自在コラム

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☆続・金沢市長選結果の考察

2014年10月07日 | ⇒メディア時評
  今月5日に投開票が実施された金沢市長選で前市長の山野之義氏(52)が自民・公明推薦の候補に大差をつけて当選した。競輪の場外車券売り場の開設問題で軽率な行動をとったとして辞任した首長がなぜ大勝したのか、新聞各社が有権者アンケートを通じた分析を掲載している。いくつか紹介する。投票率は47.03%とこの20年でもっとも高く、獲得した票は山野氏が9万3698、2位の下沢佳充氏(53)=元県議、自民・公明推薦=が3万5924だった。

  北陸中日新聞石川版(7日付)では、5日の投票日に実施した出口調査(1120人)の回答結果を分析した記事を掲載している。この結果で目を引くのは、自民党の支持層の56.7%が山野氏に投票したと答え、30.7%の下沢氏より倍近いことだ。また、民主党支持層でも51.6%、社民党支持層で69.2%もの人が山野氏に票を投じている。民主・社民・連合石川の推薦候補がいたにもかかわらずである。記事では「共産支持層でも23.1%が山野さんに投票しており、政党に関係なく幅広い支持を集めたことがうかがえる」と記載されている。

  この記事を読んでの私の直観だが、山野氏は大阪市の橋下市長のような強烈なキャラクターの持ち主でもなく、実際の選挙演説でも山野コールが街頭に湧き上がっていたというわけでもない。むしろ、自民・公明党推薦候補に対する反対意志としての行動だったのではないか。「あの人には市長になってほしくない」という論理である。あるいは、石川県選出の国会議員を自民党が独占している状況下で、県都・金沢市長までも自民に渡したくないという意思表示だったのかもしれない。そのミックスが今回投票行動かもしれない。

  北陸中日新聞の記事では、上記の有権者感情を読み解くのに面白いアンケート結果がある。女性票と男性票の行方である。男女別の投票先では男性が56.7%、女性が61.0%が山野氏に投じている。とくに50-70代の年代別の女性票では、70代の67.5%を筆頭に軒並み60%を超えている。一番少ないのは80代の46.9%である。選挙期間中、私の身の回りの会話を聞いた中でも「山野さんの方がましやね(山野氏と自民推薦候補と比較して)」という女性の声が聞かれた。つまり、女性票が山野氏に流れた。それは、山野氏への評価なのか、自民・公明党推薦候補への反対票なのか、後者の方がニュアンスとして強かったのではないか。

  無党派層への支持を狙った選挙と、組織票に依存した選挙。山野氏は街頭演説や個人演説会では、競輪場外車券売り場の問題を「軽率な行為だった」と支持者らに詫びた。党の推薦は受けずに、若者ほか無党派の支持を狙った運動を展開した。大学生が応援演説をしている姿もあった。これに対して、自民・公明党推薦候補は企業や団体めぐりを小まめに行い、また、丸川珠代氏ら現職自民党議員も応援に駆けつけた。が、自民・公明党推薦候補が獲得した票は山野氏の3分の1ほどだった。組織票を活かしきれなかった原因はどこにあったのか。選挙当日は金沢地方は、時折晴れ間ものぞく天気だった。無党派層の票が伸びやすい状況ではあった。

  最後に、意気込みである。投票が終わり、午後8時すぎると新聞とテレビが出口調査などから一斉に「山野氏が当選確実」を伝えた。勝った山野氏は頭を下げながらも、最後は次の市長選に向けて「ガンバロー」と気勢を上げた=各紙の写真=のである。これは通常の勝った候補者の姿とすれば奇妙な光景だったが、山野氏の任期は、公職選挙法の規定により、1期目の残り期間の12月9日までとなり、任期満了の前日から30日以内に再び選挙が行われることになる。前回のコラムでも述べたように、むしろ厳しいのは次の選挙だろう。たとえ次回勝っても投票率を維持できなければ本当に信任されたとは言えない。そんな思いが山野氏には強かったのだろう。

⇒7日(火)夜・金沢の天気    くもり

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