自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆震災から半年ぶり「21美」が全面再開 度肝を抜くフォルム

2024年06月23日 | ⇒ドキュメント回廊

  元日の能登半島地震で展示室のガラス天井が落下するなどの被害があった金沢21世紀美術館がきのう(22日)半年ぶりに全館で営業を再開した。たまたま21美の前を車で通ると、兼六園側の入り口に巨大なフォルムの作品が展示されていた=写真・上=。まるで恐竜か怪物か何かような度肝を抜くような作品で、全館での営業を再開を祝っているのかと想像を膨らませながら素通りした。

  その作品が気になり、きょう午前中に21美を訪れた。美術館のメインエントランスに鎮座するこの作品は『死の海』。説明書きによると、ブラジルの作家、エンリケ・オリヴィエラの作品(2024)。生命体のように曲がりくねるフォルムはオリヴィエラが20年来続けているシリーズの一つで、入り口という空間を支配する生き物のようにも感じる。

  さらに面白いのは、作品の素材だ。オリヴィエラは廃棄された家具や建設現場など捨てられた木材を集めて作品材料としている。人は広大な森林から自然の樹木を伐採し加工して、家具や建物といった消費財にしている。こうした工程から出た木材をあえて作品として展示することで、人間と環境問題を考察してもらいたいとの意味を持たせている。今回の作品も、ブラジルで拾った膨大な合板の廃材に芸術作品という新たな生命に吹き込んだものだ=写真・下=。

  『死の海』という作品名の勝手解釈を以下。本来ならば樹木が育つ森林こそが生命の海でもある。それが伐採され、廃棄された樹木が無残に捨てられた投棄現場は死の海、この意味を考えてほしいというのがオリヴィエラの訴えなのだろうか。

  21美の今年のテーマは「アートとエコロジー」。政治や社会・自然環境が大きく変動する時代にあって、美術館として何ができ、どう未来に進んでいくのか探究していくというテーマなのだろう。その意味で、作品『死の海』が美術館のメインエントランスで展示された意味は大きいのかもしれない。

  地震によって半年ぶりに開幕となった展覧会名は「Lines(ラインズ)─意識を流れに合わせる」。日本、ベトナム、オーストラリア、ガーナ、フランス、オランダ、デンマーク、チェコ共和国、アメリカ、ブラジルの10ヵ国から多種多様な文化的背景を持つ16作家(グループを含む)の35作品が並ぶ。会期は10月14日まで。再度ゆっくり鑑賞したい。

⇒23日(日)午後・金沢の天気    あめ


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