mukan's blog

つれづれなるままに ひぐらしPCにむかいて

花の楽園、難行の苗場山

2016-07-28 16:18:04 | 日記
 
 今日(7/28)の朝日新聞に「東北の高校生 日本一の頂」と見出しをつけて、登山家・田部井淳子さんが富士山へ高校生を案内したことが報道されている。この記事によると「登頂はしなかったものの(田部井さんは)登山道で高校生を励ました」とある。年齢をみると、76歳。おやおや、彼女でもこうなるのか。
 
 というのも、一昨日から昨日にかけて苗場山に登った山の会の最高齢者・Otさんが75歳半。雨の中、5時間ほどかけて登り、山頂で一泊、やはり雨の中を5時間ほどかけて下った。累積標高差は約1300メートル。五合目からの富士登山に近い。この方もマラソンなどを経験しているアスリート。でもずいぶん弱くなったとご本人ももどかしそうであった。だが、田部井淳子がこうであってみると、Otさんはよく歩いている。まだまだへこたれる歳ではない。上りと下りの歩行タイムが同じなのはどうしてか? 一言で言えば、登るときの疲れが山頂一泊では取れないのだ。もちろんこの山は花の季節であるから、コースタイムで歩くことは考えていない。ゆっくりと登り、花を愉しんでこようという趣旨であった。
 
 じつはこの山、昨年夏に上る予定であった。ところが直前になって台風が襲来、中止。Otさんは、やはり山の会のKさんと昨年夏にこの苗場山に挑戦している。日帰り登山。しかし夏の暑さにやられて、神楽峰を過ぎたお花畑のあたりでダウン、Kさんだけが山頂に向かいOtさんはそこから引き返したという。彼にとっても私たちにとっても、リベンジ登山。私自身が昨年の下見登山の折に熱中症にかかり、這う這うの体で山頂までの往復をしている。だから今年は、山頂小屋に一泊するようにした。そこへもってきて、「曇り、降水確率20%」の予報が、「雨のち曇り、降水確率40%」に変わった。天気が悪いというよりも、夏の暑さにやられないで上れると、むしろ喜ぶような気分であった。
 
 越後湯沢駅をレンタカーで出発してすぐに小雨になった。この程度なら涼しく登れるとタカをくくったのもつかの間、登山口に着くころには蕭蕭と降り注ぐ本格的な雨になった。駐車場には3台の車が止まっている。山頂小屋も空いているに違いない。雨具を身につけ、登りはじめる。登山道は水が溜まり、ぬかるんでいる。急斜面では滑りやすく、すでにストックが威力を発揮している方もいる。その道を抜けるとヤナギランが群落をなしている。まだ7月なのに今年は、花の開花が速いのかもしれない。早くも花談義がはじまっている。こちらのは何、あちらのは何と名前の同定がやりとりされる。一人、若い男性が降りてくる。山頂に泊まったのかと聞くと、日帰りだという。4時半に登りはじめ今降りてきた、と。時計を見ると10時手前。5時間半弱で往復している。下山してしまうすぐ手前まで雨は落ちていなかったそうだ。これから雨がとれるか。
 
 25分ほどで和田小屋に着く。一組の男女が休んでいる。これから登るのかと尋ねると、「水場から引き返してきた。道がぬかるんでいて雨もひどくなったから、山頂をあきらめた」と笑っている。汗ばむが暑いほどではない。広いスキー場を左に見ながら樹林への道をたどる。岩と木の根と水浸しの泥道とを踏み分けて登る。ところどころに咲く花が目に留まらなければ、これほどしんどい登りはない。ヤマアジサイが花をつけている。何千キロもわたるアサギマダラが好むヨツバヒヨドリが群落をなす。ノリウツギも白い飾り花を開いて美しい。ミヅキは赤い実をつけている。オカトラノオが白い花穂をゆったりと垂らして群れをつくっている。
 
