散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

ティーパーティと「死の接吻」をした共和党~米国債務破綻危機の回避

2013年10月20日 | 政治
既報のように、米国議会の騒動は以下の上院超党派案で決着がついた。以下にまとめておこう。

1)期間限定での危機回避
 )債務上限は2014/2/7まで
 )「政府閉鎖-は2014/1/15まで
2)中長期での財政規律を実現する超党派の委員会設置
3)健保改革(オバマケア)ー「加入条件審査の厳格化」議論継続

上院「賛成 81―反対 18」圧倒的な大差で可決
下院「賛成285―反対144」」過半数で可決

オバマ大統領の「勝者も敗者もいない」という言葉に拘わらず、共和党保守派の屈服で終了した。

しかし、衆目の一致するところ、この暫定合意は、来年1月の「再度の政府閉鎖」2月の「再度の債務上限危機」の可能性に対して、政治的な合意ができるか否か、という、際限のない暫定合意の繰り返しの悪夢を孕んでいる。

それにしても下院での賛否に差で暫定合意が決着になるのであれば、その前に決まっていても良いのではないか、との疑問は多くの人が持つに違いない。ねじれによる決められない政治との評論が日本で見られるが、その一言で片付かない何かがありそうだ。

冷泉彰彦氏は共和党保守派ティーパーティの誤算を論じた中で、「債務上限への到達期限」のギリギリまで抵抗し、世界経済まで人質に取った形にしたことを批判し、興味深い指摘をしている。

それは、民主党系報道ではティーパーティは国家を分裂させた南北戦争の南軍」という表現が出ており、また、一部の世論調査では「議会の支持率7%、不支持72%」、その「不支持」は特に共和党に向かっていることだ。

先の記事で筆者は「下院のねじれが「原因」というのは、間違っている。ねじれは「選挙結果」を表した単なる現象だ。責任ある意思決定をすることが「議会」に課せられた第一の使命。」と論じた。
『米国議会の「騒動」からの教訓~ショックを受けない日本の地方議会131019』

米国での世論調査の結果は、民意もまた、責任ある意思決定を望んでいることを示しているようだ。従って、米国議会は、更に質の高い議会へ向けたチャレンジが必要なのであって、際限のない暫定合意の繰り返しであってはならない。

冷泉氏はまた、「最初から作戦も落とし所もなかった、つまり無計画で「成り行き任せ」のくせにケンカを売ったというのが「そもそもの間違い」」だと述べる。

ティーパーティは政党というよりは、にわか作りの組織であり、日本で言えば、維新、みんな、減税日本のように、政治的には機会主義者が潜り込む素人集団のように見える。従って、急膨張したときを過ぎれば、忘れられる存在にように思える。

それは、かつてのニクソン大統領の時代、1968年選挙で出てきたジョージ・ウォーレスの支持勢力と似ている。それは効果的な右翼少数派の運動であって、その危険性は福祉と安全の合理的な追求を阻害する処にある。

共和党はその右翼少数派を取り込んだ形になって、逆に政治的取引で身動きできず、オプションを失った感じだ。政治学の用語で言えば、共和党はティーパーティと“死の接吻”をしたことになる。しかし、それが高く付いたことは今回の騒動で自覚できたはずだ。従って、共和党穏健派が今後主導権を握る可能性はある。その意味からも今後の米国政治の状況は変わるように思われる。

      
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