小林恵のNY通信

NY在住47年、2011年より東京谷中に居住。創造力をのばすためのエッセンス、スパイスをいれた私の暮らしの手帖です。

「”サーモンの川のぼり”」

2010-11-12 22:18:30 | ニューヨーク暮らしの日々

時の流れ

 1昨日 映画プロデューサー, ディーノ デェ ロレンティス(Dino De Laurentiis)が91歳で亡くなった。1980年代に作られたハンニバルシリーズはいただけなかったけれども、私の青春時代を彩った忘れられない白黒映画、ヴィツトリアガスマンとシルバーナマンガーノの“苦い米”、
1954年に作られたフェリーニの ”ラ・ストラータ”や 1956年の ”カリビアの夜”など500以上の映画をプロデュースし、イタリアンフイルムのニューウエーブをを世界に確立した人だ。

 シルヴァーナ マンガーノと結婚し、孫娘 ジアーダ デ ロレンティス は現在食専門のTVに登場するイタリー料理のスターで、マンガーノとよく似ている。
 思い出して特記したいことは、1986年にニューヨークのコロンバス アベェニューにオープンした彼のイニシャルを取った高級グルメ殿堂、DDLがオープンしたことだ。
 彼が「グルメはこれからの世界を支配する」と予言した通り、現在はグルメの塊、グルメ団子という商品名が生まれるのではと思うほど、何がなんだか分からないグルメが普及している。
 刺身など生魚には回虫がうようよしているとニューヨークタイムスが書きたてた無知時代はどこえやら、得体のしれない国籍不明のすし屋はニューヨークのいたるところにできている。
 DDLオープン当時はニューヨーカーは時代の幕が切って下ろされたほど豪華グルメにショックを受けたものだ。
ローマのグルメ殿堂そのまま、どちらを見渡しても無言の感嘆詞がこぼれた。
 キャッシャーにはシルバーナマンガーノが立っていた。地下の調理室は牛1頭が調理出来る大きさのスチールテーブルがあり、その下の床には水の流れるとよがあり、調理道具の素晴らしさにも感嘆させられるものだった。
 しかし彼の先見あるヴィジョンは25年以上早すぎ、客は見るだけ、数年もたたないうちに閉店した。ちょうどニュースクールで大学のカリキュラムで学ぶ最初のニューヨークレストランスクールに行っていたときだったので、DDLがアパートから近いこともあり、通い詰めていた。映画のニューウエーブといい、グルメのニューウエーブといい、彼が亡くなり ”何事も早すぎでも失敗する”という教訓を得たが、グルメ時代を先駆けた凄い人だった。

 疲れると頭の切り替えに通ったのがラルフローレンのマジソンアヴェニュー、72丁目のお店。
その前はキッチンウエアのアンティック店だった。1967年にローレンがデザインした太いネクタイ
がブルーミングデールで大ヒットし、その後43年間もずっとファッション街道をまっしぐらに歩んでいる。最近オープンした店の向かいにあったマジソンアベニューのホームファニッシングの階はアメリカンアンティックがモダンにアレンジされ、才能と創造力の可能性を膨らませてくれる店だった。
 最近息子が参加し、ロンドンとニューヨークに豪華モダンエレガンス店をオープン。
サイバースペース、インターネット、ケーブル、印刷、ソーシャルミデアすべてを駆使したデジタル
マーケッティング、“アート&テクノロジー”をファッションから発言。
 私の20代に雑誌ハイファッションが誕生し、パリのデザイナーのエレガンスが輸入されて興奮した時と同じような時代を変えるエレガンスを感じ、エレガンスを忘れた現代ファッションの未来への可能性を提示している。4階から階段を下りながら店内をみるのもハッピーなひと時をすごせる。

 時代の流れを作った人の死や、子供に受け継がれアート&テクノロジーを駆使したデジタルユニバースを築いていく進行形のデザイナー、ラルフローレンの豪華なお店から帰り、
いま私のながいニューヨーク生活の月日を考えてみる。

 忙しい渦の中で今日とあしたを考えて暮らしたNYの暮らしは後悔なく本当に面白い。 
どこで暮らすか、これからの日々を考えながら、見知らぬ外国に飛び立った時と同じように希望と夢に燃えている。
 
 年を経て、サーモンの川のぼりよろしく、また日本を行きつ戻りつを続けるだろう。イクラのように背中一杯に子袋を背負って、これから出来ることをどこにいても精一杯やろうと思っている。


お知らせ
小林恵コレクション「アメリカ人形展」(1830年~1930年までアメリカ人形史)
会場:銀座ミキモト画廊
日時:2011年11月7日より28日まで

ラグデー:毎月1回ホームスパンで開催:11時~3時半まで 自由参加 (やれば誰でも出来る集まり)
問い合わせ:ホームスパン ℡:03-5738-3310    email:homspun <
hara@homspun.com>

 

 

 


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2 コメント

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お元気ですか? (mori s)
2010-12-04 20:34:36
恵先生

お元気でしょうか?

あと1年と少しで還暦にになる私ですが、恵先生をお手本に まだまだ出来る 人生を続けたいと思っています。四万十川を遡上する天然鮎や鰻のように 田舎にいても頑張って行きます。
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NY (小林恵)
2010-12-18 18:01:03
森澄子さま
嬉しいコメントありがとう。一生水を得て暮らしたいですね。年齢は関係ないと思いながらも現実はそうはいかなくなるでしょうが、澄んだ四万十川の水の様に
一緒に人生を泳いで学んで行きましょうね。恵
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