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新しい時代への現実の変化

2012-10-10 08:05:46 | 


藻谷浩介・山崎亮「藻谷浩介さん、経済成長がなければ僕たちはしあわせになれないのでしょうか?」学芸出版社刊 2012年7月

コミュニテイデザイナーというわけのわからない職種の人がいる。
先日TVでその活動を見て興味が湧き、その人柄の素朴そうな山崎さんを知り、面白そうだと想っていたら、こんな本を出していた。
長ったらしい題の対談本だが、本質的な問いかけだ。相手の藻谷浩介氏は東大法学部卒業、日本総合研究所の主席研究員というエリートだが、現場を徹底的に大事にする人で、語り口もわかりやすい。

彼は先ず統計の危うさについて語る。マクロと実態の乖離を、偏差値の高い進学校に入学すれば偏差値が自動的に上がるか、と言う例で説明する。そのままでは、平均点を下げるだけで、あたりまえであるが、やはり一生懸命勉強せねば、自分の成績は上がらない。
又県民所得の統計は必ずしもその県の繁栄度を表さない。例えば富山県は所得は高いのだが、高所得者は買い物は東京、大阪まで出てしまうので地元の繁栄につながらない。

又日本は低成長で国が傾きかけているのではないか、という問に対しては、東北大震災の損害金額15,6兆円に匹敵する金融損益の黒字を日本は上げている。アメリカ、中国、韓国に対しては圧倒的な貿易黒字をあげ、スイス、フランス、イタリアなどのブランド輸入国には赤字である、という現実を見せる。

それと成長率の高いところが裕福で、さびれているか、というと必ずしもそうではない。低いところでも、過去のストックがあれば、それを利用してそこそこ豊かな生活ができる、と実例を上げて説明している。
勿論最低限度の基盤は必要であるが、もう日本は、これ以上量的なものを求めるのではなく、質的なものに価値を見出してきている現実を直視せよ、とも言っている。

数々の常識を、統計的事実と実例で、覆してゆく。世界が特に日本が世界に先駆けて変化しているのではないかという予感がする。地球に限界があるのだから、それに適合するのは人類の必然である。新しい時代には新しい価値観が必要だが、追いかけられるような、経済成長至上主義が必然ではないと、現実からアプローチしてゆく試みは、新しい時代を予感させる。

戦略を練る立場のビジネスマンには、既存の成長論とは角度の違った、示唆に富む考え方であろう。