の贈り物は、その人が誠実に人生を生き抜くこと
であり、其の姿を身近な人に印象づけて、世を去れば充分である」
私も誠実に今後の人生を生きていこうと思っているーと書かれて
あった。  
 小さくてもいい。誠実で何か世の中に役立つことする人は何時の
時代でも心を打ち、感動を呼ぶものだ。