 下の芝、11時20分。その近くでキンコウカが黄色の清楚な花をつけて群れている。サンカヨウがすでに大きな玉のような実をつけている。イワイチョウが一輪咲いていて、雨の中カメラを濡らさないようにさかさかとシャッターを押したが、ボケてしまった。樹林を抜け中の芝に着く。12時。歩き始めて2時間半。お昼にする。雨も小やみになるが、風が出てきたろうか。気温が低い。食欲もわかない。私も、弁当のおかずを食べただけ、ご飯を口にすることが出来なかった。テルモスに入れたお湯がおいしいと思うほどありがたかった。食べていると、「寒いから歩きます」とMrさん。まだ食べている人がいる。「どうぞ先に行って。神楽峰の分岐で待っていてください」という。Sさんも同行する。Kzさんが慌てて食事を止めて、出かける用意に取りかかる。階段を踏みながら歩く。神楽峰の分岐で待っていた人たちは、最後尾の姿を見ると、さっさと出かける。寒いのだろう。ホソバコゴメグサが咲いている。
 
 ここから少し下る。お花畑にかかる。オタカラコウが黄色い花をつけて群落をつくっている。オニアザミが丸い大きな頭を重たげに下げ、その周りにエゾシオガマが花をつけて取り囲んでいる。赤い小さなクルマユリが緑の草とミヤマシャジンのあいだに背を伸ばして美しい。先行隊は、お花畑で皆さんを待っている。その脇に、ニッコウキスゲが群れてオレンジの花をつける。オニシモツケが蕾になり花になって赤い色どりを添える。キオンが黄色の花を咲かせる。タカネナデシコがたくさん花をつけているが、雨に濡れて力なく垂れさがる。同じく白いモミジカラマツも水にぬれて小さい穂がまとまって垂れている。トモエシオガマが白い花の群落をつくる。緑の葉のあいだにくるくると回るようなトモエ型の花びらだ。ヤマブキショウマが、もう咲き終わりなのか、クリーム色に変わりかけた穂花を開く。ウスユキソウがこれからの準備を整えて、色を変えつつある。クガイソウ、シモツケソウにまじってコキンレイカの黄色の小さな花がひときわ美しく際立つ。セリの仲間であろう、緑の蕾と白い花を天に向けて傘を広げるように開いている。マルバダケブキも黄色の花を咲きっちょに付けて存在を示す。
 
 先行隊はどんどん先へ行く。雲の中に隠れたその姿が、ときどき、パッと雲が取れて目に入る。Kzさんが「いやあ、雲海がきれいだ」と東を向いて声を出す。見ると裾の方へ視界が開け、峰々のあいだに雲が漂う。ウメバチソウが一輪、岩の間に顔を出している。「オオバタケシマランよ、それは」と声がして、植物好きの人がタケシマランとの違いを説明している。赤い実が顔を出す。登山道は厳しくなる。九十九折れに高度を上げる。その脇にオヤマボクチがすっくと立って緑の花をつけている。タカネシャジンがたくさんの青い花をぶら下げて、斜面の眼の高さを覆うように咲いている。前を歩く人の山靴がその向こうを踏んでいく。もうそろそろ山頂と思うが、何度も裏切られる。ひょいと山頂部に出るというよりも、ゆっくりと広い湿原が起ちあがるから、ここが山頂だという感動的な景観が、雲に隠れて見えない。
 
 山頂に達する。14時32分。ニッコウキスゲの群落が鮮やかなオレンジ色の花をつけて、出迎えてくれた。先行者のうちの一人、Sさんが傘をさして待っていてくれる。そそくさと山頂小屋に向かう。入口の脇に「乾燥室」があり、ストーブがたかれている。濡れた雨具をひとつひとつ衣文掛けにかけてロープに干し、靴をそこにおいてから、玄関を入る。部屋は? と訊くと、「どこでも、どうぞ」と奥を指さす。なるほど、一館一部屋。通路と一人分の背の高さ幅で仕切られた寝床がずずずっと繋がっている。泊り客は13人。全部収容で60人だろうか。今日はゆったりとしている。
 
 場所を決めて着替え、荷物を整理してから、食堂に集まる。「資料」をもってきて、今年度後期の「日和見山歩コース」を決めようというわけ。Kwrさんがビールを買ってきて皆さんにごちそうする。Fjaは焼酎を持ち込んでお湯で割っている。おつまみも持ち寄っている。Mrさん、Kwmさん、Sさんのつくってくれた「コース案」を一覧表にしてある。「Odさんのプランは?」とSさんが声を出す。「えっ? 送った?」と私。「送りました。pdfにした地図も付けて」とOdさん。私はみた覚えがない。「わかりました。あとで調べて、皆さんに送ります」と謝る。だが、山の一つひとつのコースの特徴の話に移るや、あれはここがどうと評定がさんざめく。わいのわいのやって、2時間経っても3ヶ月分しか担当者が決まらない。そこで、月ごとの担当者を決め、その方に任せるとした。すぐに決まった。
 
