有森隆「巨大倒産」さくら舎 2017年刊
タカタ、シャープ、そごう、ミサワホーム、安宅産業、大昭和製紙など、我々がよく知る一世を風靡した会社が、いずれも倒産、解体へと追い込まれた。その原因、背景を探るという、壮大なテーマに取り組んだ作品。ただ結論はいずれも経営トップの采配の仕方がおかしかった、というもので、そこから先がみえない。何故おかしくなったのか、どこで市場から見放されたのか、という切り込んだ分析がされていないので、外から見た評論家の評論の域を出ていないような気がする。
それにしてもあれだけのシェアーを誇った企業が、一朝にして崩壊するというのは恐ろしい。企業は外部の影響より、内部崩壊のほうが深刻だということはよくわかった。日本人の組織性、或いは忖度がこれらのことに一層拍車をかける。それと、外部の好況に支えられた成功体験が、邪魔をして外部環境が変わっても変化しないという、感受性の悪さもその一因だということも、概ね言えるのではないか。
トヨタの歴代社長、渡辺、張、章男氏などが、末端の社員の驕りを戒める発言を就任早々に発しているのを見ると、これらのトップは、本能的に防御姿勢をとっているのかもしれない。
この本は、トップの重要性、謙虚な姿勢、変化を受け止める感受性など、企業組織を引っ張ってゆくには、独創性、カリスマ性などに加えてこんな面も大事なことを教えてくれた。