蕎麦前で憩う

お蕎麦屋さんで蕎麦前をいただきながら憩いの一時を過ごさせていただきました。

『風來蕎@たまプラーザ』さんの「うなぎ肝の山椒煮」

2014-04-29 11:30:00 | 横浜市(青葉区)

東急田園都市線・たまプラーザ駅から徒歩15分程度のところにある、4年連続でミシュラン1つ星を獲得している『手打そば・風來蕎』(ふうらいきょう)さん。

お店は駅から少々離れた住宅地にありますが、ミシュランの「星」を獲得しているということもあってか遠方から車で訪れる方もいるようで、ついつい、いつ行っても混雑しているのではないかというイメージが先行してしまうお蕎麦屋さんです。

ということで、開店前少し早目に行けば確実に着席できるであろう、予約の出来ない祝日(平日の昼は予約のお客さんが多い?)に、うちの奥さんと2人で訪れてみました。

お店に到着したのは予定より早い開店30分前で、もちろん、他に待つお客さんはいません。


そして待つこと15分、お店の入口に順番待ちの名前を記入する用紙が置かれ、名前を記入すると、その後、車がポツポツと現れアッという間に15人程度のお客さんがお店の前に集まります。

「へ~、やっぱり混雑するんだ。」とその人気振りに驚いていると、女性の店員さんがお店から出てきて暖簾を掛け、名前の記入順に店内へと案内してくれます。

1番客としてやや薄暗い店内に入り、店内一番奥の2人掛けテーブル席に着いて早速メニューを広げますが、料理はメニューだけではなく店内の壁にも短冊で表示されていて、メニューと短冊の両方を見ながらあれこれ考え、生ビールと一緒に、外すことの出来ない「出し巻玉子」と、ぜひ食べてみたい「うなぎ肝の山椒煮」と、食べることが出来なくなってしまうかもしれない「クジラ竜田揚げ」をお願いします。


ちなみに、お通しは3種類の中から選択するようになっていた(無しにすることも出来そうな雰囲気でした。)ことから、「うの花」と「鴨の皮の南蛮漬け」をお願いします。


まず運ばれてきた「うなぎ肝の山椒煮」は、「肝」独特の苦味はあまり感じられませんが、見た目、食感、味わいのどれを取っても日本酒が飲みたくなってしまう料理であることから、再びメニューを広げます。

メニューには、山口県の地酒が3種類、長野県と愛媛県の地酒がそれぞれ1種類と、計5種類の日本酒が並んでいますが、山口県の地酒「獺祭」(だっさい)が品切れということで、同じく山口県の地酒「本醸造辛口・五橋」(ごきょう)を冷でお願いします。


なお、日本酒を選んでいる最中に「クジラ竜田揚げ」が運ばれてきましたが、もう少し料理をいただきたいと思ったことから、「そばがきのふき味噌田楽」を追加でお願いします。

そしてその「クジラ竜田揚げ」ですが、そもそも「鯨の肉」が正しくはどのような味なのかがよく分かっていないことから、「そうそう、これこれ。」という感想はありませんが、少々生々しい濃厚な味わいで、美味しいです。


続いて運ばれてきたのは・・・。
最初にお願いした「出し巻玉子」ではなく追加でお願いした「そばがきのふき味噌田楽」です。

この「そばがきのふき味噌田楽」は、フンワリフワッと焼き上げたそばがきの上に、蕎麦の実を散りばめたふき味噌を乗せている料理で、ふき味噌を付けずにそばがきだけで食べても、フンワリモチモチのねっとりした食感がとても美味しいです。


さて、料理が全て出揃う前に「本醸造辛口・五橋」が無くなってしまったことから、迷うことも無く、長野県安曇野の地酒「純米吟醸無濾過・福源」(ふくげん)をお願いします。

そして注文してから45分、楽しみにしていた「出し巻玉子」が目の前に置かれます。
熱々のうちにいただこうと思い、早速一切れいただいてみると、まずそのフワフワ感がかなり良い感じです。
また、甘さそのものは控えめですが、出汁の旨みがしっかり感じられる玉子焼で、とても美味しい、45分待つ価値のある玉子焼ではないかと思います。



