自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆「復興先導プロジェクト」って何だ~2 トキが能登の空を舞う

2024年05月22日 | ⇒ドキュメント回廊

  能登半島地震の災害からの復興のために石川県が提示した『創造的復興リーディングプロジェクト』の13の取り組みで、自身にピンと来たのは【10】震災遺構の地域資源化に向けた取り組み、そして、【12】トキが舞う能登の実現、の2つだった。前回の震災以降に続いて、今回はトキが舞う能登の空について。

  かつて、「日本の本州で最後の一羽」と呼ばれたトキが能登にいた。「能里(のり)」という愛称で呼ばれていた。オス鳥だった。能登には大きな河川がなく、山の中腹にため池をつくり、田んぼの水を蓄えていた。そのため池にはトキが大好物のドジョウやカエル、ミミズなどがいた。能登半島の中ほどにある眉丈山では、1961年に5羽のトキが確認されている。ただ、田んぼでついばむエサには農薬がまみれていた。1970年に能里が本州で最後の一羽となる。

  当時、新潟県佐渡には環境省のトキ保護センターが設置させていて、能里は人工繁殖のために佐渡に送られることになる。ところが、翌年1971年3月、鳥かごのケージの金網で口ばしを損傷したことが原因で死んでしまう。当時、能登の人たちは「佐渡に送らなければ、こんなことにならなかったのに」と残念がった。

  あれから半世紀、佐渡では500羽余りのトキが野生で生息するようになった。環境省は2022年にトキを本州で放鳥することを決め、能登と島根県の出雲市で放鳥する計画を発表した。その放鳥は「2026年以降」となっているので、早ければ2年後の2026年に能登の空をトキが舞う日がやっていくる。石川県では去年、5月22日を「いしかわトキの日」と決め、ムードを盛り上げている。(※写真は、輪島市三井町洲衛の空を舞うトキ=1957年、岩田秀男氏撮影)

  能登の人たちのトキへの想いはまだある。トキが能登の空を舞う日は希望の光でもある。2026年めがけてトキの放鳥が着実に行われることを期待したい。

⇒22日(水)午前・金沢の天気    はれ 

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