蕎麦前で憩う

お蕎麦屋さんで蕎麦前をいただきながら憩いの一時を過ごさせていただきました。

『きく弥@横浜・井土ヶ谷』さんの「ナンコツ唐揚げ」

2013-02-23 22:49:31 | 横浜市(南区)

横浜南部で、蕎麦前を楽しむことのできる普通の「町のお蕎麦屋さん」を探してみたところ、駅からは少々離れているものの地元佐島産の地魚をいただくことの出来るお蕎麦屋さんを見つけたので訪れてみました。

お店は京浜急行電鉄・井土ヶ谷駅から徒歩15分程度のところにある『きく弥』さんというお蕎麦屋さんで、マンションの1階、クリーニング屋さんの隣にある普通のお蕎麦屋さんです。

お店に到着して、いつものように外観の写真を撮ってから暖簾をくぐると、13時少し前でしたが先客は子供連れの家族1組6名のみで、小上がり(座敷)も空いていましたが、明るいカウンター席に座ります。

席に着くとまずメニューが差し出され、その後おしぼりと緑茶(蕎麦屋で緑茶は珍しいです。)が運ばれてきます。
なんとなく「最初から蕎麦」という雰囲気ではありますが、せっかく「魚」(肴)を求めてやって来たのだし、確認したところ昼から一品料理もOKとのことなので、佐島産地魚の刺身をお願いしようとしたところ、「すみません。刺身はまだ準備が出来ていないんです。」とのこと。まぁ、普通に考えればそうですよね。

ということで、腹もそこそこ空いていたので「ナンコツ唐揚げ」とエビスビール(中瓶)をお願いします。
「ナンコツ唐揚げ」は1つ1つが食べやすい大きさで、また独特のコリコリした歯応えがなかなか良い感じです。
そしてビールを飲みながら「ナンコツ唐揚げ」をポツポツ食べているうちにビールが無くなった(中瓶だし・・・。)ので日本酒をいただくことにします。


こちらの『きく弥』さんはお酒の品揃えがなかなかマニアックで、「どれにしようか?。」と少々迷ってしまいましたが、予め締めに決めていた「メゴチとごぼうの天せいろ」と一緒に「十四代」(日本酒)をお願いします。

久しぶりにいただいた「十四代」は、日本酒らしい味わいと爽やかさのバランスが素晴らしいお酒で、ナンコツの唐揚げと一緒にいただいても、メゴチの天婦羅と一緒にいただいても美味しい日本酒でした。


なお締めの蕎麦ですが、冷水でキリッと引き締められたしっとり爽やかな喉越しが心地良く、まろやかな蕎麦汁をしっかり付けていただくととても美味しいです。

今日はお昼ということもあって佐島産地魚の刺身をいただくことはできませんでしたが、美味しい料理と数々の美味しいお酒があり、さらには「二八」、「十割」、「田舎」の3種類がそろっている立派なお蕎麦屋さんなので、ぜひ一度、夜に立ち寄ってみたいです。

ごちそうさまでした。


『わしず@本厚木』さんのサラッとした天婦羅

2013-02-17 22:35:56 |  神奈川県(厚木市)

小田急電鉄・本厚木駅から歩いて10分程度のところにある『手打ちそば・わしず』さん。

このお蕎麦屋さんは大通り沿いにあるお蕎麦屋さんですが、奥行きのある細長い土地の奥側に細長く建っていて、更には大きなマンションに挟まれているため何気なく道路を歩いているとその存在に気付かないかもしれません。

そんなこと無いかな?。建物がピンク色だし・・・。

その、ピンク色の『手打ちそば・わしず』さんの店内に入ると、茶色を基調とした木のぬくもりが感じられる落ち着いた雰囲気の内装で、先客がいないこともあってとても静かです。

2人掛けのテーブル席に着き、お昼時だったことから「一品料理はお昼でも大丈夫ですか?。」と確認したところ大丈夫とのことでしたので、生ビールと一緒に「胡麻豆腐」と「磯辺揚げ」をお願いします。

