散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

市町村議会における議員の役割像~露木・前町長の講演(2)

2013年10月25日 | 地方自治
露木順一・前開成町長の講演における「都市計画・あじさいの町」の部分を昨日の記事で報告した。残りの三点「現場重視の議員像」「人口激減・大規模災害」「新たな道州制・国直轄の首都圏中核地域」の中で、本記事では「議員像」について報告する。ここが講演での主な部分の処だからだ。

筆者の問題意識は、議会及び議員の役割像に関し、開成町(1.7万人)と政令指定市・川崎市(144.7万人)とで共通する部分、違う部分がそれぞれどんな処なのか、ということだ。更に言えば、基礎自治体の原点は小規模レベルの町村にあり、政令市などは本来の基礎自治体を外れているとの視点だ。

露木氏は地方分権改革推進委員会委員だった当時、議会に対して積極的に働きかけ、首長として議会改革に協力した。その第一は議会に対する情報提供、先ずは予算、一般質問に対する資料の充実であった。実質的な改革に必須と考えたからだ。議会も呼応し、一問一答方式、首長反問権、通年議会等が実現した。

全国の自治体議会においても改革志向は高まり、議会基本条例の拡大、住民との対話集会の実施、事業仕分けの導入などが進んでいる。一方、世論調査では、議会に満足していないとの回答が60%に達する。依然として地方議会及びその質に対して住民は厳しい目で見ている。

ではどの様に議会・議員の質を向上させるのか。
露木氏は先ず、議員個人の質の向上が第一として、ジャーナリスティックな感覚が不可欠であり、現場重視で現場の声を聞いて行政へぶつけていく、行政の監視役としての議員像を示した。

一方、議会の質的向上としては、チーム・議会としての活動、例えば、事業仕分け、条例作りなどを挙げる。しかし、ともかく、現場第一主義の行政監視を議員の第一の仕事と考えている。

筆者は議員の質的向上が第一との議論に異論はないが、それはチーム・議会として発揮されることが重要と考えている。おそらく、人口が少ない基礎自治体の原型を示す町村と、人口規模が大きな政令市との違いがあると思われる。

即ち、米国議会の騒動にみられるように、議会が最終的に問われるのは意思決定における「意見の統合」だ。日本の自治体では首長の影響力が強く、米国議会のような騒動は起こらないとは思う。しかし、今後は人口激減、超高齢化、財政悪化で地域の中でも、真剣に議論すれば、意見が割れる可能性はある。

その意味で、意思決定への不断の努力として、委員会審議で議論を充実させることが重要だ。例えば、委員会ごとにテーマを決め、行政との議論も含めて半年―1年程度でまとめ、課題を「決議」(議会としての意思決定)して行政へ示すことは、「事業仕分け」「条例作り」よりも実行しやすいはずだ。

少し議論がそれたが、元に戻すと、露木氏は最後に残された問題として住民が地域の政治に関心を持たないことを挙げる。お任せ民主主義だが、それが人口減、財源難のなか、自らの首を絞める課題を山積するだけだ。地域に根を張る議員の特性を議会として生かしていくことが一つのアプローチになる。

ともあれ、露木氏の議員像に叶うには、遙かに遠い目標への研鑽が地方議員にとって必要なことは確かだ。
      
コメント
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