散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

安倍首相の国連演説~現実の力と発言の現実性

2013年10月07日 | 国際政治
日本の首相はこれまでどの程度、国連で発言し、その発言がどの程度の重みで実行へ移されたのだろうか。あるいは注目される発言はあったのだろうか。こう考えると、些か不安を感じて記録を調べてみた。話題になったことは、ほとんどないはずだから、誰も演説などはしていない?

首相官邸HP「総理の演説・記者会見など」に掲載されている。ところで、「首相」官邸と書いて「総理」の演説とは?という疑問が、先ず頭に浮かんだが、それはさておき、国連総会での首相の一般討論演説は次のようだ。

第68回 2013年 安倍首相  第63回 2008年 麻生首相 
第67回 2012年 野田首相  第59回 2004年 小泉首相 
第66回 2011年 野田首相  第57回 2002年 小泉首相 
第65回 2010年 菅 首相  第53回 1998年 小渕首相 
第64回 2009年 鳩山首相  第51回 1996年 橋本首相 

毎年出席して演説をしたのは、民主党政権なってからだ。それ以前の自民党政権では4年間欠席も珍しくない。安倍氏も前回の首相のときは出席していない。今後は民主党政権の築いた数少ない外交成果を引き継いで貰いたい。

また、上記10回の演説のなかで、テーマが書かれているのは2回だけだ。それは一つのテーマに限定されずに話した、ということだろうが、主題を毎回決めて数十年にわたって蓄積すれば、継続して日本が主張してきたことが明確になる。

更にその演説に沿って日本外交が世界平和に対して貢献した点を演説に取り入れる。これで、日本の国連演説も諸外国から注目される。そのためには、少なくとも英訳を上記のHP上に邦文と同時に掲載する程度のことは必要だ。

今回の安倍首相は先ず、「核軍縮に関するハイレベル会合」で演説した。
ここでは日本が唯一の被爆国であることを強調し、核兵器廃絶を訴えた。これは定番表現だろう。その中で筆者が驚いたのは、「1994年以来毎年核軍縮決議を提出し、圧倒的多数で採択されている」と述べたことだ。

毎年決議され、しかし、それに基づき軍縮が進展したとは述べていない。成果の出ない決議を毎年出していれば、それはマンネリである。これまで非核三原則を貫いた(これも定番表現)と述べたが、今後も継続との決意表明はなかった。大切なのは成果とそれに基づいた今後の方向づけだ。

続いて、一般演説も行った。
シリア情勢から始まり、「積極的」「平和主義」を語り、「骨惜しみせず」をことさら強調し、日本の「振る舞い」の「通奏低音」と述べた。しかし、この間の演説を聴いた国連関係者に日本の立場を印象づけることが出来ただろうか、疑問だ。

先ず、「平和主義」は政治的立場も含め幅広い意味があり、それに更に「積極的」を加えた処で明確な意思表示と受け捉えられるとは思えない。「骨惜しみせず」、この言葉はどんな思考回路で同時翻訳されたのか?「hard」程度で済むのだろうか?あるいは先ず邦訳が必要な言葉かも知れない。「振る舞い」は「活動=action」で良いと思うが…。「通奏低音」は音楽用語であり、この程度の教養は国連関係者にあったとしても、マスメディアを含めて広くPRするときに使う必要はない。

そして、経済成長率を高くする焦眉の課題に対して「ウーマノニクス」を位置づける。詳細に調べているわけではないが、これまで、安倍首相が使ったことがない言葉のように思える。随分、昔から使われているが、「アベノミクス」に引っ掛けて使ったように推察できる。ただ、そこで言いたかったのは、慰安婦問題を意識した「武力紛争における女性に対する性的暴力」への憤激だろう。

結局、首相自身が自らの言葉に酔い、美辞麗句を使って中味のないPRをしている様に聞こえる。それが「日本の成長は世界の利得、その衰退はすべての人にとっての損失」との表現にも顕れる。これは自己満足の世界だろうか。

結局、その場で聴いた人たちに残った言葉は、難民対策6千万ドル、アフリカ地域の保健対策5億ドル、ODA30億ドルの供出の三点のように思われる。

国内の消費税増税分の税金から5千億円を社会保障政策へ回すとの報道があるが、それと見合うような額になる上記の約3千5百億円が有効に使われるのか?安倍演説の尻ぬぐいで不要なバラマキを相当に含むのか?国会は是非、厳しく監査を実行して頂きたいものだ。

      


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