小林恵のNY通信

NY在住47年、2011年より東京谷中に居住。創造力をのばすためのエッセンス、スパイスをいれた私の暮らしの手帖です。

「アメリカのプロパガンダポスター展」

2005-08-12 04:09:15 | ニューヨーク暮らしの日々


 レスター グラスナー(Lester Grassner)が生涯をかけて集
めた第2次世界大戦アメリカのプロパガンダポスター85点の展示が
大阪梅田のスカイビルタワーで開催された。誤解や偏見の戦争歴
史を知るだけでなく、これからの子供たちの未来を築くためにみんな
で話あい、将来を考える平和プロジェクトとして提供されたものだ。

1年がかりの企画であったが会場にはボランティアで働く若者たちもいて、
「何も教えてくれない大人たちに反発していましたが過去を知ってわ
かるような気がしました。これからの平和のために働きたいと思う」と
いう発言もあり、とても嬉しく、遣り甲斐のあった仕事に感謝している

これからの若者たちに期待しよう。

 外国に住んでいて日本を思うとき、日本では考えもしなかった郷愁
だけとは思えない郷土愛が伴う。8月8日付きニューヨークタイムスに
長崎を取材したLydia Milletが「おとなしい犠牲者」という記事を寄せ
ていた。 「60年たった今も日本人は生きている不思議を亡くなった人
に謝っている。最もへりくだった戦争の犠牲者たちだ」と。
 
 戦争の現実はあまりにむごくて語りたくない、教えたくもない経験者たち
の心理が働いているのだろう。
戦後、暮らしを立てるために過去を話している暇もなく夢中で働き経
済成長を遂げた日本。語りたくなかった理由は、精神まで軍国主義に
占領されていた者たちの開放感がひたすら暮すために「夢中」だっ たと
いうことだろう。それは自由への証のエネルギーでもあった。

 その間、忘れたものも大きく、大人たちは子供たちへの教えを怠り、
自殺者の総計が原爆死亡数と同じと聞くから問題は深刻だ。人々への
思いやり、愛情の欠如だと思う。夢中で働いた経済成長は人の心を
はかり知る暇がなかった大人たちの責任ともいえる。
 
 
アメリカのポスターは ”団結して働こう。戦争が終わった暁には皆に家や
電化製品を提供しよう” と戦争物資を生産した民間企業が約束している。 

 原爆を投下した責任者の一人、Harold Agunew Ph.D.は「原爆は
当然。パールハーバーがある」と発言。
 その昔「あだ討ちでございます」と叫びながら殺された夫の仇を討った日本。
アメリカでも話し合いが決裂した場合は決闘があり、日米ともに公認されていた。
いずれも1対1の対決である。
 不意打ちで何十万人の市民を殺す戦争を起さないように、特に若者たち
は自殺している場合ではないだろう。一人一人が世界観を持ってほしい。

 小さくてもいい。皆が もつ叡智を社会に貢献すべき時と思う。
日本の若者たちに、世界を知るために、理解しあうために、話し合う
人間になって欲しいとニューヨークより心から熱望している一人である。
一人でも多くの人に見ていただきたい展覧会である。

(みんなで考える平和展:
大阪梅田スカイビルタワー5F 8月28日まで開催)