自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆一度開いた「ワニの口」は塞がらないのか

2022年07月23日 | ⇒ニュース走査

   「ワニの口」という言葉をメディアで目にしたり聞くようになった。よく使われているのが、政府の歳出・歳入の推移を折れ線グラフで示した図だ。歳出は右肩上がりで増え続ける一方、歳入は伸び悩み、まるでワニが大きく口を広げているような図になる。ネットで検索すると、財務省公式サイトのページ「これからの日本のために財政を考える」にワニのイラスト入りで解説が出ている=写真=。

   ワニの口を実感することがある。それは年金と物価上昇だ。消費者物価指数は去年9月から前年同月比で上昇に転じ、きのう22日に総務省が発表した6月の速報値はプラス2.2%だった。近所のガソリンスタンドでは1㍑170円と高止まりしている。クリーニング店では、かつてワイシャツ1枚180円がいまは240円、コットンパンツもかつて420円がいま600円だ。クリーニング店で話を聞くと、クリーニング工場では石油系の溶剤が使われ、アイロンやプレス機で使う蒸気は重油ボイラーとさまざまなものに石油製品が使われていて、原油価格はクリーニング料金に直結している、ということだった。

   ロシアのウクライナ侵攻にともなう原油高、輸入原材料の価格高騰が背景がある。これは日本だけではなく、欧米も物価高だ。ロイター通信Web版日本語(7月19日付)によると、EU統計局が19日発表した6月のユーロ圏の消費者物価指数は前年同月比で8.6%の上昇で、過去最高の上昇率となった。日本はEUに比べ上昇が小幅だが、いつ暴騰するか分からない。その不安をかき立てるのか円安だ。

   今月14日の外国為替市場では、1998年9月以来およそ24年ぶりに1㌦=139円台に円が下落する場面となった。1日でおよそ2円も値下がりする急速な円安だった。 その後はやや戻して137円で推移していた。きのう22日の外国為替市場では一時1㌦=135円台に値上がりし、結局136円台で落ち着いた。アメリカの景況指数で円安・円高を繰り返しているが、この安定感のなさこそが不安をかきたてる要因だろう。

   そして、さらに不安を煽っているのが年金の減額だ。今年度の年金額は前年度と比べて0.4%の減額となっている。高齢者のうち3割は年金生活者といわれる。年金生活者にとって、物価上昇と年金カットのダブルパンチだ。一度開いた「ワニの口」は塞がらないのか。

⇒23日(土)午後・金沢の天気   くもり時々はれ


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