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過去、何度か足を運んでいるものの、訪れるのが毎回週末ということもあってかいつも混雑していて、結局一度も暖簾を潜ることのできていない銀座『泰明庵』さん。
その『泰明庵』さんに、所用があって休暇を取得した小雨ぱらつく平日の夕方に訪れてみると、店内は数組のお客さんがお酒を飲んだり蕎麦を食べたりしていましいたが、それほど混雑しておらず、相席になることもなく1人で4人掛けのテーブル席に着くことができました。
いつもなら、席に着いて「早速メニューを広げて・・・」となりますが、こちらの『泰明庵』さんは使い込まれたテーブルにメニューは置かれておらず、所狭しと壁に貼られている短冊状のお品書きの中から料理とお酒、そして蕎麦を選びます。
「さて、何をいただこうか?」と思いながらとりあえず銘柄(メーカー)を選ぶことのできる瓶ビールをお願いすると、今日は刺身と厚岸の牡蠣が美味しいと年配の花番さんから勧められますが、生ものはパスさせていただき、「みょうが天」と「黒むつ煮」をお願いすることにします。
それにしても驚きの品数で、料理を選ぶだけでも大変な作業です。
ということで、ホッと一息ついて、改めてお願いした料理を振り返ってみると、いずれも時間の掛かる料理であることに気付いたため、直ぐに出てきそうな「豆苗ひたし」を追加でお願いします。
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さほど待つことも無く「豆苗ひたし」が目の前に置かれましたが、併せて、テーブルの端に置かれている醤油をサッと差し出してくれます。そんな何気ない心づかいに気分を良くしながら「豆苗ひたし」をいただいてみると、家のキッチンにも置かれている豆苗ではありますが、シャキシャキっとしながらもしっとりした食感がなかなか良い感じで美味いです。
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しばらくして「みょうが天」が運ばれてきましたが、注文時に「お塩で食べますか?。」と聞かれて「塩で食べます。」と答えたので天汁は出てきませんでしたが、今度は「醤油でもどうぞ。」と一言添えられて、手を伸ばせば取ることができる位置に置かれている塩と醤油をサッと近くに差し出してくれます。
料理が運ばれてきた時に、「醤油でどうぞ」とか「塩でどうそ」とかの一言が添えられることは普通にありますが、テーブルの上に置かれているそれらを取ってスッと目の前に置いてくれるなんて、簡単な何気ない動きではありますが、なかなか嬉しく感じてしまいます。
さて、その「みょうが天」ですが、適当な苦みと温かさがとても好印象で、もう少し食べたいかな?と思ってしまう美味しい天婦羅でした。
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「黒むつ煮」が運ばれて来る前にビールが無くなったので、料理同様壁に貼られている日本酒のお品書きの中から「辛口・出羽桜」をお願いします。
そして、小皿の上に乗せたコップになみなみと注がれた「辛口・出羽桜」を一口すすったところで「黒むつ煮」が運ばれてきましたが、「スプーン、あった方が良いですね。」と、小皿に取り分けた身にタレを掛けるための小さなスプーンを持ってきてくれます。いや~、ホント、かゆい所に手が届く心づかいが素晴らしいです。
なお、いただいた黒ムツは、注文してから煮付けるため少々調理に時間を要しましたが、身はもちろん柔らかく、スッキリ爽やかな喉越しでありながら旨味が感じられる出羽桜と一緒に美味しくいただきました。
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ポツポツとお客さんの出入りが見られるものの、混雑するまでにはもう少し時間がありそうですが、この後予定があることから蕎麦をいただくことにします。
いただいたのは「鴨せいろ」で、焦げ目の付いた鴨肉とやや甘目で旨味の感じられる鴨汁が美味いです。
また、蕎麦はごくごく普通の蕎麦という印象ですが、歯応えも喉越しも良く、ツルツルっと気分良くいただくことのできる食べ易い蕎麦でした。
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今日、蕎麦前と蕎麦をいただいた『泰明庵』さんは、銀座にある老舗のお蕎麦屋さんではありますが、堅苦しく気取った雰囲気は全く感じられず、若い女性が2人で芋焼酎のグラスを傾けているなどお客さん個々が思い思いの時間を楽しく過ごしているという印象の、下町風情溢れる町のお蕎麦屋さんでした。
また、お蕎麦屋さんの定番料理はもちろんのこと種類豊富な一品料理の品揃えと、花番さんの何気ない心づかいが嬉しく、いつ来ても満席に近い状態であることが納得できるお蕎麦屋さんでした。
ちなみに、日本酒も黒ムツも価格が明示されていませんでしたが、これだけ飲み食いしても驚くような価格ではなく、逆に「安い!」と感じた支払いでした。
ごちそうさまでした。
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