蕎麦前で憩う

お蕎麦屋さんで蕎麦前をいただきながら憩いの一時を過ごさせていただきました。

『元祖・鴨南ばん@湘南台』さんの「治兵衛の鴨南ばん」

2014-06-07 11:10:00 | 神奈川県(藤沢市)

多くのお蕎麦屋さんでいただくことの出来る、人気メニューでもある「鴨南ばん」と「鴨せいろ」。

その、鴨南ばんの歴史を遡ると、江戸時代中期(1810年頃)、日本橋馬喰町にあった蕎麦屋「笹屋」の治兵衛(じへえ)が、蕎麦に熱い汁を掛けて食べる「ぶっかけそば」に鴨肉と叩き骨とネギを乗せたのがその始まりとされています。そして、それから200年以上の月日が流れるの中、お店と鴨南ばんは代々受け継がれ、現在、8代目のお店で、再現された初代治兵衛の鴨南ばんをいただくことができるとのことです。

ということで、大雨警報の出ている悪天候の中、雨にも負けず行ってきました。
その、再現された初代治兵衛の鴨南ばんをいただくことができるという、横浜市営地下鉄&小田急電鉄・湘南台駅から徒歩3分程度のところにある『元祖・鴨南ばん本家』さんへ。

お店に到着したのは開店間もない11時少し過ぎでしたが、1人で訪れているお客さん2名が既に席に着いていて、お蕎麦を食べ始めるところでした。悪天候の午前11時ならお客さんも少なく、鴨を肴にのんびり飲んでも問題は無いだろうと思っていただけに少々驚きでしたが、混雑が予想される昼時までは時間もあることから、まず歴史を感じる店内で予定通り鴨を肴にビールをいただこうと思います。


メニューを広げ、「鴨づくし」という欄を見ながら鴨だけでも良いかな?と思いましたが、鴨南ばんに辿り着く前に「鴨はもういいや」となりそうだったことから、鴨以外の料理から「玉子焼き」をお願いし、鴨料理の中から「鴨の肝煮」をとりあえずお願いします。なお、どうしようか迷った「鴨肉豆腐」は、本鴨ではなく合鴨の鴨肉とのことだったのでパスすることにしました。


まず、エビスビールとお通しの手作り蕎麦豆腐が運ばれてきますが、この蕎麦豆腐、箸を入れて半分にしてみると、それだけでチーズかと思ってしまう程のネットリ感が感じられます。

そして一口いただいてみると、豆腐のネットリ感と餡の旨みが上手く絡み合っていて、その絡みにしっかりした辛さの美味しい山葵が加えられているという、お通しの域を超えている完成度の高い一品です。
なお、メニューに「手作り蕎麦豆腐」という料理があるので、単品でいただくことも出来るようです。


さて、まず最初にいただいた「鴨の肝煮」は、肝なのでもちろん柔らかいだろうと思っていましたが、単に柔らかいだけではなく、しっかりした歯応えの感じられる肝煮です。


続いて、今日は鴨が目的だったので「食べない(注文しない)」と決めていたにも関わらずついつい頼んでしまった「玉子焼き」は、やや小振りではありますが、まずまずの玉子焼きです。

まぁ、結果論ではありますが、鴨と天婦羅をいただくことになったので、小松菜または明日葉のおひたしなどサッパリした料理を一品入れておいた方が良かったかな?と思います。


玉子焼をいただいたところでお願いした料理は全ていただきましたが、今日はビールがそこそこ残っていて、また、お客さんも1人で訪れているお客さん4名だけで、混雑しているという状況ではなかったことから、季節のおすすめ料理「若鮎と旬野菜の天ぷら」を追加でお願いします。

さほど待つことも無く塩と共に運ばれてきた「若鮎と旬野菜の天ぷら」は、若鮎、そら豆、新じゃが、あしたばの天婦羅盛り合わせで、いかにも2名様用という内容になっています。

まずいただいた若鮎の天婦羅は、程好い苦味がなかなか良い感じで、日本酒がほしくなってしまいます。
続いて初めて食べるジャガイモの天婦羅は、ホクホク感がなかなか好印象で美味しいです。
次にいただいたそら豆の天婦羅は、ジャガイモ同様初めて食べる天婦羅でしたが、天婦羅を食べているというより普通に豆を食べていう感じの天婦羅です。
最後にいただいた明日葉の天婦羅は、衣が薄くサラッと揚っていて、サクサク感が心地良い天婦羅です。


美味しい料理をあれこれいただき、十分満足したところで今日のメイン料理、合鴨ではなく青森県産の本鴨と江戸野菜である江戸千住葱を使用した「治兵衛の鴨南ばん」をお願いします。


花巻のように赤い漆塗りの蓋がされて登場した「治兵衛の鴨南ばん」は、蓋を開けると、初代治兵衛が江戸時代に出していた鴨南ばんの再現とあって、当時と同様、鴨肉と叩き骨とネギが乗っています。


