散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

4-6月期GDP成長の主役は公共事業~第2の矢と将来の負担増

2013年10月05日 | 経済
「統計メールニュースNo.597(H250927)」の8月消費者物価指数をベースに経済の現状を考えた。前年同月比0.9%上昇であるが、電気代とガソリン代が10%前後値上りを示し、生活者の視点からは喜ぶことはできないと指摘した。
 『悪性インフラ状態のアベノミクス~統計を読む(3)・8月物価指数130928』

更に、9月初めに第二次速報値が公表され、上方修正が報告された。第二次速報値(第一次値)では、実質GDPは前期比0.9%増(0.6%増)、年率換算3.8%増(2.6%増)と、かなり高くなっている。

数値だけを見れば、「黒田異次元金融緩和」の2年後のインフレ目標2%に沿っているかもしれない。さあ、アベノミクス効果で実体経済が回り出したか?甘利経財相の良好発言もあった。

しかし、上記の記事にもある様に「物価上昇が良いこと?」である。この点について、元日銀審議委員・水野温クレディ・スイス証券副会長は次の様に言う。「家計にとって賃金上昇を伴わず物価が上がることは一番辛い。既に電気料金が10%上がっていて、生活費も上がっている。」生活者の感覚からは常識的な発言だが、高名なエコノミストの発言としては珍しく聞こえる。

更に「『デフレ脱却イコール2%の物価上昇という意味だったの?不況脱出のことだと思っていました。』という人がたくさん出てくるだろう」と述べる。これもまた、経済に関する素人の一般人の常識的な感想だろう。この感覚とそれを生活人の言葉で述べる表現力は類をみないものだ。

野口悠紀雄・早大教授による統計の具体的読みからも、「実質GDP増加=順調な経済成長」とは単純にいかない様だ。以下、その議論をフォローする。
今回の上方修正の原因は「公的固定資本形成(公共投資)」と「民間企業設備」である

公共投資は3.0%増(1.8%増)、民間設備は1.3%増(0.1%減)、とそれぞれ大幅に伸びている。しかし、公共投資はこの数値よりも大きな寄与をしている。それは民間設備の増加を支えているからだ。

更に公共投資の受注データから、対前年同月比(パーセンテージ)において、これまでの1桁台から今年4月以降は2桁台(10-20%)に伸び、7月まで続いている。なかでも、公共機関からの受注工事の伸びは著しく、5,6月は40-50%台になった。今年1月に編成された大型補正予算によって、公共事業が大拡張されたためだ。

これぞ第2の矢であるが、官需主導による経済成長であり、金融緩和による金利の下げ、それによる設備投資の増加」という本来の目論見までは至っていない。また、短期的なカンフル剤であって、長続きはしない。更に、当然ツケは若い世代ほど厳しく回されることになる。

更に野口教授は以下の図表を示して次の点を指摘する。


設備投資が伸びているのは建設業(26%)及び不動産業(20%)である。これも大型補正予算によるものだ。一方、全体をみると、全産業は横這い、非製造業は5.6%と伸びているが、製造業は19.1%と3四半期連続の減少になる。

安倍首相は設備投資を年63兆円から70兆円に拡大する目標を掲げている。政策として、投資減税、即時減価償却などの検討を始めている。しかし、製造業は今後も海外投資に活路を見出すことが多いと思われる。調査によってもそれは裏付けられている。製造業の設備投資に成長の牽引役を期待するのは無理があるだろう。

      


コメント
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