デラシネ日誌

私の本業の仕事ぶりと、日々感じたことをデイリーで紹介します。
毎日に近いかたちで更新をしていくつもりです。

ブラッドランド上・下

2023-01-23 21:24:10 | 買った本・読んだ本
書名 「ブラッドランド  ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実」上・下
著者  ティモシー・スナイダー 布施由起子訳
出版社 筑摩書房  出版年 2015

桑野塾忘年会で武隈氏がとりあげた一冊。武隈氏はロシアのウクライナ侵攻が始まってから、ずっとこの問題にジャーナリストとして取り組むことになった。ロシア語ができ、ロシア事情に精通しているので、侵攻以降テレビ朝日の貴重な情報源となってきた。その彼がこの本をとりあげたので、読まなくてはと思った。
正直読むのがかなり辛かった。とにかくヒトラーとスターリンたちが行った虐殺の数々を読む中で、まじめに何度も吐き気に襲われた。このふたりはどれだけの人を殺せば気がすむのか、各地で行われた虐殺で亡くなった人たちの数が何千とかではなく、何百万という単位で出てくると神経がおかしくなるようだった。ウクライナ映画の「DAU」の凄惨なラストシーンがフィードバックしてきた。ヒトラーとスターリンが、著者がブラッドランド(流血地帯)名づけたロシア西南部、ウクライナ、ベラルーシ、ポーランド、バルト諸国で殺戮された人間が1400万人にのぼるという。何度も何度も読むのをやめようと思って本を閉じかけながらも、これは読まなくてはならないと思ったのは、やはり現在のロシアによるウクライナ侵攻の根っこの部分はここにあると思ったからに他ならない。何故プーチンがウクライナがロシアの属国で、それがNATOなどに靡いている、とんでもないことだ、それ自体がナチ化だという、どうしても我々には理解不能なことを、無理やりやろうとしていること、そしてそれを支持する人たちがいるということ、その原点はここにあるからだ。目をそむけば、この歴史がいま繰り返されようとしていることを黙視することになる。
「死者は記憶されるが、死者は覚えていない。ほかの人間が力を持ち、彼らの死に方を決めた。後世もやはりほかの者が彼らの死の原因を決めている。殺害から意味を引き出さなければ、さらなる殺害がさらなる意味を生み出す危険性が出てくる」
先日新聞の映画評で「ヒトラーのための虐殺会議」という映画が取り上げられていたが、その内容を見て、この本を読むと、そういう恐ろしいことを人間が、やってきた、そしてそれもそんな昔のことではないはいうことを知って、愕然としてしまう。
いま我々が直視しなければならないことが、この一冊には込められている。
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