そんな、美味しい「出し巻玉子」をいただいている途中ではありますが、客足の途絶えない状況であることから、早めに蕎麦をお願いすることにします。

蕎麦は、定番メニューとは異なる別メニューで、「旬の蕎麦」と「期間限定の蕎麦」が用意されていたことから、その期間限定の「たけのこと春野菜の天ぷらせいろ」をいただくこととし、うちの奥さんは「駿河湾産桜エビのかき揚げせいろ」をいただくことにしました。

なお、蕎麦前を楽しんでいる、開店と同時に入店した客ということで、蕎麦の注文が後になっても希望するなら数量限定の「手挽きせいろ」を食べることが出来るよう気を使ってくれていたようで、蕎麦を注文する際、せいろの蕎麦を手挽きに変更するかの確認がありました。

無くなってしまったらそれはそれで仕方の無いことと思っていましたが、「そんな些細な配慮が星につながっているのかな?。」と改めて思いながら、「たけのこと春野菜の天ぷらせいろ」の「せいろ」を「手挽きせいろ」に変更してもらうことにしました。

まず運ばれてきたのはうちの奥さんがお願いした「駿河湾産桜エビのかき揚げせいろ」で、「食べてみる?。」の一言も無くペロリとかき揚げを食べてしまったので、どんなかき揚げだったのかはわかりません。


少々時間が開いて運ばれてきた、「手挽きせいろ」に変更した「たけのこと春野菜の天ぷらせいろ」ですが、まず、何も付けずに蕎麦だけをいただいてみると、細打ちの黒みがかった田舎という説明書きの通り、細さと田舎独特のしっかりした腰(歯応え)が感じられます。


次に、説明のあった粗塩でいただいてみると、確かに美味しさが増すように思いますが、出汁の効いた蕎麦汁がとても美味しいので、やはりオーソドックスに蕎麦汁でいただくのが一番かな?と思います。

というよりも・・・。
『手打そば・風來蕎』さんで蕎麦をいただく場合、あえて「手挽きそば」をいただかなくても、普通の「せいろ」を普通に蕎麦汁でいただくだけで、十分美味しい蕎麦をいただくことが出来ると思います。


今日、蕎麦前と蕎麦をいただいた『手打そば・風來蕎』さんは、開店前には入店を待つお客さんの列ができ、開店後もお客さんの途絶えないお蕎麦屋さんでした。

また、小さい子供や年配の方を含めたご家族で訪れているお客さんの姿が多く見られたように思います。
これは、連休中の祝日ということも影響していると思いますが、どんなお客さんに対しても、気取ったところの無い自然な接客が行われており、その肩肘張らない柔らかな接客が、「また今度、みんなで蕎麦を食べに来よう!。」と思わせる雰囲気を作っているのかもしれません。

そんな雰囲気の中でいただいた料理はどれも美味しく、充実した連休初日となりました。

ごちそうさまでした。


『蕎真@横浜・綱島』さんの「お料理の盛り合わせ」

2014-04-26 23:17:29 | 横浜市(港北区)

長期休業中だったり臨時休業だったりと、何度お店のシャッターを見に行ったことか・・・。
そしてようやく、ようやく、ようやく暖簾を潜ることが出来た『石挽きそば・蕎真』(きょうしん)さん。

お店は東急東横線・綱島駅から徒歩10分程度のところにあり、交通の便も良く駅からもそう遠くは無いことから、「休みだったら別のお店に向かい、また来れば良い。」と次に向かうお蕎麦屋さんの候補を考えながら歩いていると、遠くで静かに揺れている暖簾を確認することができます。

「お~、今日はやってる(営業している)!。」と感動(?)しながら少々早歩きでお店に向かい、外観の写真撮影は後回しにして(これが大失敗)早速お店の扉を開けます。

お店は、13時半過ぎということもあってか先客は同時に入店した若い男女1組だけで、2人掛けのテーブル席も空いていましたが、明るく落ち着いた雰囲気のカウンター席に着きます。

席に着いてメニューを手にすると、まず長期休業に対するお詫びと営業再開に関する対応(メニューはごく限られた物のみ&当分昼のみ営業)が丁寧に書かれており、おしながきに目を向けると一品料理は無く、単品の蕎麦も説明書きの通り「せいろ」、「ざる」、「かけ」、「花巻」の4品に限られています。


