家から5分と行かない、大きなマンションの向に墨田区の教育委員会の案内板がある。「河竹黙阿弥終焉の地」とある。
「月も朧に白魚の、篝も霞む春の空……」と朗々と唄い上げる極めて洗練された台詞が特徴の黙阿弥作品であるが、「鼠小僧」「三人吉三」などで一時代を築いた人気作家である。
彼は江戸・日本橋の裕福な商家、吉村勘兵衛の二男に生まれたが、若い頃から読本、芝居の台本、川柳や狂歌の創作にふけるようになり、14歳で道楽が過ぎて親から勘当されてしまう。貸本屋の手代となって生計をたてるようになるが、仕事はそっちのけで朝から晩まで読書三昧の日々を送る。これが将来の糧となった。
昔も今もさんざん道楽した人の作品は面白い。太宰治や永井荷風などの作品はやはり面白いが、遊び尽くすとなにか達観するという領域に突入するのであろうか。しかし彼は死の直前身の回りをきれいに整理して亡くなったという。
真面目さが中途半端な私には理解できない世界ではある。消費都市江戸でこそ花開いた文学であろう。
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