mukan's blog

つれづれなるままに ひぐらしPCにむかいて

何とか無事に歩き切った富士見山

2016-06-23 10:56:23 | 日記
 
 インターネットの天気予報に気をよくして、いそいそと出かけた富士見山であったが、そうは問屋が卸してくれませんでした。昨日、22日の話。晴とまでは願わず、曇りがつづけば上出来。「富士山を見ようとまでは思いません」と「実施連絡」を参加者に送り、皆さん甲府駅に集合した。
 
 登山口に降り立ったのは10時少し過ぎ。雨具をつけた方がいいかしら、という声に天を見上げる。たしかに、霧のように小雨が降りかかる。装備を整えていると、小型のパトカーが通りかかる。先ほど下の方ですれ違った。「気を付けて」とお巡りさんが声をかける。地元交番の見回りか、一人しか乗っていない。だがこれで、登山届を出したようなものだと思う。
 
 歩き始める。「大峰蛇之倉七尾山修験設立道場やすらぎの宮」の堂平登山口。大峰山の洞川を本寺とする修験のお寺さん。仏教も神社も融け合って一緒くたになっているが、洞川となると、修験道の開祖・役行者(役小角)が従えた前鬼・後鬼の後鬼に当たる。女人禁制の大峰山に登ったときに洞川温泉に泊まり、後鬼の話も耳にした。そのときの記録を見ると、非合理なものを受け容れる感性に「信頼感」の源があるのではないかと書きつけてある。きっと何か、感じることがあったのであろう。
 
 いきなりの急登。杉の森林帯。落ち葉が滑りやすい。汗ばむ。すぐに「合羽を脱いでいいですか」と誰かが聞く。そんなこと人に訊くことじゃないでしょと思うが、はいはいと私も雨具を脱いで、大雑把にたたんでザックカバーの脇に滑り込ませる。見ていると、丁寧にたたんで雨具の袋におさめザックに入れている人もいる。急登がつづく。標高50mごとに表示板が置かれているから、歩くペースが目に見える。「850m/1640」と最高点との差もわかる。地理院地図に、今日の登山ルートは記載されていない。だから表示板の標高を尾根との関係で読み解いて、だいたいの自分の居る位置を推定する。今日は標高差940mを登る。富士見山の支尾根の南側にとりつき、尾根に乗ってから北側を回り込むように主稜線上に乗る。そこまでに900mの標高差。つまり、今日の登りの大半は、ひたすらな急斜面の登降というわけだ。雨は降ったりやんだり、雨具を着たり脱いだりした。賑やかな鳥の声が聞こえる。キビタキだろうか。コマドリもいるように思える。ピーッ、ピーッと口笛を吹くような声がする。ピュイッとならシカだと思うが、木の高いところからのように聞こえる。アオゲラだろうか。霧の中の岩陰に赤い花が浮かぶ。ヤマシャクヤクかなと誰かが言う。
 
 標高1400mを過ぎたところで11時45分。相変わらず霧の中。お昼にする。頭上を覆うヒノキやカエデの葉が雨を抑えてくれて、気にならない。だが動かないでいると少し冷える。それでも30分はいただろうか、再び登りを開始する。ポポポポポ、ポポポポポとツツドリの鳴く声が霧の谷間に響く。振り返るとすぐ足元に、黙々と歩く後続の人の頭が見える。13時00分、標高1600mの表示板のある主稜線に乗る。「←富士見山 御殿山・十谷→」「堂平主下山道↓」とある。お昼をふくめて約2時間40分。上々のペースだ。西側はカラマツの樹林、東側はヒノキの樹林。それらの中にカエデが多く混ざる。秋にはうつくしい山肌をみせるだろう。ジュウイチ、ジュウイチと霧の奥からさえずりが聞こえる。いいなあ、こういうのって。
 