そんな限定メニューを眺めながら「どうしようか?。」と思いましたが、迷う要素は無く、「せいろそば」(又はかけそば)と「お料理の盛り合わせ」と「ひとくち甘味」がセットになったお勧めメニューの「お蕎麦膳」をいただくことにします。そして、一人で切り盛りしているご主人に瓶ビールと一緒に「お蕎麦膳」をお願いすると、「では、お蕎麦は後にして料理を先に出しましょうか?。」と嬉しい提案をしてくれたことから、お言葉に甘えて料理を先にいただくことにしました。

蕎麦前でいただいた「お蕎麦膳」の「お料理の盛り合わせ」は、小さめの四角い器の中に様々な料理がギッシリと詰め込まれていて、過去にいただいた蕎麦前料理の中で1番綺麗な料理かな?と思うほど美しく丁寧に盛り付けられています。

その、美しい料理は全体的に薄めの味付けと思いますが、どれ一つ取っても美味しい料理ばかりで、けして見掛け倒しではない、実に質の高い料理の盛り合わせとなっています。
中でも甘口の玉子焼が美味しく、出来立ての熱々でないことが少々残念です。


美味しい料理を楽しんだところで声掛けで「せいろそば」をお願いします。
蒸篭ではなく陶器の器に盛られた蕎麦は、細く適当な腰が感じられる蕎麦で、なかなか良い感じです。
また、蕎麦汁はキリッとした辛汁でしたが、出汁の旨みがしっかり感じられる美味しい蕎麦汁でした。


なお、最後にいただいた「ひとくち甘味」は甘さの抑えられた甘味で、お酒を飲んだ後にいただいても違和感を感じることの無い一品でした。


そして大失敗の出来事ですが・・・。
営業しているお店を見て気持ちが急いでしまったのか、外観の写真撮影を後回しにしてしまいましたが、料理をいただきながらメニューを眺めているとラストオーダーが14時となっています。

「あれ?、14時ラストオーダーだったっけ?。」と思ってはみたものの、時既に遅く、蕎麦をいただいている最中にご主人が暖簾を店内に入れてしまいました。

ということで、今回の外観写真は暖簾がない状態の写真となってしまいました。
やはり、写真は撮れるときに撮っておかないといけませんね。

■暖簾が・・・。扉の内側に見えます。■

今日、ようやく暖簾を潜ることの出来た『石挽きそば・蕎真』さんは、長期休業明けということでメニューなど限られた内容での営業ではありましたが、料理と蕎麦の質が高いだけではなく、ご主人の温かみが感じられる穏やかな接客が心地良い、食べて良し、過ごして良しの素晴らしいお蕎麦屋さんでした。

そしていつの日か、再び料理をあれこれいただくことが出来るようになった際は、ぜひもう一度訪れ、じっくり料理をごちそうになりながら憩いの一時を過ごさせていただきたいと思うお蕎麦屋さんでした。

ごちそうさまでした。


『千利庵@西麻布』さんの充実した「春野菜天ぷら」

2014-04-18 23:47:51 | 東京23区(港区)

六本木ヒルズでの仕事を終え、少々寒い陽気ではありましたがビールでも飲んで帰ろうと思い、西麻布交差点近く(都営バス「西麻布」バス停前)にある『手打そば 西麻布・千利庵』さんへ向かいました。

暖簾をくぐったのは開店間もない17時少し過ぎということもあり、先客の姿は無く一番客のようです。
そして、笑顔で迎えてくれた花番さんに一人であることを告げると、穏やかな口調で「どちらでもどうぞ。」とのこと。「(予約で満席と言われなくて)良かった!。」と思いながら座る場所を選びますが・・・。

席は、入口を入って左手に6人掛けのテーブル席が2つと奥に4人掛けテーブル席が1つ。右手は座敷となっていて4人掛けのテーブルが3卓という構成で、1人客にとってはどこに座ろうか迷ってしまう微妙な構成ではありますが、4人掛けのテーブル席が予約席となっていたことから、場合によっては西麻布のサラリーマンと相席になることも覚悟した上で6人掛けのテーブル席に着きます。

