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正にヒント

2012-12-18 12:44:15 | 


五木寛之「生きるヒント」角川文庫 平成6年6月刊

久方ぶりに五木寛之の書いたものを読んだ。12の項目(歓ぶ、惑う、悲しむ、買う、喋る、飾る、占う、知る、働く、歌う、笑う、想う)についての随想である。
知識の広さだけではなく、対立する考え方の双方を取り上げ、意義を認める、と言う姿勢である。

例えば「飾る」についてでは、虚飾と言われるように、無理に飾ることに対して批判があるが、よく考えてみると、我々自身は飾られた表象によって判断していることが多いのではないか。料理は眼でも食べる、と言われるけど、盛り付けや食器の選択は非常に大切だ。

京都では色々直接的に物言いをしない、事が多く独特の言い回しがあるけど、これもある種の飾りである。このことは京文化の形成を促しているし、もしかすると日本文化の基礎かもしれない。

喋ることについても、「沈黙は金」と云われる、風潮に対し、蓮如上人の言葉を引き、そうとばかりは言い切れない、喋ることによって磨かれることもある、と論を展開する。
「自分の人生を愛するための12章」という副題がついているが、人生論というような大袈裟なものでなく、まさに「生きるヒント」くらいの重さの本である。

自説を執拗に展開して、説き伏せたり、こう有るべきだ、のべき論でもなく、真面目で気楽なエッセイである。