まず、本鴨の肉をいただく前に汁をいただいてみると・・・。
お~、これは旨い!。
味は上品な薄めでインパクトも弱いように思いますが、脂っこく無い優しい味わいでとても美味しいです。

次に、楽しみにしていた本鴨の肉ですが、赤身の残る少々レアな鴨肉で、いただいてみると気になる程ではありませんが、やや硬めのしっかりした歯応えと肉々しい野性味(?)が感じられます。

そして蕎麦。
う~ん、これもまた美味しいじゃないですか。
汁がとても美味しく、かつ蕎麦は蕎麦単体で食べたいという思いもあることから、「鴨南ばん」ではなく「鴨抜き+せいろ」(メニューに鴨抜きはありません)でいただきたいかな?とも思いましたが、その美味しい鴨汁の旨みを吸った細麺が汁同様とても美味しいので、やはり鴨南ばんでいただくのが一番かもしれません。

それにしても、実に美味しい鴨南ばんで、一滴の汁も残すことなく完食です。


今日、蕎麦前と蕎麦をいただいた『元祖・鴨南ばん本家』さんは、「元祖・鴨南ばん」を店名にしているだけあって、静かで落ち着いた雰囲気の中で美味しい鴨南ばんをいただくことの出来るお蕎麦屋さんでした。

また、鴨の季節が終わってしまったためか、インターネット上で見掛けた「本鴨のせせり」(首肉の焼き鳥)という料理は無く、「冬(鴨の季節)に来れば良かった・・・。」と言う感じですが、野生種である「本鴨」の肉を使用した鴨料理をいただくことも出来るようで、日本酒の品数が豊富ということと併せて、鴨の季節は今日以上に「鴨」を楽しむことが出来そうです。

お店のある湘南台はそれほど遠い場所でも無いことから、鴨の季節に再び訪れ、ぜひもう一度、鴨料理をじっくりいただきたいと思います。

ごちそうさまでした。


『ひら井@藤沢本町』さんのほんのり甘い「ごま豆腐」

2014-05-03 11:30:00 | 神奈川県(藤沢市)

以前、昼時を少しだけずらして訪れた際、既に「支度中」となっていて蕎麦をいただくことが出来なかった小田急電鉄・藤沢本町駅近くにある『蕎麦・ひら井』さん。

お店まで行ったのに入れないと余計に入りたくなってしまい、連休後半初日の5月3日、うちの奥さんと2人でリベンジ訪問することにしました。

お店に到着したのは開店30分前の11時丁度で、さすがに待っている他のお客さんはいませんでしたが、直ぐにお客さんが集まりだし、開店5分前にはおよそ10名程度のお客さんがお店の前に集まりました。

しかし開店5分前になってもシャッターは降りたままで、「休みだったりして。」という雰囲気です。
そして開店2分前にシャッターが上がり、無言で暖簾が掛けられ、男性店員さんが店の中に戻ろうとします。
その様子に「?」と思っているとクルリと振り返り、無愛想な表情で一言「いいよ」。

ということで、先客のいないお店に1番客で入ると席の指定は行われず、勝手に店内奥にある2人掛けのテーブル席に着いてまずメニューを広げます。ちなみに、席は開店直後直ぐに満席となってしまいました。

お店は、若い男性2人で営業していることから、おつまみは創作料理が並んでいそうな感じですが、想像とは異なり、基本的な蕎麦屋の肴が並んでいます。今回は、そんなおつまみの中から「酒のつまみ三種」、「板わさ」、「卵焼き」、「鴨ロース」を生ビールと一緒にお願いします。


まず運ばれてきた「板わさ」は、厚みがあってしっかりした歯応えの感じられる蒲鉾で、透明感の感じられる綺麗な山葵を添えて醤油を少しだけ付けていただくと美味しく、とても満足です。

また、蕎麦前が始まったばかりでしたが、残り少なくなったビールはうちの奥さんに任せ、飲んだことの無い愛知県の地酒「純米原酒・義侠」(ぎきょう)をお願いします。


追って運ばれてきた「酒のつまみ三種」は、白身の刺身、ごま豆腐、小松菜と油揚げの煮浸しの3種類で、まず真ん中のごま豆腐をいただいてみると・・・。

まるでチーズをいただいているかのようなネットリした食感です。そして、ほんのり甘く、過去に味わったことの無い旨みを感じるごま豆腐で、「純米原酒・義侠」と一緒に美味くいただきました。
なお、白身の魚が何であるか確認したところ、一言ボソッと「カンパチ」との回答でした。


続いて、お願いした訳ではありませんが2皿に分けて持ってきてくれた「卵焼き」は、出汁の効いた程好い甘さがとてもいい感じです。そして、焼き色の付いていない、丁寧に作られたことが伺える玉子焼で、これまでにいただいた玉子焼の中でも上位にランクインする美味しさです。


