デラシネ日誌

私の本業の仕事ぶりと、日々感じたことをデイリーで紹介します。
毎日に近いかたちで更新をしていくつもりです。

ドキュメント武漢

2020-08-27 21:32:10 | 買った本・読んだ本
書名「ドキュメント武漢」
著者 早川真 出版社 平凡社(平凡社新書) 出版年 2020

久し振りに現場の匂いがするルポを読んだ。本書は武漢が閉鎖されるおよそ一週間前に武漢に入り取材した共同通信北京支局の記者が、閉鎖が解かれるまでのおよそ半年間に中国がどうコロナ危機に対応したかをルポしたものだ。よく言われているように遅れた初動対応の実態、その遅れをとりもどすため中国共産党が威信をかけて総力で立ち向かったこと、しかしそれは市民を守るというよりは習近平総書記長の威信を守ることだったのではないかということ、日本と武漢の経済上での密接な関係、武漢にいた日本人送還の裏に、広大な省内から空港までの移動に尽力した中国人の協力があったこと、コロナのために落ち込んだ経済をどう建て直すか、そしてそのための大きな障害となるアメリカとの関係をどうするのか、そうした中国の課題も捉えていく。実に小気味のいいレポートで、コロナ禍でマスコミが完全に疲弊しているなか、こんな記事をリアルタイムで読みたかったと思う。中国が何をしたかを知ることで、日本政府がいかになにもしていないかを認識することになっただろう。コロナ感染の問題は地球規模でおきている、そして指導者がどう対応するかが事態を大きく左右している、その時こうしたレポートを読めば、こんなことでいいのかという世論がおきたかもしれない。リアルタイムで読めなかったが、わずか半年前に武漢、そして中国で起こったことをこのようにコンパクトにまとめたものを読めたのは大きい。リアルタイムでは見えない、分析や調査を重ねた中での事実が見えてくる。コロナで感染の危険があるなかの取材は大変だと思うが、コロナ問題が起きてから、感染者の数の報告が示すように、与えられた情報の垂れ流しを毎日読まされたり見せられたりしてきたような気がする。感染者数などは首相動向などと同じよう扱いでいい。現場に行って取材しているのだろうかという記事や報道ばかりを読まされ続けている。クラスターが起こったという事実も大事だろうが、何故クラスターが起こったのかということはやはり現場にいかないとわからないはずだ、それを報じてもらうことで、何故感染がおきたを知り、感染しないために必要なことがなにかという知恵を少しずつ貯えてくことだできたと思うが、そうした報道にほとんど出くわさなかった。もちろん感染の危機があるなかの取材は、そう簡単ではないとは思う。本書の著者がここで報告する封鎖前の武漢の様子は、自分の目で見て、実際に市民の肉声を聞いて書いたものである。だからこそその緊迫感が伝わってくるのである。封鎖解除の武漢の街の姿も著者が実際見て、聞いたものである、やはりこうしたレポートにはやはり迫力がある。コロナ感染についてはまだまだわからないことがたくさんある。もちろん科学者たちの研究に頼る部分は多いが、マスコミの報道も感染の謎を解くためにできることはかなりあると思う。本書
を読んで、マスコミが果たす役割について改めて考えさせられた。台湾はどうして感染を収めたのか、韓国はどう立ち向かったのか、それを今回の本のような形でレポートされたものが切に読みたいと思う。その中で得られた知恵は、感染を広めないという点できっと大きな役割を果たすのではないだろうか。
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