散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

2008年米国下院の金融安定化法否決/可決~新鮮なショックを感じたとき

2013年10月06日 | 政治
リーマン破綻から1ヶ月以上たって、世界の株式市場はようやく金融恐慌という言葉の縛りから体をほぐすことが出来るようになったかに見えた時期、米国大統領選挙戦も酣であった時期、表題の事案をメルマガに書いた(08/10/23)。

今、その米国で今度は「政府閉鎖」の事態に至った。では当時、何を考えただろうか。そのときの関心は「日本の地方自治体議会」であり、それへの教訓を強引に導いたのだが…今日、振り返って、出来映えはどうだろうか?以下。

米国の金融危機を救うための先ず一歩と全世界から注目されていた米金融安定化法案が下院で否決されてしまったのである!これにはびっくりした。有権者からの支持を得るために反対に回った議員が多くいるとの報道であった。何故?どんな感情が蠢いているのか?議員は何を感じ取っているのか?

米金融安定化法案成立の過程を先ず、述べるここは主として読売新聞に依存する。
『米金融安定化法案、週内成立へ…不良資産買い取りで正式合意』
『米政府と議会は28日、公的資金を使って金融機関から不良資産を買い取る枠組みについて正式に合意したと発表した。』

ここを読むと、『巨額の報酬を得てきた大手金融機関の経営者に対する国民感情に配慮し、経営者の報酬を制限するルールを作成する。』とある。これは誰でも抱く感情であろう。であるからその感情をある程度抑える施策は必要であろうが、妥協が成立したのであるから、それによってよもや議案が否定されるようなことはないと思っていた。

『下院共和党のベイナー院内総務は28日夜、「納税者のリスクは引き下げられた。法案を支持する」と述べた。』ここまでくれば、…ところが、である!
『米金融安定化法案、下院が否決…国民の反発で「造反」相次ぐ』
『米下院は29日、本会議を開き、米政府が金融機関からの不良資産を買い取ることを柱とした緊急経済安定化法案を賛成205、反対228で否決した。』

『金融危機拡大を食い止める狙いの法案が否決されたことで米ニューヨーク株式市場にはろうばい売りが殺到、ダウ平均株価の終値は前週末比777ドル安の1365ドルと過去最大の下げ幅を記録した。東京などアジアの株式市場も株価は急落し、
世界の金融市場は大きく動揺している。』

以下が当時のコメントだ。日本の地方自治体の制度、二元代表制について。

よくぞやってくれた!驚くと共にそんな感情が湧いた。議会リーダーによる大統領との調整結果は一般議員によって否定、議会の意思を示した。草の根の意識が国の決定へ反映される。今日の株式市場は混乱するが、それは構わないとの意思である。金融が実体経済とかけ離れた証左でもあろう。

党議拘束、会派拘束などは議員内閣制での話であって、二元代表制にあっては不要という議論もできる。“首長に対する地方議会”の対応方法として多くの教訓が含まれていることを主張したい。

最終的に『米金融安定化法が成立 大統領「信用収縮緩和に断固たる措置」』
『最大7000億ドルの公的資金で金融機関から不良資産を買い取ることを柱とする金融安定化法が3日、成立した。米下院が同日、上院を通過済みの法案を賛成多数で可決したのを受け、ブッシュ米大統領が即日署名した。米国発の金融危機の封じ込めへ、過去最大規模の税金を投入する金融対策が動き出す。』

 賛成205票 反対228票 否決を修正
 賛成263票 反対171票 可決

以下が当時のコメントだ。二元代表制における議会の役割について。

当然、法案は修正されている。従って、前回の反対者も含めて出来るだけ主張を盛り込んだことになる。本法案はブッシュ政権の提案にもかかわらず、共和党は保守派を中心に反対、今回賛成票が増えたものの、結局過半数は未だ反対という状況である。民主党も今回賛成に回る議員が増えて、相当な大差に逆転したとの印象であるが、懸命の説得工作の結果であろう。

それにしても草の根の感情、「家を失った人が救済されず」、「金持ちや銀行が救済される」が議会に表現されるところに凄さと恐ろしさを感じる。しかし、このダイナミズムによってのみ米国がバランスを取り戻すことが出来るのであれば、今回の経験が貴重なものであることは間違いない。

何も議論せず、主張もせず、ただただ賛成する“賛成マシーン”としての日本の地方自治体議会は如何なる教訓を受けとったのであろうか。

コメントは更に「草の根デモクラシーと地域社会」に及ぶ。

今回の騒動はアメリカの「草の根」デモクラシーの力を改めて認識させられるものであった。しかし、反対の意思表示があったが故に、アメリカだけでなく、ヨーロッパも含めた金融政策にある種の歯止めを打ったと言えなくもない。

もし、下院が一発で「金融安定化法案」を通していたら、危機意識のうえで、今と同じようになっただろうか。ブッシュ大統領だけでなく、ヨーロッパ、日本、更に新興国の首脳も巻込んで意識改革を迫るところまでいったであろうか。

「草の根」の力が一旦は法案を否決し、その後に可決したことによって、今後も金融資本主義を抑止する方向に働くことは間違いないであろう。日本では「草の根」という言葉は余り使われない。

地方分権と言っても「地域」と言う言葉はよく使うが、それ以下の単位を表現する言葉はなさそうで「地域住民」にいきつく。しかし、「草の根」にように個々の力を表現するまでにいたっていない。あくまで集団としての住民である。

その「地域住民」の力を地域社会の議会が集結し表現できるようになれるのか、今回の事件を契機に、今後、問われ続けることになるであろう。

今回の「政府閉鎖」についても同じような感想を持つ。しかし、当時ほどには肯定的ではない、と自分自身は感じているようだ。正確にはわからないのだが。

      
コメント
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