ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国内の映画の興行成績 [10月30日(金)~11月1日(日)]と人気順位 ►小さなノートPCで配信を観るのはツライ! ►韓国のクィア映画「ツタ」のタイトルはト・ジョンファンの詩のタイトルだったのか

2020-11-03 23:04:02 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
>▶先週<東京国際映画祭>のチケット予約で悪戦苦闘し、「これに比べると韓国文化院のオンライン<コリアン・シネマ・ウィーク 2020>はまだマシ・・・」などと書きました。そして1日に「ソリクン」、2日に「風水師」と続けて観ましたが、やや戸惑いつつもなんとか接続し、無事観ることができました。しかし、今日3日の「晩夏」は2日前までに届くはずの案内メールが来てない! どうなってんだ!? 伝え聞くところでは、先の2作品もせっかく当選したのに観られなかった人(複数)がいるとか・・・。そんな予感がしてたんだよなー、やれやれ。それに私ヌルボの小さなノートPCのディスプレイでは観づらいし、音量も不十分。大きなスクリーンとか大画面のTVで、ソファーに寝そべって観られればねー・・・。しかしそれでも操作が面倒だし、映画館の座席に座った時のような解放感がぜ~んぜんない。やっぱりこういうのは昭和の映画ファンには向いてません。

▶配信映画の数少ない利点の1つは一時的に止めたり戻ったりできること。「風水師」のエンドクレジットで撮影場所をきっちり確認すると、ドラマや映画の撮影地としてよく使われる所がドサッと上げられていました。以下の通りです。
 韓国民俗村・龍仁大長今テーマパーク・河東崔参判宅・聞慶セジェ道立公園・醴泉草澗亭・河東土地セット場・聞慶セジェ第二関門・高敞邑城・丹陽メタセコイアの道(尊賢閣セット)・扶安映像テーマパーク・楽安邑城・慶州独楽堂・釜山アホプ山の森・慶州五峰山朱砂庵・全南求礼華厳寺・南揚州綜合撮影所 ※私ヌルボが行ったことがあるのは韓国民俗村は当然として、あと聞慶の2ヵ所と楽安邑城。まだまだです。

▶今回の記事で注目した韓国映画は、「ツタ」というクィア映画。このジャンルにも新たな視点からの作品が出てきているように思いました。タイトルの「ツタ」はどういう意味?と思ったら、ト・ジョンファン(都鍾煥)の詩とのこと。詳しくは一番下の記事で・・・。

▶上記の2つの韓国映画の評価と寸評です。「ソリクン」★★★(題名はパンソリの歌い手のこと。また「春香歌」とともにパンソリの代表的演目の「沈清歌」の梗概を全然知らないとまずいかな?と・・・。女の子の名のチョンも沈清の<清>です。途中ミュージカルという触れ書き通りに現代風の大合唱もあってビックリ!)  「風水師」★★★(最初の辺りで興宣[フンソン]なんて男が登場するので「もしや」と思ったらやっぱり・・・。韓国の人たち、史実と虚構の継ぎ目はわかってるのかな? 最後の方で洋服の若者が2人登場して風水師に独立のための武官学校を建てる適地を尋ねる・・・という予想外の展開にビックリ!)
 「風水師」の原題は「명당(明堂.ミョンダン)」。風水学上の良い土地のこと。しばらく前ハングルサークルで教わりました。で、武官学校の適地として風水師が教えた所は白頭山の西、西間島。そして新興武官学校と名前をつけます。ということで、時代劇と思って見ていたらアレアレ。そういえば18年に韓国陸軍がその名も「新興武官学校」と題したミュージカルを制作して上演してますね。文在寅大統領は抗日独立軍が韓国陸軍の淵源というようなことをたしか語っていましたが、新しい歴史が着々と創られていってるようです。

         ★★★ NAVERの人気順位(11月2日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
  ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(1) ディア・マイ・ジーニアス(韓国)  9.96(28)
②(2) アルピニスト - あるカメラマンの告白(韓国)  9.93(27)
③(3) 復活: その証拠(韓国)  9.54(320)
④(7) さすらいのシェフ(韓国)  9.54(108)
⑤(6) フォードvsフェラーリ  9.49(8,177)
⑥(-) 私を救わないでください(韓国)  9.48(93)
⑦(8) ブータン 山の教室  9.45(109)
⑧(9) カイラスへ行く道(韓国)  9.44(142)
⑨(-) きみ、ありがとう:キム・ホジュン 生涯初のファンミーティングムービー(韓国)  9.40(1,372)
⑩(-) 帰郷[落葉帰根]  9.40(20)

