小林恵のNY通信

NY在住47年、2011年より東京谷中に居住。創造力をのばすためのエッセンス、スパイスをいれた私の暮らしの手帖です。

「アメリカで再認識:アメリカン フックド・ラグ」

2007-06-28 23:40:35 | フックド・ラグ

ラグに関して美術館でスピーチ
 ニューヨーク、アメリカン フォークアート美術館でのラグ展に先がけ、
オープニングに美術館で新進ラグアーチストたちのレクチャーがありま
した。写真はスピーチをした人たち:右からリンダ・コーグリン(Linda
Rae Coughlin), アリス・ルッデル(AliceRudell). エミリー・ロバートソン
(Emily Robertson), リンダ F・シュミッツ(Linda F.Schmitz) と小林恵。

リンダ R.コーグリン作: ”夫が長い間どうして私のやる事がきらいな
のか”分かりませんでした。ある日、卵の上を歩くようにすれば解
決する
事に気がつきました!と自分の心理を描写。

アリス・ルッデル作 ”タグボート”画家の彼女は自然描写が得意。

リンダ F.シュミッツ作:暴力を振るう父親、親子のトラウマを主題に
して作品を作り続けている。材料はすべてリサイクル化繊。

 私は「私が影響を受けた2人のアメリカ人」という題でスピーチをし
ました。
 その一人はアン・モフイット (Ann Moffitt)。 ニューヨークに来た年、
私は初めてのパーティですすめられたマティーニに酔い、廊下でぶつ
かったもう一人の金髪の酔っ払いと一緒に倒れてしまいました。
それ以来、彼女が3年前に亡くなるまで生涯のよき友人となりました。
メイン州にある彼女の別荘で毎年過ごし、ニューイングランドを通して
アメリカ人の暮らし方、クリエイティビティ、発明の才、創造力、オリジ
ナリティを学びました。
 
もう一人は私が 「アメリカ人形」 の本を出版した時、「アメリカ人でさ
え忘れている古い人形から発明の才能をよく調べて出版し、あなたの
研究している事はまさに自分のやっている国際文化交流と同じです」
と励ましのお手紙を下さった元アメリカ駐日大使、当時ハーバード大学
教授であったエドウイン O. ライシャワーさんです。アメリカに来る前に
”ニューイングランドを知らずしてアメリカを語ることは出来ません” と語
ったライシャワーさんの言葉が心に残っていたのも幸いなことでした。

 感動はエネルギーを生むと言われますが、何も知らなかった私はこ
の出会いから人生が変り、アメリカで感動の日々を送れるのも幸福な
人生といえます。

アメリカンキルト事典の出版(文化出版)で歴史を含む暮らしの中のキ
ルトを日本に初めて紹介してからすでに半世紀が過ぎました。
ラグもキルトと同じくアメリカを代表するクラフトで、アメリカの生活に密
着しています。誰でも好きなように作れ、下手上手の問題でないこと、
作る事の大事さを学びます。自分を表現できるのは作った人のみが味
わえる醍醐味です。キルトもラグも自分の家を美しく、そして楽し
く暮らすために
作られた暮らしの文化である事を忘れないでおきまし
ょう。

参考書:「アメリカンフックド・ラグ」 小林恵著 主婦と生活社 2002年
     「アメリカンキルト事典」    小林恵著 文化出版局   1982年

         「アメリカン・キルト」 小林恵著(草の根で社会を動かす針と布)
                             
白水社         1999年

 


「太陽の恵み・ニューヨークの青空マーケット」

2007-06-22 02:26:50 | 





太陽さん、有難う
 今年は6月に夏日が続き、その間に大雨があり、何処の街路樹も
緑滴る美しさ。夏の楽しみ新鮮な果物、野菜も青空市に並べられる。
 日本では熊が里に下り、人家を襲う。アメリカではムースが徘徊。
そのムースさんがTシャツのモデルになる時代に美味しい太陽の
恵みを味わえるのはありがたいこと。中でも写真の最下段右のバジ
ルの大束、直径が3センチ位で3ドル弱。夏の香り。箒にまたがり飛び
上がる前に魔法使いはバジルの汁を飲んだといわれる。飛び上がれ
ないけれども香りをかぎながらスキップして家に帰りたくなるほど鋭気
をもらう魔法の香りだ。大好きな夏。本格的夏の到来。



