今日は冬型の気圧配置になり、関東地方は午前中晴れ、午後になると雪が舞うかもしれないと、予報が言っている。昨日までの高い最高気温はこの先3日は平年並みになるか。こうして三寒四温の春に向かうのだろうな。
そんなことを考えながら、今日は、群馬県の県境に近い栃木県の阿蘇山系・仙人が岳に向かう。標高は663m、足利市の最高峰である。車で足利市の最西北端にあたる国道218号線、小俣町岩切に行く。この国道の南側には深高山から石尊山への山並みが連なる。北側には仙人が岳から猪子峠への稜線が立ちはだかる。両毛線の小俣駅近くからその谷あいを抜けているのが218号線だが、猪子トンネルを通ると松田地区を経て、ぐるりと足利へ抜ける。まことに県境の山間地域を構成している。
東北道と北関東道をつかうと、わずか1時間半で岩切に着く。標高200m。降った雪が凍りついた駐車場に車を止め、猪子峠に向かう。8時。わずか20分足らずで峠に着く。そこからトンネルの上を乗っこす仙人が岳への稜線に登る。じつは、このコースを紹介していた「栃木の山」のルートは、岩切登山口から稜線の西側を流れ落ちるてくる沢沿いに「生不動尊」を通って、「熊の分岐」で稜線に上がり仙人が岳を目指し、下りに猪子峠へ降りる。ところがその記述を読んでいくと、「アドバイス」として、「健脚の人なら上りに展望の良い逆コースをとっても良い」とあった。はて、地図を打ち出してみると、南に位置する猪子峠から北へ向かって仙人が岳への稜線を歩く方が、陽ざしを背に受けて歩く分だけ快適だと思う。下山の午後には陽ざしが谷あいに当たる。明るい渓を下る方が気持ちいいに違いない。それを「健脚向き」というのは、なぜだろうと疑問がわいた。稜線途中の岩場「犬帰り」があるのが、危険なのだろうか。とすると、「健脚」ではなく「危険」と記す方が適切ではないか。ともかく今日は、逆に歩いてみようと考えたわけ。
国土地理院の地図には、目印となるピークの標高は記しているだけ。歩いてみると、それぞののピークに「山名」がつけられている。地元の人たちが呼んできた名前なのであろう。p511mは「猪子山」とあった。その先のp500mは「維の岳山頂」とある。さらにp561mは「知の岳」とあった。「犬帰り」は標高の記述はなく、クサリがついていた。
「犬帰り」の岩場は、何処が岩場? と思いながら歩いていて、1カ所、4メートルくらいの大きな岩に阻まれてしまうところがあった。鎖がつけられている。脚の置場がない。斜めに傾いだのっぺりした岩の面に左足底を預けてつっぱり、両手で鎖をつかんで身体を引き上げる。上がったところで右足を岩角に引っ掛けてそこに体重を移し、左足をもう一つ上の岩角に乗せる。こうしてクリアした。だが、ここは下るときには、クサリに両手でぶら下がるようにするのだろうか。降りの方が怖いと思う。となるとこれが、「健脚」の理由ではない。そんなことを考えながら、標高500mから600m九合の間の若干の上り下りを繰り返しながら、ともかく細い稜線ばかりを歩く。正面に屹立するのが仙人が岳と思っていたら「知の岳」だったりしたのだが、なかなか見栄えのする稜線歩きが続く。
と思っていたら、ポンと「熊の分岐」に出る。ちょうどそこへ、「生不動尊」を経由してきた登山者が2人登ってきたのと出逢った。30歳前後の2人とも、ナップザックのような軽い荷物しか持っていない。「生不動尊」からのルートは道に迷いやすい、という。「下山も?」と聞くと、ちょっと考えて、「下山は一本道だと思う」と付け加える。上からみるとルートの踏み跡は案外よく見える。下からみると、落ち葉などのところは全部「登山路」にみえる。そうした様子があるのかもしれない。彼らは先に仙人が岳にずんずんと向かう。
でも、「熊の分岐」から25分ほどで山頂663mに着いた。10時36分。先ほどの2人連れが帰りはじめている。「トレイル・ランニング」をしているようだ。ただ山を歩くだけでは飽き足らなくなり、走りはじめる。そういうレースがあちらこちらで開催されるようになったから、そのトレーニングもまた、にぎやかに行われるようになった。この地方の低山は、雪が少なく、走りやすい。「でも、登りは歩いているんですよ」と笑っているが、そのペースは「百名山一筆書き」のタナカヨウキ君よりも早そうだった。
仙人が岳の山頂で、早いがお昼にする。晴れているが、風が強い。雪をかぶった赤城山ははっきりと見えているが、富士山や袈裟丸山や皇海山は早くも出てきた雲に隠されてしまっている。午後の雪雲が近づいてきているように思った。60歳くらいの男性が登ってくる。松田町の方に車をおいて、猪子峠から歩いてきて、またそちらへ戻るという。
下山にかかる。先ほどの「熊の分岐」まで戻り、そこから急斜面の渓への道をジグザグに下る。迷いそうなところは、たしかにない。落ち葉がたくさんあるから、それに惑わされていたのであろう。水のない沢(涸れ沢)のようなところから、いつしか水が流れ出て、沢沿いに歩いている。そのうち、すっかり沢の中を歩くようになった。ところどころに、丸太を何本か並べて橋にしている。そう言えば先ほどの若者は、「山犬に吼えられた」と言っていた。猪狩りなどに使った犬を、ほっぽり出して帰ってしまう狩猟家が結構いるのだと、友人のKさんが愚痴っていたのを思い出す。これら野犬が攻撃的であったら困るだろうなと思う。暗い沢の中のルートも、わずか25分で「生不動尊」に着く。そこから先もこの沢に沿って、岩切まで下る。歩きやすい。果たしてどこで迷ったかと思うほど、道はしっかりしている。
こうして「生不動尊」からも30分ほどで岩切に着いた。朝開いていた駐車場の入口はロープが架けられている。その端っこを留めているワイアを外して、車を外に出し、また閉じて戻ってきた。このコースは冬に使える。快適。「健脚」ならずとも、陽ざしを背に受けて歩くのが賢いと、来年の冬のことを、考えながら帰宅した。午後2時前帰着。これくらいの山歩きが、いいんだね。これからは、週に2回行こうかしらと考えている。