 新登場の作品はありません。韓国映画がさらに増えて7作品になりました。

     【記者・評論家による順位】

①(1) 燃ゆる女の肖像  9.22
②(-) 小さな光(韓国)  8.67(3)
③(2) 恐怖分子  8.22(9)
④(3) ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語  8.00(10)
⑤(新) マーティン・エデン  8.00(8)
⑥(4) ハラボジの家(韓国)  7.83(12)
⑦(5) マロナの幻想的な物語り  7.83(6)
⑧(6) フォードvsフェラーリ  7.63(8)
⑨(7) 台北ストーリー  7.40(5)
⑩(8) トムボーイ  7.33(9)

 ⑤「マーティン・エデン」が新登場です。日本では9月18日に公開されています。韓国題は「마틴 에덴」です。

 ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績10月30日(金)~11月1日(日) ★★★
        「サムジングループ英語TOEIC班」が独走で2週連続1位

【全体】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・週末観客動員数・・累計観客動員数 ・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・サムジングループ・・・・・・・・・・10/21 ・・・・・・・384,252 ・・・・・・・931,708・・・・・・8,182 ・・・・・1,583
       英語TOEIC班(韓国)
2(2)・・担保(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・9/29・・・・・・・・・54,163・・・・・・1,665,264・・・・・14,287 ・・・・・・・620
3(4)・・音もなく(韓国)・・・・・・・・・・・・10/15・・・・・・・・・25,259 ・・・・・・・392,566・・・・・・3,463 ・・・・・・・486
4(再)・・セッション ・・・・・・・・・・2015/3/12 ・・・・・・・・22,970・・・・・・1,622,931 ・・・・12,948・・・・・・・・482
5(新)・・ただ悪から救いたまえ・・・・・10/28 ・・・・・・・・18,307 ・・・・・・・・・26,731 ・・・・・・・233 ・・・・・・・475
       ファイナルカット(韓国)
6(3)・・ミスタートロット・・・・・・・・・・10/22 ・・・・・・・・17,161・・・・・・・・126,596・・・・・・1,098 ・・・・・・・257
       :ザ・ムービー(韓国)
7(6)・・TENET テネット・・・・・・・・・・・・8/26・・・・・・・・・15,385 ・・・・・1,964,325・・・・・18,128 ・・・・・・・135
8(5)・・劇場版 Fate/stay night ・・・10/22・・・・・・・・・11,182 ・・・・・・・・49,976・・・・・・・・455 ・・・・・・・111
       [Heaven’s Feel]III.spring song(日本)
9(新)・・テスラ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10/28 ・・・・・・・・・・9,145・・・・・・・・・17,651・・・・・・・・140 ・・・・・・・424
10(17)・・21ブリッジズ・・・・・・・・・・・・1/01 ・・・・・・・・・・6,542 ・・・・・・・111,140・・・・・・・・861・・・・・・・・・28
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 今回の新登場は5・9位の2作品です。
 5位「ただ悪より救いたまえ ファイナルカット」、これを新登場と言えるか疑問です。インナム(ファン・ジョンミン))の過去の話と、より強烈なアクションシーンが計6分14秒追加されたとのことですが・・・。原題は「다만 악에서 구하소서 파이널컷」です。
 9位「テスラ」は、現クロアチア出身の物理学者で電気技師・発明家のニコラ・テスラ[1856~1943]の生涯を描いたアメリカの伝記映画。ニコラ・テスラ(イーサン・ホーク)は交流電流伝送システムによりエジソン(カイル・マクラクラン)との競争で勝利を手にします。しかし小さな勝利に満足できなかった彼は世界のパラダイムを変える大発明に着手します。それは情報を全世界に無線で送信する革新的な技術でした。莫大な研究費が必要な彼はモルガン財閥の創始者J.P.モーガンの支援を求めるようになり、コロラド州の研究所で空に稲妻を打ち上げる研究を開始します・・・。韓国題は「테슬라」です。エジソンとテスラをめぐる物語は、6月に公開された「エジソンズ・ゲーム」でも描かれましたが、どうも「テスラ」の方はオーソドックスな伝記映画とは言い難い手法を用いているのが逆効果だったとみえて評価は高くなさそうです。日本公開は未定のようです。

