自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「貯蓄から投資」元年、出鼻をくじく株価下落

2023年01月04日 | ⇒メディア時評

   仕事始めは波乱の幕開けだった。東証の初日のいわゆる、大発会が開催。読売新聞Web版(4日付)によると、ゲストとして大発会に参加した鈴木財務大臣は、「NISA」(少額投資非課税制度)の拡充政策に触れ、「家計の投資が企業の原資となり、企業価値の向上で家計の金融資産所得が拡大する好循環を実現したい。今年は 卯年うどし 。飛躍の大きな土台となることを期待する」とあいさつし、鐘を打ち鳴らした。

   ところが、大発会後に始まった取り引きは、ほぼ全面安の展開で株価は一時430円値下がりした。終値は年末と比べて377円安い2万5716円で、厳しい滑り出しとなった。鈴木大臣が述べたNISAへの想いを初っ端からくじくような株価の値下がりだ。(※写真はJPX=日本取引所グループのフェイスブックより)

   日本の家計金融資産1700兆円の52%、900兆円が銀行預金として積み上がっている(金融庁試算・2017年4月)。若者からシニアまで資産運用の熱は高まっているといわれ、政府は個人マネーを刺激する政策として、NISAを拡充して恒久化することを昨年末にまとめ、ことし2023年を「貯蓄から投資」を促す元年とすると強調していた。その矢先の株式市況がこれだ。

   なぜ、初っ端から値下がりしたのか。日経新聞Web版(4日付)は「世界景気不安、市場揺らす 日経平均9ヵ月ぶり安値」の見出しで、「2023年の金融市場は世界景気の悪化懸念から株安と商品安で幕を開けた。新年最初の取引となった4日の東京株式市場では外需依存度の大きい銘柄が売られ、日経平均株価が9カ月半ぶりの安値水準に沈んだ。国際商品市場では需要の減退懸念から原油や非鉄金属などに売りが先行した。新型コロナウイルスの感染拡大による中国経済の先行き不透明感も漂い、投資家はリスク回避の姿勢を強めている」と述べている。

   世界景気の悪化が懸念されるとなれば、そう簡単には相場は回復しないのではないか。JETRO公式サイト「ビジネス短信」(2022年10月4日付)で、「過去最高のインフレで経済見通しを下方修正、2023年はマイナス成長に」の記事を掲載している。ドイツの主要経済研究所の経済見通しのまとめとして、2022年の年平均インフレ率を8.4%と予測、2023年はさらにインフレ率が上昇し、年平均8.8%と予測。2024年は再び落ち着きを取り戻す、としている。

   いまインフレと呼ばれている状況は需要過多というより、供給不足によるものではないだろうか。新型コロナウイルス感染(パンデミック)により世界経済が一時的にロックダウン状況に見舞われたものの、その後、世界が同時に経済活動を再開したことによるモノの供給不足ともいわれる。賃上げがあり、物価も高騰するというこれまでのインフレとは少々、次元が異なる。物価だけが高騰している。いうならば、「悪いインフレ」が加速している。日本の経済状況は典型的な事例だ。

   さらに、アメリカのFRBの引き締め強化による世界的なリスクオフ政策に日本も巻き込まれている。金利上げとなれば、外需依存度の高い企業の業績が懸念される。NISAがこのような株式や経済状況で今後、「貯蓄から投資」へのマインドを鼓舞できるのか、どうか。

⇒4日(水)夜・金沢の天気  ゆき

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