美しい自然を見ると神様がいると信じてしまう。
しかし、人間がデザインして作られたものには感動させられ、
人間賛歌を聞く思いになる。
クレマチスの丘を訪ねた。美しい庭園と彫刻と空間、開かれた空。
全てが美しい。本当に来てよかったと思った。広大な敷地にベルナール・
ビュフェ美術館、ロベール・クートラスのコレクション、井上靖文学館などが
点在し、庭園には現代イタリアを代表するジュリアーノ・ヴァンジの彫刻が自然
と融和し彫刻の周りを歩けるのも楽しい。
1970年のはじめ私の友人の姪が創設者、岡野喜一郎の息子さんと私の親友の姪
が東京で結婚し、新婚旅行の途中NYの私のアパートによってくださった。
「父がビュフェ美術館を建てましたからぜひ訪ねてください。ご案内しますよ」
と。あれから40年以上もたった。
オリジナル自画像・渡辺良重
ラグ制作:岡本登志子
訪ねた理由は2014年11月、銀座ミキモトでのフックド・ラグ展覧会で”デザ
イナーの作品をフックする”というテーマでフックド・ラグを作り、キギのアート
ディレクターでありクリエイターでもあった渡辺良重さんが自画像をわざわざ描
いて提供してくださり、今回のクレマチス展覧の案内状をいただいた。パートナ
ーの植原亮輔さんとご一緒に作ったビニールの花入れが初めてニューヨークのモ
ダンアートで売り出された時、素敵なアイデアで優れた商品だと感心した。
その時誰が作ったかは気にしなかったがヨーロッパの何処の美術館にもスペイ
ンの小さいピカソの生家美術館にまで 並べてあり、私もイタリア旅行には野原の
花をビニール花瓶にいれ楽しんだりした。
その創作者が商品化したときの記事を読んだときは一人の発想より違う発想で植
原さんと具現化したことを知った。美術館の窓をふさぎ自然光線に映えるこの花
瓶は今も世界中に君臨している現代の傑作アートプロダクトだと思っている。
クレマチスの丘散策は、優れたアート空間を振り向きつつ歩ける幸福をとどけてくれる。