最初にいただいた「胡麻豆腐」は控えめな味わいではありましたが、添えられていたワサビが良いアクセントになっていて、まずまずの一品です。


続いて「磯辺揚げ」。
一見、普通の竹輪の「磯辺揚げ」ですが、柔らかく弾力のある歯応えと、その温かさがとてもいい感じです。

「珍しい料理でもなく普通の料理なのに美味しい・・・。」と思いながらいただいていると、「良かったらどうぞ!。」と漬物をいただいてしまいました。



今日はビール1杯で軽くつまみ、最後に蕎麦をいただいてサッと帰る予定でしたが、おつまみの漬物が残っているのにお酒が無い状況ってあり得ないので、追加で「銀嶺・立山」(日本酒)を冷でいただくことにしました。

しかし、このペースだと今度は逆に料理が無く、お酒だけが残ることになりそうだったので、「磯辺揚げ」(揚げ物)の好印象を踏まえて酒の肴にも出来る「せいろ天盛」を一緒にお願いすることしました。

早速、1人で接客に当たっていたお店のおばちゃん(すみません。おおらかで馴染みやすい雰囲気からそんな印象です。)に注文すると、「そう来ると思ってましたよ!。」と言わんばかりのにこやかな笑顔が返ってきます。
これって、もしかしたらお店のペースに流されているのかな?なんて思うところもありましたが、時間の流れるリズムがとても心地良いです。

そんな雰囲気の中、「銀嶺・立山」を飲みながらいただく漬物って、これまた美味しいです。


そして「せいろ天盛」が登場。
「えっ?」と思わず驚いてしまうほど蕎麦が多いです。
天婦羅は椎茸、ししとう、海老、イカの4品で、「カラッとした」というより「サラッとした」軽い印象で、「銀嶺・立山」との相性も良く、特に柔らかいイカが美味しいです。

普通盛りなのに大盛りの蕎麦はボリュームタップリの極細麺で、歯応えも良く、なかなか美味しいです。
また、蕎麦汁はカツオ出汁の効いたやや辛目の汁で、蕎麦に負けず劣らずの美味しい汁です。

今日はお店に到着したのがお昼前の11:45頃でしたが、幸いお店は混雑することも無く、おおらかで馴染みやすい雰囲気の「おばちゃん」の笑顔に癒されながらのんびり蕎麦前と蕎麦を楽しませていただきました。

憩いの一時をごちそうさまでした。


『蕎肆・穂乃香@両国』さんのおすすめ「鴨吟醸」

2013-02-15 23:54:47 | 東京23区(墨田区)

東京での仕事を終え、JR両国駅から傘を差しながら歩いて向った『蕎肆・穂乃香』(きょうし・ほのか)さん。

落ち着きと静けさの感じられる店構えで、傘を差している夜ということもあって、暖簾は下がっているものの普通に歩いているとお店があることに気付かず通り過ぎてしまいそうです。

お店に到着し、暖簾をくぐったのは開店直後の17:45頃でしたが先客は無く、「こちらどうぞ!。」と花のある清潔感漂う明るいカウンター席に案内されます。
静かな店内には音楽が流れ、お客さんがいつ訪れてもよいように紙のランチョンマットと箸が既に準備されていて、お蕎麦屋さんというよりは「お洒落な和風ダイニング」といった雰囲気です。

更には、フロアで接客に当たっている店員さんも気さくな若い女性で、仕事帰りの女性が一人でフラッと立ち寄って美味しい肴をつまみながら日本酒を傾けることのできるお店ではないかと思います。


そんな、お蕎麦屋さんとは思えないお洒落なお店のカウンター席に着いて、ウィスキーのロックでも注文したい雰囲気の中、まずは生ビールをお願いします。

そしてビールを待っている間に料理を選びますが・・・。
お店のメニューは、まず料理とお酒が別の冊子(メニュー)になっていて、料理メニューの一品料理のページを開きますが、「蕎麦屋ならではの肴」(定番料理)、「馳走」(こだわりの肴)、「あらかると」と大きく3つのカテゴリに分かれていて、更には「本日のおすすめ」まであって何をいただこうか迷ってしまいます。
それも、単に品数が多いだけでは無く、どれも美味しそうなそそる料理ばかりです。