「ヒューマン ライト ウォッチ映画祭 2007」

2007-06-17 14:12:41 | ニューヨーク暮らしの日々

 
中国の工場風景 
 
ヒューマンライトのドキュメンタリー映画祭2007が今ニューヨーク
で開催されている。多くの賞を取ったカメラマン・エドワード バーティン
スキー、監督は女性のジェニファー ベーチュアルの「マヌファクチャー
ランドスケープ」工場風景というニューヨーク初公開のドキュメンタリー
を見て驚愕した。映画が終わっても観衆はすぐ立ちあがれなかった。
 
 広大なリサイクルの屑山、工場、ダム、炭鉱など遣い捨てられた

山の大きさ,工場の広さ,文明の残骸と、これから生産されていく激動
的中国の大産業をカメラが追う。
 中国では今、恐しい産業革命が起きている。あまりのスケールの大
きさに夢か現実かと疑いたくなる。
 しかし、論争の余地もなく確実に進行している恐ろしい現実。
仕事中の会話厳禁、人間が整然と同じ行動で機械以上に正確に働
いている事に、悲しさというより恐怖さえ感じる。命令に従う人、人間
が人間をマスにコントロールする体制の恐ろしさなど世紀の人間問
題、ヒューマニズム
とは産業とは何かをわれわれに問いかけている。

 世界中に何処よりも安いものを輸出するのは 'ユダヤ人大虐殺'、や
'世界を武器で制覇する' アイデアよりも数段進んでいる上、お金が入
る。
 無視してはいけない必見のドキュメンタリーである。

写真左:Cankun, Zhangshon,Fuijian Province,China
写真右:Chicken Processing Plant,
            Dehui City、Jijin Province, China


「世界中をのし歩く侍・日本の寿司ブーム」

2007-06-14 03:41:49 | 

武士旗本クラス、貧乏侍、足軽まで寿司のいろいろ、まかり通る。



 
上の写真はNYのAクラス スーパーで売っている寿司。

 これが寿司といえるかしらと思える寿司、貧乏侍、足軽さえも泣い
てしまうような寿司パックがいまやニューヨークの何処のスーパーに
も並んでいる。日本と同じくレストランもピンからキリまで。
  健康管理食プラス・グルメ通の波に乗る寿司はすさまじい速度で
流行している。生のきゅうりの細切りを巻いた玄米寿司、えたいの知
れないソースがかかっているもの、多分ご飯に酢など入っていないも
のだと思う。試食する勇気さえ起こらないものが多い。

 スーパーのカウンターで黙々と作るラテン系の寿司職人?の手元
を気の毒と思いながらじっと見ていると、私を意識して居心地が悪そ
う。「あなたは美味しいと思う?」と質問をしたかったけれど、彼の責
任でもないし、どうも意地悪ばあさん風でやめておいた。
 まず第一に一般化したのはスーパーでサンドイッチと同じぐらいの
値段でかえることだ。そしてすべてが自然材料でサンドイッチより健
康に良い。これは重要なキイポイントだ。 上の写真は上等スーパー
のカウンターにおいてある寿司。握り$9.95、巻物6.96.
 ほかのアメリカのスーパーやお惣菜やに売っている寿司は残念な
がら写真をとってお見せしたいとは思えない無残な異人寿司が多い。
 