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・上映館数
1(再)・・セッション ・・・・・・・・・・・・・・・2015/3/12・・・・・・22,970・・・・・・・1,622,931・・・・・12,948・・・・・・・482
2(13)・・マーティン・エデン・・・・・・・・・・・・・10/29・・・・・・・3,579・・・・・・・・・・・4,945 ・・・・・・・・・48・・・・・・・・59
3(5)・・復活: その証拠(韓国) ・・・・・・・・・・・10/08・・・・・・・1,778・・・・・・・・・・12,716・・・・・・・・107 ・・・・・・・・23
4(18)・・ツタ(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10/28・・・・・・・1,431・・・・・・・・・・・3,267 ・・・・・・・・・25 ・・・・・・・・93
5(1)・・熊出没:原始時代・・・・・・・・・・・・・・・10/22・・・・・・・1,403 ・・・・・・・・・・7,027 ・・・・・・・・・40 ・・・・・・・・39

 2・4位の2作品が新登場です。
 2位「マーティン・エデン」については上述しました。
 4位「ツタ」は韓国のドラマ。今年の第21回全州国際映画祭の招待作として上映され注目された作品です。ウンスとイェウォンは女性同士のカップルで、幸せな同棲生活をしていました。そんなある日、ひどい交通事故に遭ってウンスの姉ウネは死亡し、ウンスも重傷を負って障碍者となってしまいます。またウンスとイェウォンは孤児になったウネの娘スミンを引き取ることになります。事故の直後、「私たちは家族じゃない⁉ 家族がこんなこと起こったからといって捨てられるの?」とイェウォンが言うと、ウンスは「家族? 誰が私たちを家族と認めてくれるの?」と答えます。たまたま何かの風の吹き回しのように一緒に暮らすようになった3人の女性は家族になることを望み、(類似?)家族として生きようとします。しかし世間の規範はそれを妨げます。この映画の真の美徳は結末にあります。本作はありきたりなハッピーエンディングやサッドエンディングの代わりに、ト・ジョンファンの詩「ツタ」のように、迂回してでもあせらず少しずつ幸せに向かって進む道を選択します・・・。本作がクィア作品として画期的なのは、昨年以降公開された「ユニに」から「燃える女の肖像」まで、2人が恋に落ち、互いを愛する場面がメインであるのに対して、本作では現実的に差別意識をはじめ厳しい社会の中で家族として暮らしていく姿に力点を置いていること、だそうです。なるほど・・・。原題は「담쟁이」です。


    담쟁이

       도종환

 저것은 벽
 어쩔 수 없는 벽이라고 우리가 느낄 때
 그때
 담쟁이는 말없이 그 벽을 오른다.
 물 한 방울 없고 씨앗 한 톨 살아남을 수 없는
 저것은 절망의 벽이라고 말할 때
 담쟁이는 서두르지 않고 앞으로 나아간다.
 한 뼘이라도 꼭 여럿이 함께 손을 잡고 올라간다.
 푸르게 절망을 다 덮을 때까지
 바로 그 절망을 놓지 않는다.
 저것은 넘을 수 없는 벽이라고 고개를 떨구고 있을 때
 담쟁이 잎 하나는 담쟁이 잎 수천 개를 이끌고
 결국 그 벽을 넘는다.

   ツタ

        ト・ジョンファン(都鍾煥)

 あれは壁
 どうしようもない壁だと私たちが感じるとき
 そのとき
 ツタは無言で その壁を登る。
 一滴の水もなく 一粒の種も生き残れない
 あれは絶望の壁だと言うとき
 ツタは急がず前に進む。
 一寸でも必ず大勢が一緒に手をつないで登ってゆく。
 青く絶望をすべて覆い尽くすときまで
 間違いなくその絶望を捕らえて放さない。
 それは越えられない壁だとうなだれるとき
 ツタの葉一枚はツタの葉数千を率いて
 ついには その壁を越える。