ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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「京郷新聞」1面、朴槿恵の記事の下に姜尚中の著書紹介。その意味は?

2012-12-23 00:55:37 | 韓国の時事関係(政治・経済・社会等)
 3泊4日のソウル旅行から昨日(21日)夜帰ってきました。といっても、寝坊して、本を買い込んで、ミニシアターでマイナーな映画を観て、コーヒー店でパソコンを打ち込んだりして、これじゃ横浜での日常と同じだー。
 今回は、初めて行ったロッテモール金浦空港店でずいぶん時間を費やしてしまいました。昨日早起きしてそこのロッテシネマに行っていたら、さらにひどかった。特に観ておかねば、という映画がなかったからパスしましたが・・・。「韓国はどこに行ってきたの?」と問われて、「金浦空港に行って帰ってきました」じゃおかしく、また悲しいですからねー。

 帰りの飛行機内で、数種類の韓国紙をななめ読み。どれも20日の朴槿恵が顕忠院を訪れたことと記者会見の内容が1面のトップ記事でした。
 大統領選当選者の初の公式日程として顕忠院を訪れた彼女は顕忠塔に献花・焼香し黙禱を捧げた後、李承晩・朴正熙・金大中元大統領の墓所を参拝したとのこと。朴正熙の墓前では、さぞかし感慨深かったことでしょう。

 本論に入る前に、ちょいと周辺ネタから。

   「5・1・6」という3つの数字の驚くべき(?)符号一致(笑)】

 「5.16軍事クーデター」で朴正熙が政権を握ったのが1961年5月16日。それから51年7ヵ月=51.6年後の選挙での朴槿恵が51.6%の得票率で大統領になった、という数字の偶然の一致から、これを神意(!)とみる話がネット上で広がっているという「東亜日報」の記事(→コチラ)があります。(自動翻訳は→コチラ。)

   【朴槿恵の墓所参拝パフォーマンス】

 朴槿恵が金大中元大統領の墓所を参拝したのは2度目。去る8月に盧武鉉元大統領の墓とともに金大中の墓を参拝しました。「国民統合のため」というふれ込みで、ねらいは当然選挙対策。(関連新聞記事(日本語)は→コチラコチラ
 その効果で、というわけでもないでしょうが、事実「統一日報」の記事(日本語)によると、韓光玉・韓光玉・金景梓等かつての金大中系の人々がこぞって朴槿恵支持を表明しました。
※その他、李会昌、李仁済等は当然として(金泳三もかな?)、かつて民主運動に携わり獄中生活も経験した金東吉・金重泰、そしてあの金芝河といった人たちも朴槿恵支持の側に名を列ねているのも興味深いところです。(その後の金芝河については、本ブログの過去記事(→コチラ)で少しふれました。「ウルトラ民族主義者」あるいは「ファシスト」とまで言われたりもしています。)

   【「京郷新聞」という新聞】

 韓国の新聞は、<朝・中・東>称される「朝鮮日報」「中央日報」「東亜日報」の大新聞3紙がいずれも保守紙で、それに対し左派系の新聞としては発刊の経緯からして当然の「ハンギョレ」があることは、韓国事情に通じている人にはよく知られていることだと思います。
 しかし、全国紙「京郷新聞」については、その紙名も、内容が中道左派志向であることも、上記4紙に比べると日本での認知度は今ひとつではないでしょうか?
 ウィキペディアの説明によると、日本の植民地時代にあった旧「京郷新聞」の題号を継承して1946年カトリック財団の新聞として創刊された新聞です。その後李承晩政権や朴正熙政権時代に筆禍を受けたこともあり、なるほどとうなずかれます。

   【21日付「京郷新聞」が1面下段(朴槿恵の記事の下)に姜尚中「続・悩む力」の抜粋を掲載した意味は?】

 さて、やっと本論。私ヌルボが機内で21日付「京郷新聞」を見てすぐに注目したのが、1面下段の<今日の思索(오늘의 사색)>欄で姜尚中「살아야 하는 이유(生きていくべき理由)」がとりあげられていたことです。「続・悩む力」の韓国版です。(下写真)

        

 毎日連載の<今日の思索(오늘의 사색)>は、1冊の本をとりあげて、その文章を抜粋して載せているのですが、1面だけに、直接的にではないにしろ時の政治・社会に関係がありそうな内容になっています。
※→コチラで最近の記事内容がわかります。(自動翻訳は→コチラ。)
 さて、その「続・悩む力」からどんな文章を抜粋しているかというと、記事全文は→コチラ(→自動翻訳)で読むことができますが、ポイントとなる最後の部分を次に掲げます。

 今、私たちの前には一人の尊厳をより強く毀損する極限の時代が開かれるだろう。弱く幼くて小さいものが蒙る苦痛を考えるともう胸が痛くなる。それでも生きて行かなければならない。そのいかなる苦痛を経験しても、自分は大切であり何物にも置き換えることのできない最も貴重な存在であることを忘れてはいけない。生きてこそ、ひとつの時代を耐えて、他の時代に進むことができるものだ。私たちの唯一性だけでも生きなければならない理由は十分だ。友よ、今はただきつい酒で傷ついた魂を癒したり、より良い世の中に対する夢をあきらめたりしないことだ!

 どうも今回の選挙で敗北を喫した左派系の人々への呼びかけのように読み取れるのですが、いかがでしょうか?

 [★姜尚中「살아야 하는 이유(生きていくべき理由)」は、今月14日の「朝鮮日報」の記事「2012今年の本10冊」にもあげられているように、韓国でもよく読まれている本です。]
     
 さらに、この1面の紙面右には、小さい記事ですがもう1つ「国民 幸福 韓国97位」という見出しの記事があります。(→自動翻訳。)
 ギャラップの調査によると、日常生活の中で肯定的な気持ちを持っている人の比率が韓国は63%で、148ヵ国中97位だった、というものですが、こういう記事を1面においたことも、「続・悩む力」の抜粋同様、朴槿恵当選という中での「京郷新聞」の意図といったものが込められているのかもしれません。

         


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