最後に運ばれてきた「鴨ロース」ですが、添えられている、おろしタマネギのソース(?)が絶妙に美味しく、山葵を乗せたりソースを付けたりしながら美味しくいただきます。また、途中で「純米原酒・義侠」が空になったので、島根県の地酒「超辛純米本生・王禄」(おうろく)をお願いします。



美味しい蕎麦前をいただきながらしばらくのんびりさせていただいた後、「天もりそば」をお願いします。

少々時間が掛かるかと思いましたが、さほど待つことも無くまず天婦羅が天汁と共に運ばれてきて、天婦羅だけの写真を撮っていると、少し遅れて蕎麦が運ばれてきます。


天婦羅は温かいうちにいただこうと思い、早速海老の天婦羅を天汁に付けていただいてみると、なかなか美味しい天婦羅で、中でも海老の頭はとても美味しいです。

そして蕎麦ですが、出汁の効いた柔らかい印象の蕎麦汁に付けて美味しくいただきました。


今日、蕎麦前と蕎麦をいただいた『蕎麦・ひら井』さんは、若い男性2人で営業しているお店ですが、男臭さは感じられず、和風の静けさが感じられるお蕎麦屋さんでした。また、一見、無愛想にも感じられる接客ですが、気分を悪くすることも、悪い印象を持つことも無く、付かず離れずの「適当な距離感」と営業的な接客の感じられない「自然な接客」がとても好印象のお蕎麦屋さんでした。

ごちそうさまでした。


『すい庵@藤沢』さんの「穴子の煮こごり」

2012-09-15 23:12:54 | 神奈川県(藤沢市)

海老名陸上競技場で行なわれた社会人ラグビーの試合を観戦した帰り道、JR藤沢駅から徒歩3分程度のところにある『手打蕎麦・すい庵』さんで一人夕食を取りました。

ビルの1階にある、一見ただのビルにしか見えないお店に入ると、店内は外観とは異なり純和風の造りになっていて、清潔感とやすらぎが感じられます。

お店に着いたのは19時頃でしたが、テーブル席はほぼ埋まっていて、「コ」の字形になっている大きな相席用(?)のテーブル席の一角に腰を下ろし、ビールと一緒に「玉子焼」と「穴子の煮こごり」をお願いします。

まず運ばれてきたのは「穴子の煮こごり」で、そのまま食べても、添えられているワサビと一緒に食べても美味しく、素晴らしい一品です。注文した時、「量が多いので半分にも出来ますが・・・。」と確認されましたが、「じゃ、半分で。」と言わず「いえ、全部食べます。」と答えて大正解でした。なお、この「穴子の煮こごり」はメニューをみると5~9月の期間限定料理とのことで、食べることが出来てラッキーでした。


そして「穴子の煮こごり」が半分になった頃に運ばれてきた「玉子焼」。
ふっくらふわふわした玉子焼をまずそのままいただいてみると、味付けにごま油を使用しているのか、ごま油独特の味わい(?)が感じられ美味しいです。また、辛味大根が添えられていますが、個人的にはそのままいただいても十分美味しいと思います。


ビールがなくなり料理が半分になった頃、日本酒をいただきます。
お酒は飲んだことも聞いたことも無い地酒が3種類並んでいて、今回はその中から山形県の地酒「純米吟醸・圓」(まどか)をいただきましいた。日本酒は木でできた立方体の徳利に入っていて、「木の徳利に入っている」というだけで美味しそうです。

日本酒には「蕎麦味噌」がお通しとして付いてきましたが、最初にいただいたビールには自家製の「そばの実あられ」がお通しとして付いていました。


締めにいただいた蕎麦ですが、蕎麦汁は濃い目のやや辛汁で、カツオの風味はあまり感じられませんでしたが、「全ての蕎麦が十割」らしい太くて硬めの蕎麦との相性も良く、蕎麦汁をタップリ付けても美味しくいただくことのできる蕎麦でした。

美味しい蕎麦前と蕎麦をいただいて、最後に「そば湯」をいただきましたが、この蕎麦湯がまた絶妙な美味さで、そのまま(お湯だけ)飲んでもまろやかさの感じられる美味しい蕎麦湯でした。

お蕎麦屋さんは、一人でも美味しい料理とお酒をいただくことの出来る空間で、今までもあちこちのお蕎麦屋さんで違和感無くそういう風景を見てきました。そして今日は自分もその一人として美味しい料理とお酒を一人でのんびりいただきましたが、閉店間際にも関わらず「コ」の字形のカウンターに同席しているお客さんは夫婦で訪れているお客さんが多く、やはり蕎麦前を楽しむお蕎麦屋さんは「夫婦で訪れる大人の空間なのかな?。」と思った今日の夕食でした。

ごちそうさまでした。