ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

韓国内の映画の興行成績 [11月20日(金)~11月22日(日)]と人気順位 ►大阪韓国映画祭、「移葬」は良かった! ►「思い出の黒いゴム靴」、原作漫画の連載開始から28年ぶりに劇場公開アニメ化

2020-11-24 23:55:35 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▶11月22~23日は大阪韓国映画祭で新幹線の旅。コロナ禍突入以降首都圏を離れるのは9月の名古屋行きに続き2回目です。5作品中観たのは「私を救わないでください」「オ!ムニ」「移葬」の3つで、観られなかったのは「ユニへ」「修理工場」の2つ。個人的評価は次の通りです。
 「私を救わないでください」★★★★(ネチズンの高評価[後掲]はわかる。ただ貧困ゆえの母子家庭の親子心中といった実際の事件を素材としているわりには掘り下げ不足で、同級生男子との淡い恋(?)等とのバランスが今イチ) 「オ!ムニ」★★★☆(ナ・ムニさんはもちろんイ・ヒジュンもよかった。観客から笑い声もおこるコメディだが、「認知症をコメディ映画のモチーフにした点はいかがなものか」との見方はついて回る・・・) 「移葬」★★★★☆(日本だと「移葬」じゃなく「改葬」じゃないの!? それはそれとして期待以上! 家族の土葬墓を自治体の都合でパワーシャベルで掘ってお骨を火葬した上で改葬するのだが、その件で老父母のいる実家に集まった長女[+やんちゃな息子]以下の4姉妹と一番末の長男、+長男の元カノで堕胎の費用を要求している女性。火葬や相続等についての世代や男女の違い等による意識の相違が具体的に描かれ、総じて家父長制の終わりを感じさせる。それらのネタが時にはつかみ合いになるほどだが、しかしそれでも家族同士。笑っちゃう場面もあり、一方でいろいろ考えさせてくれる。★5つでもいいかな?)

▶今回の記事で注目は・・・
 1993年の漫画本刊行以来TVアニメにはなったが劇場用アニメは初めてという「思い出の黒いゴム靴」の公開。ただネチズンの評価は当時子どもだった40代は平均9.83と突出して高いものの、全体では7.26とアニメとしてはかなり低い・・・。まあそうでしょ。

         ★★★ NAVERの人気順位(11月24日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
  ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(1) ディア・マイ・ジーニアス(韓国)  9.74(34)
②(3) 蒸発(韓国)  9.73(26)
③(5) さすらいのシェフ(韓国)  9.61(146)
④(4) 劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン(日本)  9.55(568)
⑤(8) 私を救わないでください(韓国)  9.51(99)
⑥(-) モンマルトルのパパ(韓国)  9.50(155)
⑦(9) フォードvsフェラーリ  9.49(8,181)
⑧(10) ブータン 山の教室  9.47(119)
⑨(6) 復活: その証拠(韓国)  9.46(367)
⑩(-) 犬と猫のための時間(韓国)  9.46(13)

 新登場の作品はありません。

     【記者・評論家による順位】

①(1) 燃ゆる女の肖像  9.22
②(-) 恐怖分子  8.22(9)
③(2) ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語  8.00(10)
④(3) マーティン・エデン  8.00(8)
⑤(新) Mank/マンク  8.00(6)
⑥(4) ハラボジの家(韓国)  7.83(12)
⑦(5) マロナの幻想的な物語り  7.83(6)
⑧(6) フォードvsフェラーリ  7.63(8)
⑨(-) 未来を乗り換えた男  7.60(5)
⑨(7) ガールフッド  7.60(5)

 ⑤「Mank/マンク」が新登場です。1930年代に名作「市民ケーン」を手掛けた脚本家の<マンク>ことハーマン・J・マンキーウィッツに焦点を当てたアメリカのドラマ。アルコール依存症に苦しみながらも、社会風刺に強くこだわったマンクの半生と、「市民ケーン」誕生の裏側を描いた作品です。日本でも2日遅れの11月20日に公開されています。韓国題は「맹크」です。

 ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績11月20日(金)~11月22日(日) ★★★
        「盗掘」が3週連続1位

