それにしても輪島の朝市おばさんたちのたくましい商魂には感心する。メディアなどによると、きょう25日は愛知県豊川市の商業施設で10店舗ほどが朝市を開いている。今月11日には神戸市東灘区の商店街の祭りで開いていた。ほかにも、金沢市内などで何度か開いている。3月23日に初めての出張朝市が金沢市の金石港で開かれたので見学に行ってきた。朝市のトレードマークにもなっているオレンジ色のテントで店を構え、30店舗ほど並んで岩のりやアジやホッケの干物といった朝市の品ぞろえで金沢の客を呼び込んでいた=写真=。
冒頭で「たくましい商魂」と述べたのも、発災後も気持ちが萎えることなく各地に出かけて商売をしているからだ。おばさんたちには2つのタイプがある。ひとつは朝市に場を確保して売るタイプ、もう一つが「ふり売り」というリヤカーでの行商するタイプだ。ふり売りの場合、さらに軽トラックで他地域を回るという進化系もある。地震後に出張朝市という新たなスタイルで商売を展開しているのも、こうした多用な方法での売りの経験を積んでいることもあるのだろう。
おばさんたちは早朝に輪島漁港で水揚げされた鮮魚を買い付けて下ごしらえ、さらに干物も併せて、テントやリヤカー、軽トラで商いをしていた。ところが、震災で輪島漁港の海底が隆起して漁船200隻余りが漁に出れない状態がいまも続いている。そこで、おばさんたちは避難先でもある金沢漁港で魚を仕込んで出張朝市の品ぞろえをしているようだ。この一連の臨機応変な対応には感服する。
さらに驚くことがある。商売をしているだけと思いがちだが、テントの出張朝市を実際にのぞくと、売り手と買い手のおばさんたちのやり取りが傍から聞いていて面白い。朝のニュースの話から晩ご飯の話まで、テントの中が多様なコミュニケーションの場となっていた。これは輪島の朝市やリヤカーでも同じ。近所のおばさんたちが集まり、楽しそうに世間話をしながら商売が行われていたことを思い出す。
きょう地元メディアに、出張朝市が来月8、9日の両日に石川県白山市の白山比咩神社で開かれるとの記事があった(25日付・北國新聞)。この日は同神社で「御贄講(みにえこう)大祭」という、加賀地方の漁業者が海上安全と大漁を祈願する伝統の祭りが営まれる。神社側が朝市と被災地の漁業の復興を応援しようと出張朝市の開催を企画したようだ。神社側からの誘いなので、朝市おばさんたちにとっては朗報だったろう。震災にめげない朝市おばさんたちだ。
⇒25日(土)午後・金沢の天気 はれ