席に着いてまずビールをお願いし、待っている間に、座敷の壁に貼られている和紙に書かれた一品料理のおしながきに目を通します。そして、天婦羅が充実しているという印象のおしながきの中から「春野菜天ぷら」(山菜の天ぷら)と一緒に「菜の花のおひたし」と自家製の「はんぺん」をお願いします。


BGMの無い、西麻布の真ん中とは思えないとても静かな空間で待つこと数分。
まず、目の前に「菜の花のおひたし」が置かれ、どれどれと思いながらいただいてみると、菜の花の爽やかな味わいと鰹節の味わいが春らしさを感じさせてくれる、なかなか良い感じのおひたしです。


続いて運ばれてきた自家製の「はんぺん」。
ハンペンというと白くて四角い姿を想像するかと思いますが、目の前に置かれたハンペンは葱(?)が練り込まれた白いフワフワした印象のハンペンです。そして、「温かいうちにどうぞ。」とのことだったので、早速わさびを乗せて醤油を付けていただいてみると、茹で立てなのか温かいハンペンで、予想とは異なるしっかりした食感の、ビールのおつまみにふさわしい一品です。


最後に運ばれてきた、天汁と塩の両方が添えられている「春野菜天ぷら」は、山菜と野菜の盛り合わせかと思いましたが、純粋に山菜だけの天婦羅盛り合わせ(だと思いますが・・・。)で、特徴でもあり旨みでもある苦味と青々しさがしっかり感じられる、高い満足感を得ることのできる充実した天婦羅です。


さて、美味しい料理をいただき、腹具合も満たされてきたことから蕎麦をいただくことにします。
こちらの『手打そば 西麻布・千利庵』さんは、通常の蕎麦汁の代わりに、肉や野菜の入った温かいつけ汁で蕎麦をいただく「天下ごめん」というオリジナル料理が人気メニューではありますが、オーソドックスな蕎麦をいただきたいので、「せいろ」と「田舎」がセットになった「二色そば」をいただくことにします。

「二色そば」は1つの蒸篭に「せいろ」と「田舎」が一緒に盛られているかと思いましたが、まずは「せいろ」だけが運ばれてきます。


先にいただいた「せいろ」は普通という印象ではありますが、滑らかな食感で歯応えも良く、カツオ出汁の効いた自己主張の感じられる蕎麦汁で美味しくいただきました。


追って運ばれてきた「田舎」は、歯応えがあるというよりもやや硬いという印象ではありますが、ボリューム感と食べ応えの感じられる蕎麦でした。


今日、蕎麦前と蕎麦をいただいた『手打そば 西麻布・千利庵』さんは、西麻布交差点すぐ近くにある創業昭和63年という比較的新しいお蕎麦屋さんではありますが、西麻布という言葉から勝手に想像する華やかでお洒落な雰囲気とは少々異なる落ち着きと癒しの雰囲気が感じられるお蕎麦屋さんでした。

そして、そんなお店の雰囲気と併せて花番さんの心温まる接客がとても心地良く、仕事を終えた後に一人静かに憩いの一時を過ごすことの出来るお蕎麦屋さんで、先日訪れた「公望荘」さんとは少々雰囲気が異なりますが、同様に、いつまでもそのままの姿でいてほしいお蕎麦屋さんでした。

憩いの一時と美味しい料理をごちそうさまでした。


『公望荘@鶯谷』さんのフンワリ熱々の「玉子焼き」

2014-04-13 23:57:10 | 東京23区(台東区)

東京・青山にある秩父宮ラグビー場で大学ラグビーの試合を観戦した後、遅い昼食を取るために、JR山手線・鴬谷駅南口タクシー乗り場横にある、昭和21年創業の『蕎麦処 鶯谷・公望荘』さんへ向いました。

お店には14時少し前に到着し、まず、昭和の趣が感じられる静かな外観を撮らせていただき、そして、高まる期待を胸にお店の扉を開けてみると・・・。

目の前に、こじんまりとしたスペースではありますが、4掛けのテーブル席がギッシリ詰め込まれた少々レトロ感漂うフロアが広がり、1人で訪れているお客さん4名程度がのんびりお蕎麦を食べています。

