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終わらざる夏(上)

2011-10-31 16:29:54 | 


読書の秋というわけでもないが、このごろ時間がたっぷりあるので本が読める。
乱読、雑読であるが、この本はやはり面白い。まだ上巻を終わったところだが、
ちょっと紹介しておきましょう。

終わらざる夏 上 巻 集英社刊 浅田次郎著 

私の好きな浅田次郎の著書。著者得意の軍隊ものである。但し自衛隊ではなく終
戦前夜の帝国陸軍の事情を描いている。
これは如何に戦ったかという戦記ではなく、3人の人物の召集の経緯を中心に、
戦時中の生活、民衆の思いを描いている。(下巻では違う展開があるかもしれな
いが)

登場する3人は、退役した軍曹経験者の暴れん坊、インテリの翻訳者、医学生の
キャラクターがいきいきと活動する。いずれも召集不適格者(或いはそれに近い
人物だ)。元軍曹は右手に指が親指から3本欠けていて、銃の引き金が満足に引
けない。インテリは45歳と10ヶ月、つまり召集の限界期限の46歳まで一ヶ月有
余の年寄り、医学生は医科専門学校から東京帝大の医学部に転学したばかりの医
学生。当然戦時中には大切されねばならぬ分野の職種の人間である。

いずれも、戦争初期ならば、召集はされない条件の人物ばかり。しかも配属先は
千島列島の先の占守島である。輸送手段を失った日本軍はこの地に無傷の戦車隊
が50台以上を残している。ここまで(上巻)は追い詰められた日本の状況と徴
用事情とそれをめぐる、それぞれの家庭事情、戦争・軍部がもたらす民衆への無
情な圧力を描いている。この辺の描写力は浅田次郎の得意分野である。

これから物語はどう展開していくのだろうか。
ここまでは戦時中の教育、雰囲気が、社会に及ぼしている空気を過不足なく伝え
ているような気がする。家族の切ない思い、軍隊内部の勤務状況など読んでいて
飽きない。著者は、日本にはキリスト教に代わって天皇が絶対の神だから、西欧
の列強から独立性を保てたのだというかなり大胆な推論を述べている。
いずれにしても後半(下巻)が楽しみである。