小林恵のNY通信

NY在住47年、2011年より東京谷中に居住。創造力をのばすためのエッセンス、スパイスをいれた私の暮らしの手帖です。

夏の味覚・トマトの美味しさ

2011-08-15 15:21:03 | 

 アッという間に出来る美味しいもの

 夏の食卓で最も簡単で美味しいトマトサラダは友人たちも喜んでくれる。

  
 湯むきしたトマトをスライスし、つぶしたガーリック、ディジョン マスタード、ごま油で練ってトマトに飛ばしグリーン(かいわれ)をかけたもの。ゆるいドレッシングにするとトマトの汁トとで水っぽくなり食べづらくなる。


 谷中銀座のの野菜屋では産地が明記してあるのがうれしい。真夏に日本にいたことがないので谷中に住むようになってから形良い完熟トマトは買わずにいられな い。
いろいろの産地のトマトを試みている。

         
                    マンハッタン、週末のストリートマーケット

   
  ニューヨークでこの数年来お目見えしている黒味がかった無骨なトマトはまだ日本には見かけないけれど、味わい深いトマトだ。ヘヤールーントマトといって交配されていない量産が出来ない原種だ。残念ながら一個5ドルぐらいでちょっとお高い。

 トマトにはビタミンCも豊富、赤い色素リコピンは生活習慣病の原因となる活性酸素を消去する働きがある。原産は南米ペルー。長い間毒だと信じられ、観賞用から食用になったのは16世紀のイタリア。18世紀になって一般化した。世界中に8,000種類以上あるそうだ。

 グルメ大統領トーマス ジェファーソンもモンテセロの菜園でトマトを栽培していたけれども彼の料理の本にはレセピーが出ていない。

 1796年に発行されたアメリカ最初のクックブック、アメリア シモンズの本にもトマトは登場してこない。

 1824年、「ヴァージニアの主婦」という最も影響を及ぼした19世紀の料理本の著者、トーマス・ジェファーソンの従弟と結婚したメアリー ランドルフ(MaryRandolph)はトマトケチャップを作っている。

 ターシャ テューダーさんの料理の本にはトマトサラダが登場し、自分の庭で育てた完熟したトマト程美味しいものはないといっている。湯むきしたトマトをスライスし、フレンチドレッシングをかけバジルを散らすだけ。
 ターシャさんの料理はニューイングランドのベーシックで簡単なものが多い。
池波正太郎が自分で作って食べた江戸の味のようなものだ。

 日本でもトマトが紹介されたのは明治以後のことである。最も一般がサラダを食べるようになったのは、20世紀になってからだ。

 アメリカのトマトはナショナル アイコンのようなもので、マックでなくともサンドイッチ
にはお馴染みのもの。私はトマトが挟まれているサンドは食べたくない。ツルリと抜け出したり、パンが水っぽくなり、他のものとまじわらず食べずらい。
またトマトと言えばアンディ ワーホルのキャンベル スープ缶。

 フイラデルフイアのキャンベル本社に行ったことがある。日本向けキャンベルスープのラベルのデザインのコンサルティングの仕事だった。デザインルームには日本のお椀を思わせる小どんぶりが50個ぐらい並べられていた。「どれかを日本向けスープ用に使用する器を選択してください」と。
「好きなものは何一つありません」と答えるとそばにいた全員が顔を見合わせ、ずっこけた。
「失礼だったかしら」というと「いえいえ、そのために貴女にたのんだのですから」と。
 日本なら趣味のよい犬、猫ちゃんでも喜ばないようなものだった。日本ではスープは洋食なので日本式にお椀に口を付けて頂きません」と説明すると、みな合点した。
 キャンベルは昔からグリコのおまけのようにキャンベル キットのあたりが付いていてその人形は子供たちに大人気。1869年にジョセフ・キャンベルがトマト缶を発売。1897年10オンス缶が10セント。1900年パリの博覧会で金メタルを獲得し、大人気になった人形だ。 1954年株式上場。1990年のトマトスープ缶の売り上げは20億ドルに登った。最も成功した広告の一つとされている。

 話しはついでになるけれど、当時の移民たちの暮らしの一こま。今のイタリアン ビレッジに続く移民たちに与えられたアパートが立ち並ぶ過酷な暮らしの内職。
    
 
写真:キャンベルキッズの足を作る移民家族。14,12,9才の家族。学校が終わると夜の10時まで内職が普通だった。1930年までの人形産業は商品化されないように、部分別に発注されていた。
(Hine Lewis Wickers;国会図書館写真部門・ワシントンDC.20540)
 
 
 
トマトの話しが飛んでしまうけれど、この秋銀座のミキモトで「子供たちに愛された
手作りから産業化への100年史」 1830年から1930年までのアメリカ人形100体、小林恵コレクションが展示される。その中にキャンベル トマトスープのアイドル人形、年代別に3つの人形が含まれている。歴史の陰には、そして会社反映の陰にはいつでも、どこでも起こっていることを知られる。

        
「写真:キャンベルキッド:1910年製キャンベルスープの宣伝用人形,
 ニューヨーク市、E.I.ホースマン社製。頭と手は合成物、布製木屑詰め胴体と湾曲した手足。身長29センチ。
オリジナルドレス。
アメリカの商業アイデアをも是非ご覧ください。」


お知らせ:

「アメリカ人形展:子供たちに愛された手作りから産業化への100年史」
       1830年~1930年まで。小林恵コレクション

場所:銀座ミキモトホール6F
日時:2011年 11月17日より12月6日まで。入場無料