小林恵のNY通信

NY在住47年、2011年より東京谷中に居住。創造力をのばすためのエッセンス、スパイスをいれた私の暮らしの手帖です。

強制収容所で作られたものつくり・生活の記録

2012-11-17 20:00:12 | ものつくり

我慢のアート(The Art of Gaman)

 ー 人はものを作る。作らずにはいられない。生きる証としてものを作る ー
                  
 

       何年か前にニューヨークで巣鴨に収容されていた戦犯たちがの死刑前に独房で作った手創りの品々を集めた展覧会がありました。
巣鴨刑務所を監視していたGIが死刑囚たちが処刑された後、部屋に残されたものをアメリカに持ち帰り、忘れ去られていたものを彼の息子が発見し展覧会を開催したものでした。
 
自分の死を目前にして、差し入れられた煙草の空き箱、ライフマガジンや新聞のページから紙縒りを作り、バスケットや箱を入念に作った戦犯処刑囚たちの最後に作られたものたちの展覧会でした。
が打たれ、切ない思いのする展覧会でした。

作りたい、作られずにはいられない、ものつくりの意味を、そして作った人たちの静かな声が聞こえてくるような戦争の無意味さをも考えさせられたことでした。
 
 今から70年前、アメリカに移民した日系アメリカ人が、真珠湾の報復としてアメリカ政府によって全財産を没収され、強制収容所に12万人もの人たちが過酷な条件で戦争が終わるまで
隔離されました。市民権のあるアメリカ人を大統領命令で隔離されるという憲法に違反するアメリカ人の過去を1988年になって初めてアメリカ政府が謝罪し、「過ちは2度と繰り返さない」と、スミソニアンに特設展示場が設けられました。私はわざわざニューヨークからワシントンDCにこの展覧会を見に行き、時代の変遷に感慨を深くしました。

 ”私はアメリカに生まれ毎日胸に手をあててアメリカに忠誠を誓って大きくなりました。あの収容所で私たちは何を信じて暮らせばよいのでしょうかと苦しみました。”

 ”青年たちは収容所に行かず徴収され、第一線の航空隊に送られ戦死しました。”
展覧会のビデオから流れてくる声は日本人として胸をつき、同時に発表したアメリカ政府の間違ったことを間違いましたと謝罪したことは遅すぎたとはいえ、少し救われた思いでした。
                  
                       多くの日本人がこの収容所で亡くなった.
            ジャップは白人社会からでていけ。真珠湾攻撃の報復。          理由もわからず、どこかに連れて行かれる。両親は日本人でもアメリカ生まれは憲法でアメリカ人であった。
                                                                                                                                                                                   年頃も同じ、何だか私に似ていて胸が詰まる。
                           

 数十年ののち、現在芸大で当時の日本人の生活の記録、手創りの我慢アート、「尊厳の芸術展」が開催されています。
       
       すべてが手創りで胸を打ちます。仏壇を作り、毎日手を合わせ、算盤まで作りました。手描きのコイコイまで作ってしいま
       す。    
       
     ナイフ一本で彫り、ガラスの破片で磨きをかけたという彫刻。 砂地を深く掘って発見された貝殻で作ったブローチの数数。  
       
 すべてがアートを学んだことのなかった日系一世たちの作品です。 つらい思い出と共に多くは捨てられましたが、これらのものは伝統の誇りでもあり、彼達の不屈な精神の証でしょう。
 ”従う以外仕方がなかった” 
悲惨な戦争犠牲者の無言のプロテストとして心を打ちます。
 
同時にものつくりの安らぎを共有することができる一見に値す展覧会でした。

 

 

 


 

 



   
 
 

   

 

 

 


潮風のキルト展・砂浜美術館2012

2012-11-04 08:20:59 | キルト

審査を終えて・・・

 ー私たちの町には美術館がありません。美しい砂浜が美術館です。館長はクジラです。ー

 美しい高知県黒潮町の砂浜美術館のキルト展の審査を始めてから10年がたちました。この審査はほかの審査と
異なり、経験のながさで勝負をすることはありません。下手でもあなたが何を伝えたいか、感動を伝達しているか、
新しいし材料、新しいアイデア、新しい表現などににフォーカスを当てて審査しています。参加し、行動することが
一番重要なことだと信じています。