大きければいいと言うアイデアが寿司には適応しないけれども
買う人はアメリカ人だ。

  Sushi SocietyやSushi Club というインフォを分かち合う組織もあり、
Sushi Otaku というオタクもアメリカにいるらしい。Non Japanese
Sushi 、
本物とアメリカ寿司との違いに薀蓄を傾けるお仁も居る。
国際化、”グローバル、トホホ・お化け寿司”がすでに登場している。
 寿司はスターバックスについで短期間にグローバル化したビジネ
スだ。といっても10年単位。寿司に限らず日本の本物イメージを売る
ャンス、ビジネスの扉が開かれている。

参考記事:小林恵ホームページwww.ny-apple.comの食コラム
豆腐を参照してください。日本産がアレンジされて、現在は柔らか、
普通,固めと三段階が普通のスーパーにもあり、柔らかは甘みを加
えると結構しゃれたデザートにもなり、固めは料理により、味付け自
由。これが豆腐?かと思うアメリカ人のアイデアの才能とマーケッ
ティングの巧さ。
 現在 1パウンド、冷蔵庫保存用箱入り:$1.60~1.80.既に100% 大
ヨーグルト各種フレーバーは何処にでも出回っている。

 


「セントラルパークでリラックス」

2007-06-11 23:06:55 | ニューヨーク暮らしの日々
週末の必要と楽しみをパークで満たすニューヨーカー

4月
樹の芽が出始め、春の気配がするとすぐ日光浴がはじまる。

5月
桜の下で若芽の下で楽しむニューヨーカー。ささやかな?贅沢!

6月
葉が茂ると10月まで何処でも日陰を楽しめる。


いたるところで週末の楽しみを分かち合うニューヨーカー。

「アメリカンフォークアート美術館ラグ展・続」

2007-06-09 05:59:43 | フックド・ラグ

ラグ再考:家があったところにはアートがあった.
 
ニューヨークタイムスに1ページをさいてフックド・ラグの記事が掲載
された。アメリカでも女性の針仕事や手作業がニュースになる事はな
かったが1991年, 私が企画した「アメリカが日本のキルトに及ぼした
影響・メイド イン ジャパン」展がキルトの記事としてはじめてニュー
ヨークタイムス 1ページで報道されたときはアメリカ人から ”でかした!
今まで一度もニューヨークタイムスが取り上げなかったキルトにフォー
カスを当ててくれて有難う」 といわれた。
 
 あれから15年の月日がたった。
本日、1面に扱われたフックドラグの記事を見て感慨にふけっている。
嬉しい事は価値観が変わっても150年も前の女性たちは認められる
か否かを考えずに創作したことである。無名の人たちが、現在の消
費社会では想像も出来ない貧しい暮らしの中でテーブルを、ベッドを、
床を飾り、創作を続け無名のままでこの世を去った。

 多くの人たちが作った事ではラグもキルトと同じ様にアメリカの社会
現象となった。家を美しくする事はアメリカン・ドリームの伝統である。
整理整頓は、アメリカ人のマネージメントの誇りである。いまでも家中
見せてくれるのは、暮らし方の創造と努力を見てもらいたいと誇らしく
思っているからである。

 ただ作るだけでなく、創作欲の発露としてトレーニングのない人たち
も暮らしを築く事に努力していた事を、アメリカの手作りから学びたいと
思う。何をどう作るか、もの作りの価値を再考する扉が開かれてきて
いる。
 私がアメリカの手作りに感動するのは、考えて作るそれぞれの動機
に心を打たれるからである。

アップリケ カーペット:1860年頃メイン州作者不明112”x158”
ウール、未使用、アメリカンフォークアート美術館蔵 

American Folk Art Museum, 45 West 53 Street New York 110019
 (近代美術館の隣り)www.folkartmuseum.org  tel: 212-265-1040
[The Great American Cover Up:American Rugs on Beds,Tables,
and Floors.] 2007年 6月5日~9月9日まで

参考:ラグ材料
  www.ny-apple.comのクリエイティビティのコラムの中の材料店
をク リック。
1)東京=ホームスパン:℡:03-5738-3310   umi@aurora.dti.ne.jp  
2)北海道地区=グリーングラス:℡:090-3890-8457 
  
y.m.takeo@gamma.ocn.ne.jp

 