そんな、いかにも昼下がりといった雰囲気の中、4人掛けのテーブル席に着いて瓶ビールと一緒に「玉子焼き」と「風流そばずし」をお願いします。


椎茸煮が添えられた、大きめの出汁巻玉子4切れが盛られている「玉子焼き」は、アツアツの出来立てで、しっとりしたフンワリ感がとても良い感じです。そして甘さ具合も程好く、出汁(蕎麦汁?)の旨みがしっかり感じられる味わい豊かな美味しい玉子焼きで、良く冷えた辛口の日本酒が欲しくなってしまいます。


花番さんから、「お待たせしてしまってすみません。」と何度も言われた「風流そばずし」は、蕎麦汁を付けていただく蕎麦寿司でしたが、キュウリが良いアクセントになっているサッパリした蕎麦寿司で、良く冷えたまろやかな吟醸酒が欲しくなってしまいます。


なかなか居心地が良いことからもう少しのんびりしたいところではありますが、昼食と夕食の間隔が短く、これ以上料理をいただいてしまうと夕食に影響が出てしまいそうだったことから、料理とお酒は追加せず蕎麦をいただくことにします。

さて、いただく蕎麦ですが、お店の雰囲気と丁寧な接客に気分を良くしたことから、「せいろ」に天婦羅の付いた「天付せいろ」をいただくことにします。

「天付せいろ」の天婦羅は、蓮根とシシトウ(野菜2品)に食べ応えのある大きな海老1本という内容で、まずまずの天婦羅です。中でも、日頃から「天婦羅には不要!。」と個人的な好みで思っている海老が美味しく、良く冷えた生・冷酒が欲しくなってしまいます。

また、蕎麦はやや細麺ではありますが、しっかりした歯応えの感じられる蕎麦で、どちらかというと甘いかな?と感じられる蕎麦汁と一緒にスルスルッと美味しくいただきました。


今日、蕎麦前と蕎麦をいただいた『蕎麦処 鶯谷・公望荘』さんは、駅前(駅の敷地内?)という立地条件の良さだけではなく、花番さんの物腰の柔らかい丁寧な接客が親しみ易い雰囲気を作っているのか家族連れや年配女性のお客さんも多く、小さい子供を連れた家族連れがノンアルコールで玉子焼きを食べながら蕎麦を食べていたり、おばあちゃんが「そばがき」や「板わさ」を食べていたりする風景を見ることのできる、昔も今も変わらない町のお蕎麦屋さんでした。

また、外観も店内も昭和の香りが漂うお蕎麦屋さんでしたが、けして演出している訳ではなく、自然体で営業してきた結果の姿というお蕎麦屋さんで、料理と蕎麦だけではなく、江戸蕎麦のお蕎麦屋さんならではの佇まいと風情を味わうことの出来る、いつまでも今のまま残っていてほしいお蕎麦屋さんでした。

ごちそうさまでした。


『出嶋屋本店@伊勢佐木町』さんの「板わさ4種盛り」

2014-04-05 22:38:17 | 横浜市(中区)

桜の名所、横浜・大岡川の桜並木で桜の写真撮影を行い、撮影終了後、昼食を取るために横浜市中区・伊勢佐木モール6丁目にある明治38年創業の老舗蕎麦屋『そば処・出嶋屋本店』さんへ行ってみました。

お店は人通りの多い伊勢佐木モールにあり、時間に関わらず常時混雑しているというイメージのお店でしたが、やはり14時という時間はお蕎麦屋さんにとってマッタリした時間なのか、2人掛け、4人掛け合わせて10席程あるテーブル席はパラパラと埋まっている程度でした。


そして、ピリッとした緊張感が感じられるものの、「昼酒OK」という気さくで馴染みやすい雰囲気の漂う店内で、4人掛けテーブル席に着いて瓶ビールと「厚焼玉子」と、玉子焼よりも高価な「板わさ」をお願いします。


それにしても・・・。
何にしようか迷った割にはいつもと変わり映えしない注文で、「飽きない?。」と言われてしまいそうですが、同じ料理でも、お店によって味も形も異なるので食べ比べるのも楽しいものです。

