人生の船出に
写真:コロンビア大学の卒業式
卒業式は身内や両親にとって晴れがましい未来への希望を若者に託す
祝典でもあります。私の姪がコロンビア大学の大学院を卒業した時は親
代わりで卒業式に参列しました。アメリカで生まれた友人の子供たちの卒
業式、ペンシルバニア大学、コーネル大学、MIT、ブラウン大学、シカゴ大
学などにも参列しましたが,忘れがたい素敵な経験でした。
学長が大学院博士課程卒業代表者○○と名前を読み上げると腕まくり
した入れ墨の入った両腕を振って堂々と学長の前に出ました。学生たち
は一斉に立ち上がり歓声をあげました。また生まれたばかりの赤ちゃん
を抱えて賞状を受け取る母親学生にも口笛の嵐が湧きあがり、ステレオ
タイプの常識を破る勇気に学生たちは大喜びします。
コーネル大では会場の野球場の空に低空で飛行機が飛び、飛行機
の後ろに吹きながしをたなびかせながら会場を旋回します。
「ジョン:金おくれ!ママより」と書いてあります。神学部卒業生一人のみ。
彼の後ろでシャンペンが一本ぽんと吹きあがります。ジャーナリズムは不
況に付き就職者ゼロ。そのセクションから細かく切った新聞紙が空たかく
き散らされ学生は口ぐちに”ブー!ブー!”と叫んでいます。
角帽を上から見るとテディベアをくくりつけている学生、光る塗料を塗って
いるもの、名前を書いている学生、お花を載せている学生。それぞれ居場
所を教えているのでしょう。“ダディ。借金は返済しましす!ただし、無期限”
と書いた風船も飛びあがります。
60年の終わりにイエール大学を奨学金で卒業した黒人の友人の父親は
借り着のジャケットと初めてしめたネクタイと皆の視線にいたたまらず、途中
で僕に黙って帰ったんだよと話してくれた友人のことを思い出します。
当時は差別が常識でした。彼は子供時代に遊んだ記憶がなく学校が終わ
るとすぐ図書館に通い、それを毎日見ていた人が奨学金を出してくれたと
いいます。。その後スタンフォード大学院を卒業し、ニューヨークに帰る途中、
黒人を泊めてくれるモテルもなく大陸横断の途中めぐりあったニューヨーク
に行く金髪の女性と仲良しになり、彼女がチェックインしたあとから彼が入っ
たと話してくれました。 大学に入って一番驚いたことはカフェテリアで好き
なものをお腹いっぱい食べられることだったとも。今は昔の話となりましたが。
表向きに差別はいけないとことだと浸透したのは、ごくごく最近ここ十数年の
ことなのです。彼は今、南米でエリート リーダーとして働いています。
オバマ大統領は2008年、ウエスリアン大学(Wesleyan University)での
卒業式ゲストスピーチで
「私はジョン F.ケネディが“あなたは国のために何ができるか”と就任
式に演説した年に生まれました。アメリカの理想を追ってできた、善意の
ピース コープ ボランティアが始まり、ボランティアにチャレンジした時代で
した。そして家にいるほうが安全でしたが、10代の人たち、大学生などが
シビル ライト ムーブメントを起こし、マーチしたのです。その南部に起きた
マーチ、フリーダム ライド(Freedom Rides)が世界を変えました。
大事なことは第一に家族、次に国、そして、世界で何が起きているかを
考えねばなりません。不況、戦争、飢饉、温暖化、不当な考えや行動など、
個人ではどうすることもできない隔たりを感じます。
しかし歴史はそう教えていません。歴史に名前が残らない個人、老若男
女を問わず皆でわれわれが分かち合って築いたことを信じています」と。
ハートや精神が世界から忘れられた今日、ヒューマニズムについて語っ
ています。
今年、オバマ大統領はインディアナにあるノートルダム大学でスピーチを
ました。伝統的カソリックを代表する保守的大学でオバマのリベラルなアイデ
アに抗議した学生たちは”人間の命ほど大切なものはない” ”堕胎は人
殺しと同じだ”とピケを張りました。
オバマは「人類の家族を持つために多様性のある考え方、多様性の宗
教など不幸にも一人ではチャレンジできない時代になりました。利己主義、
エゴ、残忍さ、子供の面倒を本当に見れるのか。人間の質の問題です。
堕胎をしなくてもよいように、公平な気持ちで心を開いて考えましょう。
違う人間それぞれの価値観があります。心を打たれることが文化を変え
て行きます。価値観を持ち、灯台として立ちましょう」と。
学生たちは総立ちになり、拍手がやまなかったことをテレビで見た方もある
と思います。
ビル ゲイツ(Bill Gates)は
「私はハーバードで最も成功したドロップアウトと言われましたが、失敗
人たちの中でのベストでした。世界は小さく、もっと視野が広がり、ものが
見え、距離がなくなりました。
コンピューターのパワフルなネットワーキングは、機会を分かち合い、学
び、コミュニケイションが皆に広がりました。距離に関係なく隣組ができる。
突如として才能が才能を生む結果となりました。私はヒューマニティのため
に働いています」と。
ヒューマニズム、ヒューマニティという言葉を学生のうちに教えられるアメ
リカの学生は幸せだと思います。何とよい時代になったのでしょうか。
人の築いた道を行かず自分で道を開いていく情熱と勇気、人生の船出
にふさわしい希望に満ちた卒業式のスピーチには心が温まります。
個人こそ大切といわれる個人の選択の時代となりました。価値観は自
分で判断する時代です。名声や評論家の評価になびかず、草の根評価
が強くなり、もっともっと、多様性を認めるようになれば日本も変わって行く
ことでしょう。未来に期待していきましょう。
ノートルダム大学:未来に向かって帽子を上げる卒業生たち
参考: www.barackobama.com
http://www..humanity.org/voices/commencements/
http://calendar.columbia.edu/commencement/
Columbia Jounalism Review: http://www.cjr.org
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