しばし時間を掛けてあれこれ迷いましたが、「だし巻き玉子」(蕎麦屋ならではの肴)、「江戸千住葱のぬた」(あらかると)、「鴨吟醸」(本日のおすすめ)の3品をお願いします。なお、メニューには書かれていませんでしたが、「だし巻き玉子はハーフサイズにできますが・・・。」とのことでしたのでハーフサイズでお願いします。

まずはお通し(チーズ&酒盗)を食べる間も無く運ばれてきた「江戸千住葱のぬた」。
小鉢で登場かと思いましたが、葱の他にワカメやタコなども含まれていて思いのほか量が多く、蕎麦の実(?)が振り掛けられています。その「江戸千住葱のぬた」は冷え具合も程良く、葱の歯応えとぬたみその甘辛加減がいい感じで美味しいです。


続いて、写真を撮ったりメニューを眺めたりしているうちに運ばれてきた「だし巻き玉子」。
ハーフサイズをお願いしましたが、大きめの玉子焼が4切れあり、酒の肴としては十分な量です。

その「だし巻き玉子」ですが、大根おろしを付けずにそのままでいただくと、油を多目に使用しているのかな?という印象ではありますが、出汁の効いた控えめな甘さと程好い食感が美味しいです。


「だし巻き玉子」をいただいている間にビールが無くなったので料理とは別冊子になっている分厚いお酒のメニューを開きます。最初、「お酒のメニューがなんでこんなに厚いんだろう?。」と思いましたが、開いてみると、日本酒の品揃えがマニアックかつ豊富で、1銘柄毎に1ページを使用して丁寧に説明が書かれています。

今回は、そんな豊富な品揃えの中から、まず島根県の地酒「純米生原酒・蛍舟」を冷でいただきます。
自分で選んだ猪口でいただいた「純米生原酒・蛍舟」は、辛口(+7)の日本酒ではありますが、まろやかな味わいの感じられる優しい喉越しで、料理をつまみながらゆったりした気分でいただくことの出来る日本酒です。


最初の「江戸千住葱のぬた」がまだ残っている状態ではありますが、残る「鴨吟醸」が運ばれてきたので日本酒をいただきながら早速いただいてみます。この「鴨吟醸」も量が多く、食べ始めたばかりですが、過去考えたことも無かった「蕎麦どうしよう?。(腹に入るかな?)」という心配が頭をよぎります。

そういえば、『穂乃香』さんでは「小さいせいろ」、「小さい辛味おろし」、「小さいかけ」、「小さい玉子とじ」、そして「小さい柚子切り」と、小さい蕎麦のメニューが充実しています。

過去、お酒を楽しんだお客さんが締めにいただくために「小盛り(さくら)」のせいろを用意しているお店を見掛けたことはありますが、これほど「小盛り」が充実しているお店は初めてです。最初は「?」と思いましたが、蕎麦前が進むにつれ、その存在とありがたさがなんとなく理解できたように思います。

なお、『穂乃香』さんで量が多いのは料理だけではなくお酒も何となく多いように思います。
柔らかい「鴨吟醸」とまだ食べ切らない最初の「江戸千住葱のぬた」を食べながら「純米生原酒・蛍舟」をいただいていますが、飲んでも飲んでも無くなりません。当初予定では、週末の金曜日ということもあり、お店が混雑していなければ日本酒を2銘柄いただく予定(もう一つは秋田の「春霞・純米」と決めていたんですが・・・。)でしたが、「純米生原酒・蛍舟」だけで十分な量です。


「鴨吟醸」と最後まで食べていた「江戸千住葱のぬた」が食べ終わったところで予想通り腹八分を少し超えた状態となり、「どうしよう?。小さい蕎麦か?。」なんて思いましたが、蕎麦を食べない訳には行かないし、「小さい蕎麦」ではそのお店の「普通」が分らなくなってしまうので、ここはやはり普通に「せいろ」をお願いします。