 感嘆するほどテクニックを駆使している人もいて心から尊敬します。しかし、上手さを伝えたいだけでなく
”やってみよう”と参加してくださることをとても嬉しく思います。これこそがコミュニティ アートの理想の形でないでしょうか。
ほとんどがヴォランティアで設置に朝早くから集まる方々、朝日に映えて松原をバックにそよ風に揺らぐキルト、
細いあぜ道の前はラッキョウの花畑が続きます。参加することがこんなにみなを元気にしていることを知らせれます。

 砂浜美術館は東京からとても遠く高知県の太平洋の砂浜と松原に面した美しい砂浜です。
私が審査を始めてから10年の月日が経ちました。そこに行くにはニューヨークと同じぐらいの時間がかかります。
しかし時間ではない。行動することをモットーとして頑張っています。
 東京に住み始めて2回目の審査、コミュニティのあり方がようやく実感し始めました。
キルトを作った人は必ず見に来ます。キルト作りは時間がかかります。ある程度努力をしないと完成しません。
この達成感が、コミュニティのつながりを作るのだと思います。

 賞を取ったから偉いのではありません。取れなかったからからダメでもありません。下手でも入選し、感動の分かちあいを学びます。
スポーツ精神がコンテストのあり方だと思います。
10年間、参加してくださった方たちから多くの方々から学んだことは私の宝物です。

 ものつくり、作り出すことはつばらしい!参加してくださった方々、ありがとう!
        


松原の後ろは砂浜、その砂浜では毎年春にはTシャツ展のシャツがひらひら風に泳ぎます。砂浜の向こうは坂本竜馬も眺
めたであろう、または船で通ったであろう太平洋が地平線まで続きます。夢を育む風景です。
松原にかけられたキルトの前はラッキョウの花畑、その間のあぜ道がキルト展の花道です。
この道に平行に並ぶ整地された美しいドライブウエイには”おへんどさん”が歩いています。このドライブウエイからキルトを
見てどれが一番インパクトを感じるかも、私の楽しみな審査の方法でもあります。小さなテクニックがいかに重要でないか、
デザインの重要性はなにかを学びます。
    
 富良野のラベンダー畑の表現を空以外はすべて飾りのモールテープで表現しているのも新しい方法です。
右上はアップリケキルトの中を流れる白い川は両面ナイロン合わせでその部分を切り抜いてあります。朝日にその
透明な川の部分が光を受け、川の流れに動きがでて新しい材料の使い方に感嘆しました。
    
左上のキルトはスケッチ教室の方々の楽しいスケッチがアップリケされています。並べ方もチョンと切ってしまった位置づけも
バランスに動きが出ていて楽しいです。右上はもう針を持てなくなった高齢者たちがはさみで花形を切って集め、その上から
ステッチをしたキルトです。皆で作った花畑。なんと美しい花畑の造形でしょうか。すばらしいアイデアですね。
    
 松原の向こうは太平洋、本当にこの色彩を感じる眺めです。スラッシュキルトの手法で景色が見事にアブストラクト絵画
のように表現されています。右上はロンドンにいた御嬢さんに思いをはせてオリンピックの歓喜の鐘の響きまでも表現され
ている秀逸なデザインと思います。
    
 ピースド手法で里山の景色がよくまとまっています。右上は気仙沼からの出品で知らない強みでコットンと荒い織の穀物袋の
ような芯地でまとめています。"なぜだめなの?” まったくその通り。新しい試みはやってみること。新しいことは行動かから始まります。 
皆で学べるキルトコンテストです。 参加する人が試みている新しいムーブメントが始まっています。
楽しいコンテストの審査でした。参加してくださった皆さんありがとう。

2013年、砂浜美術館のキルトコンテストに集まれー!

砂浜美術館キルトコンテスト応募お問い合わせ
http://sunabi.com
tel:0880-43-4915
Email:nitari@sunabi.com