自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆アメリカで有名な社説

2009年12月27日 | ⇒メディア時評
 新聞の役割について論じるとき、優しい眼差しや人間味、大局観というものがある。これを読者が敏感に感じてファンになる。私の知り合いは、1969年7月、アポロ11号が月面に到着し、アームストロング船長が降り立ったときの新聞記事で「地球人が月に立った」の一行に衝撃を受け、それ以来、新聞の切り抜きをしている。「地球人」という言葉の新鮮さと大局観に、「世界を読み解こう」という感性のスイッチが入った。

 アメリカで一番有名な社説というのがある。取り上げるタイミングとしては少々遅きに失したが、「サンタはいるの」という8歳の女の子の質問に答えた社説だ。1897年9月、アメリカの新聞ニューヨーク・サンに掲載され、その後、目に見えないけれども心に確かに存在し、それを信じる心を持つことの尊さを説いた社説と評価され、掲載されてから110年余り経った今でも、クリスマスの時期になると世界中で語り継がれている。その社説を掲載する。
                ◇
 「じつはね、ヴァージニア(※投書の女の子の名前)、サンタクロースはいるんだ。愛とか思いやりとかいたわりとかがちゃんとあるように、サンタクロースもちゃんといるし、愛もサンタクロースも、ぼくらにかがやきをあたえてくれる。もしサンタクロースがいなかったら、ものすごくさみしい世の中になってしまう。ヴァージニアみたいな子がこの世にいなくなるくらい、ものすごくさみしいことなんだ。サンタクロースがいなかったら、むじゃきな子どもの心も、詩のたのしむ心も、人を好きって思う心も、ぜんぶなくなってしまう。みんな、何を見たっておもしろくなくなるだろうし、世界をたのしくしてくれる子どもたちの笑顔も、きえてなくなってしまうだろう。・・・中略・・・サンタクロースはいない? いいや、ずっと、いつまでもいる。ヴァージニア、何千年、いやあと十万年たっても、サンタクロースはずっと、子どもたちの心を、わくわくさせてくれると思うよ。」(訳:大久保ゆう、青空文庫)
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 新聞には社会の木鐸(ぼくたく)であらねばならないと自ら任じ、調査報道や現場主義の取材で真実に迫る気迫が必要であることはいうまでもない。一方で、上記のサンタの社説のようにヒューマンで、普遍的な価値を伝えるというチカラも必要なのだろう。人々の心の扉を開かせる、そんなジャーナリズムであってほしいと願っている。

⇒27日(日)夜・金沢の天気 くもり 
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