散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

デフレの診断・処方を誤る~2年後のアベノミクス

2014年12月12日 | 経済
日経新聞・経済教室で選挙に因んだのか、「アベノミクス/黒田異次元緩和」の評価を行っている。その中で齊藤誠・一橋大学教授は表題のように、アベノミクスは日本経済に対する診断を誤り、当然の様に黒田総裁を道連れにして、処方も誤ったと論じる。以下にまとめる。

「政策総動員の熱病に」「目標、成長より生産維持を」との副題を掲げつつ、ポイントとして、以下の三点を挙げた。
1.「15年デフレ」の正体は海外への所得流出
2.原料高と輸出競争激化で交易条件が悪化
3.尋常でない財政と金融政策で将来にツケ

斎藤教授は1年半前に、上記の「1」及び「2」に関して、
「日本経済は長期的なデフレ状態にあったわけではない」
「物価下落は物価安定といった方がふさわしいほど軽微(雀)」だったが、
「15年以上にわたる深刻な物価下落(羆)にすり替えられた」と述べている。
 『黒田バズーカ砲は華麗なる空砲か(4)~「雀を羆にすり替え」130429』

従って、今回は「異次元緩和」を空砲というよりも「不発弾」と鋭く批判したことになる。「将来にツケ」を残したからだ。

「97年末以降の消費者物価指数(CPI)と実質国内総生産(GDP)からは「15年にわたるデフレ」に見合う事実を見いだすことは難しい」と今回も指摘し、「CPIは、輸入原材料の高騰で03年に底を打ち、08年まで上昇した結果、97年末と12年末を比べるとわずかに低下しただけである」と述べる。


 
しかし、上図のGDPとGDIを比較した図を掲げ、「生産指標を実質GDPから実質国内総所得(GDI)に、物価指標をCPIからGDPデフレーターにそれぞれ置き換えてみると「15年にわたるデフレ」に相当する姿が浮かび上がってくる」と述べる。

それは、21世紀に入り、日本経済は厳しい国際環境に直面したからだ。
「原油をはじめとした輸入原材料の価格が高騰」「電気・電子機器をはじめとした輸出産業の国際競争力が低下」したからだ。

「02―07年度の期間、実質GDI(所得漏出を反映)と、実質GDPを成長率で比較すると、前者(5.5%)が後者(9.5%)を大きく下回った」「「一生懸命働いた割には(実質GDP拡大)、所得が海外に漏出し、手元に残らない(実質GDI伸び悩み)」という実感が「デフレ感覚」の正味だ」。

しかし、「安倍政権は、実質GDPとCPIを日本経済の体温計に使い続け、財政政策と金融政策を合わせたマクロ経済政策を総動員することで日本経済が熱病に浮かされることに執心してきた」。
ここが、今回のポイントとなる議論だ。財政出動として、
1)震災復興予算規模19兆円→25兆円
2)12年度補正予算(経済対策費10.3兆円)と13年度を15カ月予算で編成
3)14年度も、13年度補正(経済対策費5.5兆円)と一体で運営

「一方、金融緩和の新しい枠組として、日銀は、市場金利を上回る年0.1%の金利で民間銀行から準備預金をかき集め、その資金で長期国債を購入してきた。長期国債の買入規模(保有残高の増加目標)は尋常でなく、13年4月の枠組で年50兆円、14年10月の枠組みでは年80兆円に拡大された」。

「しかし、大規模なマクロ経済政策は実質GDPの拡大やCPIインフレ率の上昇に結びつかなかった。準備預金の拡大自体に物価を上昇させる力はなかった」。
「13年度の実質GDPは、大規模な公共投資と消費税増税を見越した消費前倒しである程度成長したが、14年度に入ると息切れした」。
「円安が輸出拡大や生産増強投資に結び付かなかった」。

「「15年にわたるデフレ」が厳しい国際環境の反映だという診断に立ち戻れば、尋常でないマクロ経済政策の発動が政策処方箋となるはずはなかった。政策効果がなかったばかりか、国家の債務と日銀の債務(準備預金)というツケを後世に残してしまった」。


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