 

 

 


 


「アメリカンフォークアート美術館で開館以来2度目ラグ展開催」

2007-06-08 14:43:01 | フックド・ラグ

フックド・ラグ:「アメリカン クリエイティビティ」再評価



 ジョナサン ホールスタインのコレクション、”キルトに見るアメリカ
の現代的デザイン”展が70年代の初めウイットーニー美術館で開か
れるまでは、アメリカ人でアメリカの手作りを評価する人は本当に少
なかったのです。たかが女性の針仕事という理由で無視され、その
創造性を評価する人は極小でした。ひとたびミデアが評価しだすと
”すごい!”と皆が思うのは残念ながら何処の国も同じようです。
それまでのキルトは雨が降ると自転車を覆い、引越しの家具をくるみ、
ピクニックの時、草の上にひかれたりしていました。アンティック屋で
キルトがきれいに洗濯され、展示しながら売られるようになったのは
80年代の出来事です。現在はそのキルトも姿を消し、商品というより
アート作品に昇格しています。美術館でも展示後は少なくとも5ヵ年
は布地保存のために倉庫に眠ります。


 ラグも同じように床から壁へと昇格、キルト以上に高価になりまし
た。ラグは自由表現ですから絵画と同じく創造性を楽しめます。
布地が絵の具ですから布地の違いで思わぬ効果も楽しめます。

美術館でのラグ展は今回が2度目、初日から大人気です。

 写真上はアーキテクチャー ダイジェストに最近2万5千ドルで売られ
たとニュースになった19世紀のフックド・ラグです。

 ラグもキルトと同じ時代に作られたアメリカの暮らしを代表するクラフ
トです。職場もなく、手作りが暮らしを支えていた頃のアメリカ女性たち
のエネルギーは150年を経て古いデザインをリピート、アレンジするだ
けではなく、新しいタイプのアーチストがたくさん生まています。
次回は最近作家の作品を紹介いたしましょう。

[The Great American Cover Up: American Rugs on Beds,Tables,
and Floors.]  2007年 6月5日~9月9日まで
American Folk Art Museum, 45 West 53 Street New York 110019
(近代美術館隣り)
ww.folkartmuseum.org  tel: 212-265-1040


参考:ラグ材料
www.ny-apple.comのクリエイティビティのコラムの中の材料店を参照.
1)東京=ホームスパン:℡:03-5738-3310  umi@aurora.dti.ne.jp 
2)北海道地区=グリーングラス:℡:090-3890-8457 
y.m.takeo@gamma.ocn.ne.jp

 

 

 

 


「セントラルパークの雨宿り場(シェルター、shelter)」

2007-06-07 14:15:16 | ニューヨーク暮らしの日々

あづまやはデイトに最適

 セントラルパークのレイクの周りには4つの雨宿りのできる吾妻やが
あり、中でも最も美しいのはキャストアイロンで出来たビクトリアン時
の装飾的 ”淑女の館”(Ladies Pavililion)。
コロンバス サークルのパークに入るメインエントランスとして使用され
ていた馬車停であったものを1912年、現在のウエストサイド75丁目
~76丁目に移された。ここからレイクを隔てて眺める摩天楼も美しい。

 
ワグナーコーブと言われるチェリーヒルの坂を下りたレイクに面した
小さな木造の東屋も野趣豊かでロマンチックなところ。カップルに占
領されていると皆が遠慮し坂をおりていかない。

 ボーブリッジを渡り、東の小道に行くとここも読書好きや音楽を楽し
み、または橋の上から眺められるのを楽しむ人には絶好の場所。

 レイクの周りのほかにも岩山の上のシェルターもいくつかある。

 吾妻やにすわり、パークの四方をみわたすのニューヨークならでは
の眺め。季節により、時間により、天候により、赴きが変わる。
当たり前のことだけれども、精神衛生に抜群の効き目がある。
木造の吾妻やは1970年代に修復,再建されたもの。