 夕食はカレーのおかわり自由。ずいぶん食べた。お茶がおいしい。お腹をいっぱいにして、7時前のTVをみると、明日は曇りの予報。よかったね、明日の日の出は4時半だそうだから、晴れているといいね、と言い合って、寝床に着いた。
 
 朝目が覚めてみるとちょうど4時半。よほどくたびれていたのだろう、9時間ほど熟睡した。窓を除くと、湿原のコバイケイソウの背の高い葉が雲の中に霞んでいる。曇りかと思いながら、また寝てしまった。起きたのは5時。雨が落ちている。「晴女・大明神の御利益も利かなかったねえ」とKwrさん。ふたたび昨日の、湿った登山着に着替え、荷物をパッキングする。ふと気が付くと、昨日の協議をメモしたプリントがない。あちらこちらを探してもなくて、忘れていなかったかを皆さんにきいて煩わせてしまった。帰宅して荷物を整理していると、残ったおつまみを入れた袋にポンと一緒に放り込んでいたことがわかった。
 
 朝食を済ませて、出発したのは7時10分。別の通路を通って登ってきたところに戻ろうと思ったが、通路が水たまりになってしまっている。雨が降り注ぎ、小屋も全部がすっぽりと雲の中に包まれている。もう一度山頂の木柱にところに行き、記念の集合写真を撮って下山にかかる。下山はしかし、調子がいい。岩が多く注意が必要なところもあるから、急がずゆっくりと下る。花がどこにも咲いているから、飽きることがない。昨日気が付かなかったところにクロヅルがある。オニシオガマも次々といくつも群れて咲いているのが目に留まる。タテヤマウツボグサも、もう一度写真を撮り直す。ヒメシャジンも、昨日見られなかった人たちの目にも入った。花畑を下山する。ハクサンフウロが4輪、梅雨を花びらにつけてきれいだ。トリカブトの仲間もこれからの花開く用意を整えている。リンドウの仲間があちこちに目に着くが、花開いていないので、これと同定できない。オヤマリンドウかと思うのもあったが、写真を撮って同定してもらうと、下の茎から花が出ているのか別の茎の先端に花がついているのかわからないから同定できない、と言われた。イワイチョウがあった。イワショウブも見た。ツルリンドウが一輪目に留まった。ヒヨドリバナの仲間だろうか、きれいだ。キンコウカが登るときよりもきれいに見えるのは、なぜだろうか。中の芝を下るころ雲がとれ、下に湖が見える。雨も止んだ。こうして上から見降ろすと苗場山というのが大きな山体をもっていることがよく分かる。山頂は新潟県と長野県の県境になっているようだ。山頂小屋は長野県栄村の村営だ。
 
 Otさんが下りの脚を慎重に運んでいる。たぶん疲れて、バランスが難しくなっているだろう。「どこも悪くありません。加齢です」というのが医者の見立て、と笑う。ゆっくりでも歩けるのだからいいじゃないとカミサンは言う。たしかに。今朝の新聞じゃないが、あの田部井淳子さんも、自分の名を冠した登山教室で、登頂出来なかったという。76歳。あれほどの山暮らしをしてきた人でさえこうなのだから、ほどほどに山に付き合ってここまで歩いているOtさんは、たいしたものよとカミサンはほめたたえる。そうなのだよね。考えてみるまでもなく、この山の会は高齢者の山の会だ。だったら、それに合わせて山を選び、皆さんがいっしょに行ける山を取り入れて山行計画を組むべきなのかもしれない。8月の鳥海山も、エスケープ・ルートを考慮したり、場合によっては途中で泊まることのできる山小屋を見つけておくことが必要かもしれない。そんなことを考えさせてもらった山であった。
 
 下山後の温泉は、Kwrさんの機転で350円で浸かることが出来た。そのあとの越後湯沢駅中の下山祝いも新潟のお酒のアンテナショップのような店。田舎風のおつまみも、なかなかおいしかった。Kzさんが日本酒の味をKwrさんに教わっていたのが印象的であった。ほんとうに皆さん、お疲れ様でした。
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