自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆自民総裁選の「メディアジャック」現象

2021年09月22日 | ⇒メディア時評

   広告業界には「メディアジャック」という言葉がある。電車の中の広告や新聞、雑誌の広告スペースを1社が買い占める広告戦略のことだ。和製英語とも言われる「ハイジャック」からヒントを得た造語なのだろう。「メディア乗っ取り」だ。きのう21日午後のTBS系の情報番組に出演していたコメンテーターで、元大阪府知事、弁護士の橋下徹氏が「野党側も予備選やってメディアジャックをしないと、自民の総裁選に引っ張り込まれる」との趣旨の発言をしていた。久しぶりに聞いた言葉にハッとさせられた。

   確かにきょう22日の新聞のラジオ・テレビ欄を見ても、NHK含めテレビのほとんどのニュース番組やワイドショーなどで「自民総裁選まで1週間」や「自民総裁選の最新情勢」などの見出しが躍っている。テレビをハイジャックする自民党総裁選とは何なのか、「メディアジャック」現象について考えてみた。

   目立つのは自民党総裁選の4候補の顔ぶれだ。4人の候補者のうち2人が女性だ。当然、討論のテーマも女性目線が注目される。きょう22日に行われた党内の討論会では、子育て関係の政策を担う「こども庁」の設置について議論が交わされた。河野氏は「子どもの自殺、虐待、貧困ゼロを掲げる」と強調。岸田氏は「子どもたちの命、健康、人権を一元的にしっかり見ていく」と訴えた。野田氏は「願いは社会の中で一番弱いと言われる人たちが、いつも笑顔でいられる社会、国をつくること」と述べた。高市氏は「令和の省庁再編に挑戦する。子ども政策の推進のため、効率的かつ効果的な組織は何か検討したい」と話した(9月22日付・毎日新聞Web版)。これまでは、学校教育ばかりに重点が置かれていたが、日本の未来を担う子どもたちの政策について議論したことはなかった。その意味で画期的な政策討論だ。

   18日の公開討論会(日本記者クラブ主催)も面白かった。NHKの生番組で視聴していた。キーワードは「コロナ」「原発」「年金」の3つ。中でも、国民年金について河野氏は「若い人たちの将来の年金生活が維持されなければ意味がない」と、消費税を財源にした最低保障年金の創設を訴えた。日本の少子高齢化は進み、年金制度そのものが維持できなくなるとの河野氏の危機感だろう。これに対し、高市氏は「基礎年金を全額税金で賄うのは制度的に無理がある」と反論し、岸田氏は「税でやるとした場合に消費税を何%に上げるのか」と迫るなど議論が白熱した。少子高齢化が急速に進む日本でシンボル的な課題の一つが年金の持続可能性の問題だ。シニア世代の誰もが感じていることなのだが、最近では公に議論されることはほとんどなかった。

   少子化問題、そして年金問題について、近未来の政策を担う「総理候補」が討論するだけに目が離せない、有権者の関心度が高い。最初は河野氏の意見が率直で的を得ているとも思ったが、このところ、高市氏の言葉が胸に刺さることがある。テレビとすれば、選挙報道と同様に、メディアジャックのコンテンツではないだろうか。自身は党友でも党員でもない。単なる政治ウオッチャーだ。(※写真は自民党本部ホームページより)

⇒22日(水)午後・金沢の天気     あめ


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