 ここからOdさんが先頭で富士見山に向かう。みなさん急に元気が恢復したようだ。ほどなく平須下山路の分岐、さらに稜線を進むと「富士見山展望台1639.0m」の「奥の院」に到着。小さな赤い鳥居もあり、その脇に「←30分富士見山山頂」とある。ここまででもいいかと私は思ったが、「雷雨になる」とMsさんがスマホをみなが「急いだほうがいい」と言っている。ではでは行きましょう、と声をかける。OdさんとMrさんを先に立てて富士見山の山頂へ向かう。ところがそこからいきなりの急下降。「下山家」のMrさんが悲鳴を上げる。「私、ここで待ってます」というが、彼女の後ろは後続の人が詰めている。ほかの人をすれ違って通すほどの道幅がない。Kwさんに「降りて待てば」と言われて仕方なく、しゃがみ込みそうな格好で下る。同じように声をあげていたOdさんはさっさと下に降りて、見上げている。下ってしまえば怖さを忘れて先へすすむ。二度ほど上り下りを繰り返し、「富士見山1639.5m」の山頂に立つ。広い樹林におおわれている。古びた山頂を示す標識の下に、白いパネルに山名と標高を記している。その脇に三角点の石柱がある。どなたかが「山梨百名山なんですね、ここは」と話している。そうだ雷雨になるって言ってたっけ、と声を出し、下山を開始することにした。14時。先頭にKzさんが立つ。
 
 再び展望台に戻り、止まることなく「平須下山道」の分岐に踏み込む。14時20分。ここから標高差900mほどの急斜面を下る。道は山肌をジグザグに刻んで良く踏まれていて歩き易い。Kzさんは後ろを気にしながら調子よく降る。OdさんとMrさんがくっついていく。少し間隔を置いてOnさんとKwさんが余裕をみせながらついていく。そこからまた少し離れてMsさんが追う。Khさんと私が末尾を歩く。ここにも堂平登山道と同じように、標高50mごとに表示板が置いてある。なんと100mを6分で下っている。これだと1時間かからないで林道に出てしまうな、とKhさんと話す。2カ所、道が崩れて、ロープを張っているところがある。ところどころに目を瞠るような大木が枝を横に張り出して道をふさいでいる。下をくぐって振り返り、その大きさに驚く。Kzさんはところどころで全員がそろうのを待って、再び歩き出す。「そんなに急がなくてもいいよ」と声をかける。「いや、急いでいるわけじゃなくて、後ろから追い立てられてる」と笑う。「下山家」の2人は「必死で着いて行っているだけよ」と笑い返す。Msさんは「これでは鳥海山はだめだわ、私」と自分の身体と相談している。
 
 上水道水源地前の階段を下って林道に降りたのは15時42分、標高差937mを1時間25分で下った。コースタイムは2時間だから、ずいぶん早いペースだ。全行程、5時間30分。お昼タイムを除くと5時間で走破した。私の眼にした「山行記録」によると7時間20分であったから、どこかでコースを間違えたのではないかとおもったが、これほどしっかり「標示」があれば、まちがえようもない。ひょっとすると私たちは、スーパー老人なのだろうか(笑)。「皆さん健脚が多いね」と、あとでKzさんが話して、意外な女性陣の健闘に脱帽している。
 
 出発点には簡単に着いた。汗を拭き、雨具を仕舞う。靴を履き替えた方もいる。Onさんは、2台の車のフロアにもってきた新聞紙を敷いている。泥靴で汚れるのを「悪いから」という。レンタカー屋さんにとってはありがたい配慮だ。帰宅ラッシュの時間と重なってはいたが、順調に帰路をたどり甲府駅に着いたのは、17時10分。車を返却する。Khさんは、彼がやっているアスリート養成の総会があるといって、すぐに特急に乗って帰る。ほかの人たちは、駅近の「ほうとう屋」へ立ち寄って、まずビールで乾杯。かぼちゃのほうとうやキノコのほうとうをいただいて、甲府発の特急新宿行きに乗って帰路についたのでした。