そして「せいろ」をお願いしたところで、熱い蕎麦茶が運ばれてきました。
多くの場合、お店に入って席に着いた時点で蕎麦茶が出され、最後が蕎麦湯で終わるので蕎麦茶はそれでおしまいになるケースが多いですが、そうすると、飲み物の順序が「飲まない熱い蕎麦茶、お酒、冷えた蕎麦茶、蕎麦湯」となります。しかし、ここ『穂乃香』さんでは最初に「何かお飲みになりますか?。」と聞かれ、お酒をお願いすると蕎麦茶は出てこないので、「お酒、熱い蕎麦茶、蕎麦湯、(温くなった蕎麦茶)」という順序となり、熱い蕎麦茶が蕎麦前と蕎麦を区切ってくれるので気持ちも新たに蕎麦をいただくことが出来るように思います。

「料理とお酒の品揃えといい、蕎麦茶を出してくれるタイミングといい、酒飲みを満足させてくれる嬉しい蕎麦屋だ!。」なんて個人的な印象を勝手に描きながら待っていると、「せいろ」が二段重ねで運ばれてきました。

「蕎麦汁はやや辛めかな?。」という印象ですが、艶のある、出汁の効いたしっかりした蕎麦汁で、腰のある蕎麦を美味しくいただくことができました。
そして最後に蕎麦湯をいただき、美味しい夕食が終了となりました。

ごちそうさまでした。


下町の『砂場@南千住』さんでいただく感動の蕎麦前

2013-02-10 23:17:34 | 東京23区(荒川区)

東京の老舗蕎麦屋の中で最も長い歴史を持っていると言われている「江戸三大流派」の一つ「砂場」。
その「砂場」の歴史を遡ると、1804年に発祥の地である大阪からまず糀町へ移転し、その後1912年(大正元年)に三ノ輪橋へ移転したとあります。

ということで、行ってきました。
三ノ輪橋にある「砂場」の総本家『南千住砂場』さんへ。

事前に営業時間を調べたところ午前10:30開店との事でしたが、さすがに10:30から蕎麦前もどうかと思ったので、11:00頃到着するように向いました。

都電・三ノ輪橋駅近くにあるアーケードの商店街「ジョイフル三の輪」に到着し、自転車が頻繁に行き交う昭和の香り漂う商店街の中を進むと、ありました。独特の存在感を放ちながらもしっかり下町に馴染んでいるお店が。


なるほど、この建屋ですか・・・。
昭和29年に近所の大工さんと相談して建てた、総檜造りの数奇屋風木造建築のお店というのは。

いや~、何がスゴイかって、「虎ノ門・砂場」さんとは異なり、風格の感じられる建屋が町中の一角ではなくアーケードの商店街の中にあるということがスゴイです。更に、その風情ある建屋は荒川区の文化財に指定されているとのことですが、違和感無く、ごくごく普通の「下町のお蕎麦屋さん」としてそこに存在しています。

お店の前で写真撮影を行なってから11:00少し過ぎに暖簾をくぐると先客は無く、4人掛けのテーブル席に着いて、まずは瓶ビールと「やきとり」をお願いします。

ビールを飲みながらお店の中を見渡すと・・・。
なるほど、訪れた方々の書かれている報告や記事の通り、様々な古い本や昭和の匂いの感じられる数々のおもちゃが所狭しと並べられています。そして、それら数々のおもちゃ達を眺めながら、「おっ、サンダーバード2号発見!。」なんて楽しんでいると、「やきとり」が運ばれてきました。


運ばれてきた「やきとり」は串焼きではなく、白髪ネギが添えられた箸でいただくお蕎麦屋さんの焼鳥で、ボリューム感たっぷりです。
早速温かいうちにいただいてみると、肉は柔らかく、タレの甘辛加減も絶妙で、「なんだこれ!!!。」と驚いてしまうほど美味しい「やきとり」です。


「やきとり」をつまみながら更に店内をキョロキョロ見渡すと、あちこちにメニューが貼られています。
事前に口コミサイト等でメニューを確認し、「蕎麦前のおつまみは少ないのかな?。」と思っていましたが、店内に貼られているメニューを見ると、確認できなかった「鴨ぬき」や、「さすがに3000円近い天婦羅は食べることが出来ない。」と思っていた「天ちらし」(天婦羅)の1人前(それも990円とお手頃価格です。)などもあるようです。

ということで、ビールも丁度なくなってきたので、その1人前の「天ちらし」と生酒をお願いしようとしたところ、「生酒は少々量が多いですが・・・。」とのこと。「二合ですか?。」と聞くと「二合弱です。」との回答。なるほど、つまり飲み切りサイズの瓶ってことですね。全く問題無いので生酒をお願いすると、予想通り飲み切りサイズの「菊正宗・生貯蔵酒」が運ばれてきましたが、なんと、温くならないように氷の入った桶の中に入れられていました。

そんなちょっとした気遣いに喜んでいると、「どうぞ!。」と異なる2種類のお通し(?)が新たに運ばれてきました。
通常、お通しは1人1回なのでビールと一緒に運ばれてきたお通しで終わりですが、お酒を追加した時にもいただいてしまいました。それも2品も。


お通しを2回も、それも合計3品もいただいてしまい恐縮していると、1人前の「天ちらし」が運ばれてきました。
具材を見ると、大きな海老、南瓜、舞茸(?)、芋、たまねぎ(?)と量が多いです。
「これで990円?。じゃあ、いったい3000円の天ちらしってどんなの?。」と思いながら湯気の立ち上がる天汁に南瓜を付けていただくと、カラッとしたサクサク感が素晴らしいです。と、これまた驚きの「天ちらし」です。

この「天ちらし」、サクサクしているだけではなく、臭みの無いクリアな油の香りが食欲を誘い、更には温かい天汁も美味しく、いつまでも冷たい「菊正宗・生貯蔵酒」と一緒に美味しくいだだきました。


感動続きの蕎麦前をいただいているうちにお店も混雑し始めてきたので、締めの「もり」をいただくことにしました。
蕎麦汁は徳利ではなく初めから蕎麦猪口に入れられているので、蕎麦と蕎麦湯をこの1杯でいただくことになりますが、思いのほかタップリ入っているので大丈夫そうです。

蕎麦をいただく前にまず蕎麦汁をなめてみると、普通に美味しいです。
次に蕎麦を摘んで持ち上げてみると、長いです。しかし麺が絡まることも無く、ほど良いしっとり感を保ったまま喉を通り過ぎて行き、なかなか心地良い食感です。

そして最後にとろみのある蕎麦湯をいただき、感動の蕎麦前と蕎麦が終了となりました。
いや~、質の高い素晴らしい料理を美味しくいただきました。

ごちそうさまでした。


最後に、今日、蕎麦前と蕎麦をいただいた『南千住砂場』さんは11:30頃には席がほぼ埋まってしまうほどの盛況振りでしたが、丁寧に、ゴクゴク普通に接している接客の様子と、蕎麦前と蕎麦を楽しんでいるお客さんの様子を見ていると、気軽にフラッと立ち寄ることの出来る、地元に根付いた親しみやすさと安心感みたいなものが感じられます。もしかすると、その親しみやすさと安心感は江戸時代から代々受け継がれ、長い年月を掛けて築き上げられた物なのかもしれません。

きっと、『南千住砂場』さんはこれからもずっと「ただの下町のお蕎麦屋さん」で、そして、その姿と姿勢は誰に何を言われようが何が起ころうが、その時代時代の流れに合わせながらもずっと変わらないのだろうと思います。
まぁ、それを「伝統」というのかな?。

いつまでも、今のままでいてほしいです。


『布恒更科@大井』さんの「タラの芽と蕗のとう」

2013-02-05 23:57:19 | 東京23区(品川区)

仕事で東京へ出掛け、珍しく反省会も無く解散となったことから、帰宅途中にある『大井・布恒更科』さんに一人フラッと立ち寄ってみました。
 
この『大井・布恒更科』さんは、江戸後期に開店した「更科」直系の「有楽町更科」さんから昭和38年に暖簾分けしたお店で、歴史は浅いのかもしれませんが、しっかりと「更科」の伝統が守られているお店です。
 