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・週末観客動員数・・累計観客動員数 ・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・盗掘(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・11/04・・・・・・・・156,394・・・・・・1,276,614 ・・・・11,772・・・・・1,084
2(31)・・Run:ラン・・・・・・・・・・・・・・・11/20 ・・・・・・・101,113・・・・・・・・115,977・・・・・・1,114・・・・・・・799
3(2)・・サムジングループ・・・・・・・・・・10/21 ・・・・・・・・50,114 ・・・・・・1,533,755 ・・・・13,668・・・・・・・621
       英語TOEIC班(韓国)
4(3)・・私が死んだ日(韓国) ・・・・・・・・11/12 ・・・・・・・・35,501・・・・・・・・212,976・・・・・・1,971 ・・・・・・・623
5(66)・・思い出の黒いゴム靴(韓国)・・11/19・・・・・・・・10,839・・・・・・・・・13,615・・・・・・・・115 ・・・・・・・215
6(新)・・ザ・タックス・コレクター・・・・11/18 ・・・・・・・・・7,569・・・・・・・・・14,499・・・・・・・・112 ・・・・・・・293
7(新)・・マリー・キュリー・・・・・・・・・・・11/18 ・・・・・・・・・7,293・・・・・・・・・16,543・・・・・・・・139 ・・・・・・・403
8(5)・・オクトノーツとグレート・バリア・リーフ・・11/12・・6,153 ・・・・・21,904・・・・・・・・147 ・・・・・・・166
9(4)・・劇場版 ヴァイオレット・・・・・・11/12 ・・・・・・・・・6,087 ・・・・・・・・・32,630・・・・・・・・280 ・・・・・・・103
       ・エヴァーガーデン(日本)
10(10)・・21ブリッジズ・・・・・・・・・・・・・1/01・・・・・・・・・・3,472・・・・・・・・127,763・・・・・・・・979・・・・・・・・・10
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 今回の新登場は2・5・6・7位の4作品です。
 2位「Run:ラン」(仮)はアメリカのスリラー。18歳の女の子クロエ(キエラ・アレン)は未熟児として生まれ、足が麻痺しているため人里離れた家でお母さん(サラ・ポールソン)と一緒に暮らし、車椅子の日々を送っています。お母さんは愛する娘の面倒を懸命に看てくれますが、過保護のレベルかも。クロエは学校へは行かず、お母さんが勉強を教えていますが、生活にはさまざまな制約が設けられています。そんなある日、クロエはお母さん宛に処方された緑色の薬が自分に与えられていることに気づき、不審に思います。そしてすべての日常が揺れ始めます・・・。韓国題は「런」。日本公開は未定のようです。
 5位「思い出の黒いゴム靴」は韓国のアニメ。本作の原点は1992年「少年チャンプ」で連載が始まった「黒いゴム靴(검정고무신)」というイ・ヨンイルの漫画。当時はまだウェブトゥーン時代以前で、93年刊行のシリーズ最初の単行本(下左画像)も時代を感じさせます。(「映画のチケットが10ウォン、牛1頭が5万ウォンだった時代」とあるのはいつ頃?) その後TVアニメとして放映され、世代を超えて人気を呼んできましたが、映画化は今回が初めて。物語の基本設定は、わんぱく小学生ギヨンと中学生ギチョル兄弟を中心とした家族や友人たちの平凡な日常の中での笑いと感動を描いたもの。今回のアニメでは、原作者イ・ヨンイル作家が脚本に参加して、新しいエピソードとビハインドストーリーが盛り込まれているそうです。原題は「추억의 검정고무신」です。
     
【右は「思い出の黒いゴム靴」のポスター。描き方がずっと洗練されています。】
 6位「ザ・タックス・コレクター」はアメリカのアクション。デビッド(ボビー・ソト)とクリーパー(シャイア・ラブーフ)はウィザード(ジミー・スミッツ)の下で働いており、LA地域の傘下のギャングたちを管理して上納金を集金する最高のパートナーです。ところがある日、ウィザードの因縁の相手のコネホ(ホセ・マーティン)がLAにに舞い戻ってきます。コネホは組織を丸ごと呑み込もうとしますが、2人はしぶとく生き残り、組織とすべてのことを守るために無慈悲な血の戦争を開始します・・・。韓国題は「택스 콜렉터」。日本公開は未定のようです。
 7位「マリー・キュリー」(仮)はイギリスのドラマ。原題は「Radioactive(放射能)」ですが、内容はマリー・キュリー(ロザムンド・パイク)の伝記なので、韓国題「마리 퀴리」同様「マリー・キュリー」を仮題としました。マリー・キュリー(1867~1934)は周知のように物理学と化学の2分野でノーベル賞を受賞した唯一の人物です。彼女の放射能研究の成果はその後の世界に大きな影響を及ぼしました。しかし女性科学者の草分けである彼女の人生は決して順風満帆なものではありませんでした。女性に対する偏見との闘い、被爆による健康状態の悪化等々に苦しめられ、また夫のピエール(サム・ライリー)の事故死という悲劇にも見舞われました。ピエールの死後、マリーはその弟子で既婚者のポール・ランジュバンと恋に落ちますが、そのことはマスコミによって袋叩きに遭ったとか・・・。科学研究だけでなく社会的にも大きな貢献をした彼女ですが、フェミニストとしても先駆的存在です。そんなマリーの波瀾に満ちた人生を、本作は新しい視点から描き出していきます・・・。あ、監督はイラン出身の女性監督マルジャン・サトラピではないですか! あの漫画「ペルセポリス」を書き、そのアニメも監督した・・・。本作の日本公開は未定か? こういう作品はぜひ観てみたいんだど・・・。ん、Amazonが配給権取得?

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・上映館数
1(新)・・マリー・キュリー・・・・・・・・・・・・・・11/18・・・・・・・7,293・・・・・・・・・・16,543・・・・・・・・139 ・・・・・・403
2(2)・・オクトノーツとグレート・バリア・リーフ・・11/12・・6,153 ・・・・・・21,904・・・・・・・・147 ・・・・・・166
3(1)・・劇場版 ヴァイオレット・・・・・・・・・11/12・・・・・・・6,087・・・・・・・・・・32,630・・・・・・・・280 ・・・・・・103
       ・エヴァーガーデン(日本)
4(26)・・アンティゴネ ・・・・・・・・・・・・・・・・11/19・・・・・・・3,102・・・・・・・・・・・5,627・・・・・・・・・52・・・・・・・122
5(4)・・きみに読む物語 ・・・・・・・・・2004/11/26 ・・・・・・・2,402・・・・・・・・647,241・・・・・・4,600・・・・・・・・74

 1・4位の2作品が新登場です。
 1位「マリー・キュリー」については上述しました。
 4位「アンティゴネ」はカナダのドラマ。2019年の第44回トロント国際映画祭でカナダ長編映画賞を受賞した作品です。カナダのモントリオールに定着した移民者一家の末っ子アンティゴネに悲劇がふりかかります。2人の兄のうち1人が警察の銃で撃たれ死亡し、もう1人はその場で拘束されたのです。愛する家族を守りたいアンティゴネは兄の代わりに監獄に入ります。勇気ある彼女の行動に対して、人々はSNSでアンティゴネを英雄とみなし始めますが・・・。韓国題は「안티고네」です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする