蕎麦前で憩う

お蕎麦屋さんで蕎麦前をいただきながら憩いの一時を過ごさせていただきました。

『桑名屋@横浜・保土ヶ谷』さんの重箱入り「そば寿司」

2013-03-09 23:49:55 | 横浜市(保土ヶ谷区)

JR保土ヶ谷駅からわずか数分の、ビルの谷間にある『宿場そば・保土ヶ谷宿桑名屋』さん。

歴史を感じる店構えのお蕎麦屋さんは多々ありますが、少々趣の異なる宿場風の店構えです。
『宿場そば・保土ヶ谷宿桑名屋』さんの建屋は、保土ヶ谷が宿場町だった頃に建てられた物ではなく、東海道五十三次「保土ヶ谷宿」の絵の中に「二八」の看板(蕎麦屋?)があったことから、4代目店主が江戸時代の保土ヶ谷宿を再現したく、現在の建屋に建替えたとのことです。

そんなお店に到着したのは開店時間の11時を1~2分過ぎたころでしたが、扉のガラス越しにお店の中を覗いて見ると女の子が座敷の掃除をしていていかにも準備中です。
暖簾が出ていたこともあり、とりあえず確認してみると、「すみません、あと5分くらいです。」とのこと。

まぁ、急いでいる訳でも無く時間もあるのでお店の写真を撮りながら待ちますが、それにしても見れば見るほど良く出来ている建屋です。まるで、宿場町だった頃に建てられた建屋がそのまま現代まで残っているかのようです。

メニューを開いて「安倍川餅」と「みたらし団子」しかなかったらどうしよう・・・。
なんて、そんな雰囲気です。

そして「お待たせしました。」と、掃除をしていた女の子に声を掛けられお店に入ります。
お店に入り、まず靴を脱いで銭湯の下足箱のような、扉に東海道五十三次の宿場名が書かれた大きな下足箱に靴を入れて奥の座敷へ向かいます。

窓の無い座敷には4人掛けのテーブルが4つあり、暗くはありませんが、外部とは完全に遮断された空間で、BGMに昭和初期(?)の歌謡曲が流れているなど、ここがJR保土ヶ谷駅の直ぐ近くということを忘れてしまう、ちょっとした異空間です。


そんなことを感じながらメニューを開くと、写真が添えられている活字の綺麗なメニューで、宿場町のお店を再現したという雰囲気にはちょと似合わない現代風のメニューです。

さて、何をいただこうか。
まずはビールとして、お酒も飲むのか?。地酒は「十四代」か・・・。
馬刺しが美味しいのか・・・。締めは「せいろ」かな?。ならばそこそこ食べても大丈夫かな?。
と、あれこれ悩んだ末、充実した一品料理の中から「そば寿司」と「鴨焼ロース」をお願いします。

まず運ばれてきたのは川崎宿の絵(東海道五十三次の絵ではありません。)が描かれた重箱です。
これって、もしかして日本橋と三条大橋を含めて55個すべてあるのでしょうか?。


重箱に描かれている絵をまずはじっくり眺め、そして蓋を開けてみると中に「そば寿司」が5個入っています。
早速いただいてみると、海苔はしっとりしていて、少々薄味ではありますがまずまずです。


続いて「鴨焼ロース」が美味しそうな香りを漂わせながら登場です。
味付けは濃い目で、黒コショウが効き過ぎかな?。という印象ではありますが、お酒のおつまみにはこれくらいのインパクトがあっても良いのかもしれません。


その「鴨焼ロース」を食べ始めた頃にビールが無くなったのでやはりお酒をいただくことにします。
日本酒は「八海山」、「十四代」、「高清水」というラインナップで、普通に考えると「十四代」ですが、お勧めの「宿場冷酒」(1合525円)という安価なお酒が気になったので、いただいてみることにしました。
また、食欲が黒コショウに刺激されたのか、もう少し蕎麦前をいただきたい感じだったので、壁に貼ってあった「春野菜天ぷら」を一緒にお願いしようと思い女の子を探すと、お店の外で入口の扉を掃除しています。

そういえば、「そば寿司」を食べている時に廊下の雑巾掛けをしていたような?。
もしかして、開店時間の11時にとりあえず暖簾は掛けますが、お客さんが訪れ始めるのはお昼前頃からで、それまでは実質準備中だったりして・・・。お店に入って30分ほど経過していますが、他にお客さんはいないし。

そんなことを考えながら気付いてくれるのを待っていると、人柄の良さそうな女将さんがその様子に気付いてくれてホッと一安心です。
徳利で運ばれてきた注目の「宿場冷酒」というお酒は、もう少し冷たくしたいところではありますが、口当たりまろやかな美味しい日本酒でした。また、「抹茶塩でどうぞ!。」と運ばれてきた「春野菜天ぷら」は、420円という価格を踏まえれば妥当なところでしょうか?。


蕎麦前を楽しみ、そろそろ「せいろ」をいただこうと思いましたが、障子に貼ってあった「桜そば」という張り紙が目に止まったことから「せいろ」ではなく、「桜そば」をいただくことにしました。

小さな蒸篭一段で運ばれてきた「桜そば」(桜切り蕎麦)は、桜の葉を更科粉に打ち込んだということで、麺の所々に緑色のツブツブを見ることができます。その「桜そば」はみずみずしく柔らかいという印象で、長さが短かい(柔らかいので切れてしまう?)ため食べ難いという点はどうしても感じてしまいますが、蕎麦汁に付けずそのままいただくと、ほのかに桜の味わいが感じられ、まずまずの蕎麦と思います。

なお、蕎麦湯は濃い目で美味しくいただきましたが、ポットに入っていて、少々情緒に欠けるようにも思います。
宿場町の雰囲気を前面に出しているお蕎麦屋さんなので、もうひとひねり「らしさ」がほしいところでしょうか?。


最後に会計を済ませる際、女将さんに「お待たせしてしまってすみません。」と何度も声を掛けられました。
最初は、「待たされた?。」と何のことか理解できませんでしたが、開店時のこと(開店時間なのに掃除中で10分程待たされた。)を言っていたようです。

その程度の事はたいした事ではありませんが、そんなちょっとした出来事に対しても、事務的ではなくそっと気を使ってくれる、「古き良き時代」を感じさせてくれるお蕎麦屋さんでした。

ごちそうさまでした。