お店に到着したのは夕方6時前でしたが、既に辺りは暗くなっていて、風情ある日本家屋風のお店に灯る電灯に何とも言えない郷愁が感じられ、「来て良かった!。」と素直に感動できる店構えです。
 
暖簾をくぐりお店の中に入ると先客は1組男性2人のみで、「お好きな席へどうぞ。」と案内されます。
清潔感漂う店内の4人席に着き、早速メニューを広げてみると、定番のおつまみの他に季節のおつまみなどもあり、更には日本酒の品揃えも多く、蕎麦前がとても充実しています。
 
メニューを一通り眺め、「玉子焼」をお願いしようとしたところ、「とても量が多いので、御一人では・・・。もちろん、御一人で食べきる方もいらっしゃいますが・・・。」とのこと。
そういえば、口コミサイトで「巨大」という表現が使われていたような・・・。
ということで、山菜の天麩羅に気持ちが揺れたものの、瓶ビール(珍しく「熟撰」)と一緒に「猪口むし」と、季節のおつまみの中から「鴨のしぐれ大根」をいただくことにしました。
  
それほど待つこともなく運ばれてきた「鴨のしぐれ大根」。
時雨煮(しぐれに)とは生姜を加えた佃煮の一種で、貝のむき身などの魚介類や牛肉などが具材としてよく使われますが、今回いただいた時雨煮の具材は「鴨」です。初めていただく「鴨」の時雨煮は鶏肉に似た食感で、やや甘辛の味わい深い汁が柔らかく煮込んだ大根に染み込んでいて、お酒が進んでしまうおつまみです。
 

続いて「猪口むし」。
この料理は「具の無い茶碗蒸し」(?)ですが、寒い季節にはちょうど良いアツアツな一品で、しっかりした出汁の旨味と、蕎麦の実と柚子の香りが良いアクセントになっている、優しい味わいの餡がなかなか美味しいです。
この旨みと味わいがあるなら具材は不要と思います。


と、普通ならここで締めの蕎麦をいただきますが、先客の1組がお店を出てから新規のお客さんは無く、物音1つしない静かな貸切状態が続いていることから、もう少しのんびりさせていただこうと思い、季節の天種「タラの芽と蕗のとう」と産まれ故郷千葉県の地酒「岩の井」(千葉県の地酒があること自体珍しい)をいただきます。
 
いや~、好物の山菜の天婦羅(やや苦味の感じられる蕗のとうが美味しいです。)をいただきながら一人静かに日本酒をいただくなんて、ちょっと贅沢な気分です。


そして最後にいただいた締めの蕎麦ですが、ここ『大井・布恒更科』さんは創意あふれる「変わり蕎麦」や平打ちで歯応えのある「荒挽き蕎麦」が人気で、今の時期は食べたことのない「伊予柑切り」がいただけるようです。しかし、ここは迷うこと無く「御膳更科蕎麦」をいただきます。
 
いただいた「御膳更科蕎麦」はシャキッとした細打ちの蕎麦で、口の中に蕎麦を入れた時の冷え具合と何の抵抗感を感じることも無くスルスルッと喉を流れていく時の喉越しがいい感じです。(それにしても量が多いです。)

また、『大井・布恒更科』さんは「溜まり醤油」を使用した黒い蕎麦汁が特徴で、口コミサイトに多くの方が書き込んでいる通り「濃い」印象です。しかし、辛さとしょっぱさはそれ程でも無く、そのまま舐めても、麺をしっかり付けても美味しくいただける蕎麦汁と思います。


今日は仕事で東京へ出掛け、その帰りに一人フラッと立ち寄ってみた『大井・布恒更科』さんですが、一人で接客に当っていた女性店員さんの丁寧な接客がなかなか好印象で、一人貸切状態というのも何となく落ち着きませんが、居心地が良いです。
 
そんな雰囲気の中、好物の「タラの芽と蕗のとう」の天婦羅をつまみながら生まれ故郷千葉県の地酒「岩の井」をいただくという、休日の昼間に楽しむ蕎麦前とは異なる何とも言えない憩いの一時を過ごさせていただきました。

ごちそうさまでした。