ということで、簡単に言ってしまえばただの蒲鉾ですが、盛り合わせだったり、山葵漬けが添えられていたり、細工されていたりと、あれこれ工夫されていることの多い「板わさ」がまず運ばれてきます。

今日の「板わさ」は、小田原・鈴廣さんの白い蒲鉾と、黄色い玉子焼、濃い緑色の葉物の海苔巻、そして赤いカニカマと、「彩」の考えられた4種盛りになっていて、山葵漬けが添えられているなど「一品料理」というより「酒の肴」という言葉が似合いそうな一品です。
なお、蒲鉾には小田原・鈴廣さんの物が使用されているということで、歯応えの良い美味しい蒲鉾でした。


続いて、正直、大きな期待を抱いていなかった「厚焼玉子」。
しかしこの玉子焼、箸で一切れつまんで持ち上げてみると、切り口から美味しそうな湯気が立ち上るホンワカフカフカの玉子焼で、しっかりした甘さの感じられる実に美味しい玉子焼です。

なお、玉子焼は先にいただいた「板わさ」にも付いていましたが、歯応えも味わいも、そして温かさも異なる玉子焼で、「板わさに付いているから・・・。」と思うことなくいただいて正解だったと思える一品です。


美味しい玉子焼に気分を良くしたことから、お酒と料理を追加してもう少しのんびりさせてもらおうと思い、再びメニューを眺めると、日本酒は、福島県の「飛露喜」(今日は品切れでした。)、茨城県の「来福」、長野県の「水尾」といったこだわりの感じられる充実したラインナップです。

そんな素晴らしいラインナップの中から、飲んだことのない茨城県の地酒「来福」(らいふく)をお願いし、併せて「野菜の天麩羅盛合」をお願いすることにしました。


初めていただく「来福」は、スッキリサッパリした味わいでありながら後味はやや辛口かな?という感じの日本酒で、納得の1本です。

また、塩か天汁かを注文時に聞かれた「野菜の天麩羅盛合」(お願いしたのは「塩」)は、初めから塩が振り掛けられていて、「足りなかったら言ってください。」とのことでしたが適当な塩加減でした。

なお、天婦羅は好みの分かれるところと思いますが、カラッと仕上がっている天婦羅ではなく、柔らかい(?)食感の天婦羅でしたが、食材の味わいがしっかり感じられる天婦羅でした。


さて、長野県の地酒「特別純米酒・水尾」に心が動いたものの、それよりも店内に張り紙されている「桜ゼリー付き・桜切りそば」の文字が気になってしまい、お酒のおかわりはせず蕎麦をいただくことにします。

お願いした「桜ゼリー付き・桜切りそば」ですが・・・。
過去にいただいた「桜切りそば」の多くはほんのりピンク色に染まっていましたが、今日いただいた「桜切りそば」は普通の蕎麦と変わらない見た目です。しかし、蕎麦汁を付けずに蕎麦だけをいただいてみると、桜の風味がしっかり感じられる蕎麦で、満足感の高い蕎麦でした。


そして「桜ゼリー」。
ピンク色した桜の香り漂うゼリーを想像しましたが、桜の花が中に入っている透明のゼリーで、春を感じながらサッパリ美味しくいただきました。

今日、蕎麦前と蕎麦をいただいた『そば処・出嶋屋本店』さんは、小奇麗でお洒落なお蕎麦屋さんでは無いかもしれませんが、BGMの代わりにTVが付いていたり、お品書きの張り紙が店内のあちこちに貼られていたり、小学生の頃に溜り場となっていた駄菓子屋さんにいたようなちょっと無愛想で怖そうなおばちゃん(すみません)がいるなど、なんだか昭和時代にタイムスリップしたかのようなお蕎麦屋さんでした。

そして、季節を味わうことの出来る「変わりそば」に力を入れていたり、焼酎や日本酒の品揃えがマニアックだったり、更にはどの料理もみんな美味しかったりと、蕎麦を食べに来たお客さんにもお酒を飲みに来たお客さんにも満足してもらえる庶民のためのお蕎麦屋さんでした。

ごちそうさまでした。