テレビやネットで最近よく「災害級大雨」という言葉が出て来る。気象庁では雨の降る量が1時間に80㍉を超える場合、予報用語として「非常に激しい雨」と説明して、「雨による大規模な災害の発生するおそれが強く、厳重な警戒が必要です」と注意を呼びかける。さらに、「記録的短時間大雨情報」という用語も、数年に一度、1時間雨量が100㍉の猛烈な雨を警戒するために使われる。
今月4日、石川県の加賀地方は災害級の記録的な大雨に見舞われた=写真・上=。金沢地方気象台によると、4日午後8時30分時点の24時間降水量は白山河内で395㍉、白山白峰で274㍉、小松で251㍉とそれぞれ観測史上最大を記録した。金沢は132㍉だった。
中でも被害が大きかった小松市では床上浸水220棟、床下浸水550棟、一部損壊や半壊が12棟など家屋被害が出た。きょう同市中海町を訪ねた。35度を超える炎天下の中で、重機が入りに道路を覆う土砂や流木の撤去作業が行われていた。また、各家々ではボランティアも入り、家の中の泥などの除去作業が行われていた=写真・中=。
作業をしていた80歳の男性から話を聞くことができた。4日午後4時ごろには家の1階で胸あたりまで水につかった=写真・下=。「仏壇も水浸しになった。34年ぶりや」とあきらめ顔で語った。今回、集落が水につかったのは、梯(かけはし)川の支流の滓上(かすかみ)川の橋の欄干に次々と流木がひっかかり、まるでダムのようになって集落に水があふれたと話してくれた。
酒店を営む80歳の女性もその日の午後4時ごろにひざのあたりまで水が来て、知人に助けを呼ぶと、消防隊のボートが救助に来てくれたと話した。店では、ビールなどを冷やす大型の冷蔵庫が倒れて使えない。「いまごろはお中元で忙しい時期なのに。店を続けるかどうか迷っている」と肩を落としていた。
白山山系のふもとにある小松市の梯川や白山市の手取川ではこれまで洪水に見舞われた歴史がある。郷土史に詳しい人から聞いたことがある。「加賀の一向一揆は洪水がもたらした」と。洪水で田んぼが減収すると、加賀の農民は年貢が納められないと領主に直訴した。大雨に備えた排水溝などは百姓衆が造り、一向宗の門徒でもある共同体は「百姓の持ちたる国」とまで呼ばれた。
話は横にずれた。中海町の現場で、腕章をした小松市の職員を見かけた。被災者から罹災証明書の申請が市役所に出され、その認定作業を行っている。外壁や屋内の被害の様子を写真で撮影していた。罹災証明書によって、公的支援を受けることができる。災害復旧に向けた動きも始まっていた。
⇒9日(火)夜・金沢の天気 はれ