ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

★2015年 ヌルボの個人的映画ベスト10

2015-12-31 23:03:03 | 韓国映画(&その他の映画)
一昨日の晩「ストレイト・アウタ・コンプトン」で今年の映画は観納め。これがちょうど100本目でした。20年近く(?)前に104本観て以来久しぶりの3ケタ。
 今年の場合は、6月韓国文化院で開かれた<1960・70年代日韓名作映画祭>で10作品、12月に京橋のフィルムセンターでやっていた<韓国映画1934-1959創造と開花>では全21作品中16作品と、まとめて観たのが大きかったです。毎年恒例の<コリアン・シネマ・ウィーク>も7作品観たし・・・。

 で、その100作品の中で何が一番良かったかというと、今回はとくにむずかしい・・・。12月25日の「毎日新聞」(夕)の<シネマの週末>欄(→コチラ)では、10人の執筆者が邦画・洋画のそれぞれについて選んだ今年の3作を載せていて、邦画では7人が「恋人たち」を挙げていたので、私ヌルボ、キネカ大森に急遽観に行ったのですが、洋画の方は実にマチマチ。3人以上が挙げた作品はなく、2人が挙げたのも「マッドマックス怒りのデス・ロード」と「国際市場で逢いましょう」の2作だけという分散ぶり。
 とくに傑出した作品がない場合、映画評論家や熱烈な映画ファンの間でも、その人が何を重視するかによって評価は大きく分かれますからねー。
 そのモノサシの成分を仮に分けてみると、人によりそれぞれの配合率が違うというわけです。
 私ヌルボ自身は、[A]娯楽性=20%、[B]社会性=50%、[C]芸術性=30% といったところかなと思っています。
 [A] 娯楽性重視=ストーリー性、視覚効果、アクションのすごさ等に重点
 [B] 社会性重視=実社会の問題を扱い、メッセージ性がある
 [C] 芸術性重視=象徴的・抽象的な映像表現やストーリー展開による思弁の深化に重点

[2015年]
①ボーダレス ぼくの船の国境線
②顔のないヒトラーたち
③セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター
④雪の轍
⑤マッドマックス/怒りのデスロード
⑥神々のたそがれ
⑦幕が上がる
⑧海街diary
⑨ストレイト・アウタ・コンプトン
⑩KANO~1931海の向こうの甲子園~
  [次点] バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)・人生スイッチ・恋人たち・傷だらけのふたり許三観
  [別格(初見の旧作)] ショア・裸の島
赤色は韓国映画または韓国・北朝鮮に関係する映画です。

 さて、今回のベスト10について若干コメント。
 韓国オタクのブログなのに、ベスト10内に韓国ナシとは・・・。冒頭に記したように1930~70年代の作品26作品以外で、新作も同じく26作品観たんですけどねー。話題を呼んだ韓国での大ヒット作「国際市場で逢いましょう」ももちろん観ましたが、ヒットの理由は理解できるものの、同時代の政治史を完全に避けて描いた点がどうも引っかかって・・・。
 韓国映画ゼロに加えて、日本映画も1つだけ、他の東アジア映画も1つだけというのは、ヌルボとしてはこの数十年なかったことかもしれません。
 1位「ボーダレス ぼくの船の国境線」は今年99番目に観た作品。上述の<社会性>の観点からは話題になった「野火」よりも戦争の描き方にリアリティがある上、その個別の戦争を戦争一般の問題に昇華した構図、舞台となった廃船の図柄の<芸術性>の面でも、最後までドキドキ感が持続する<娯楽性>の面でもポイントが高い。いや、リクツ抜きで心に訴えるものがありました。
 2位「顔のないヒトラーたち」は、ドイツ人が作ったナチス映画という点に日本人はもっと関心を寄せてもいいのでは・・・。50年代後期まではドイツ人の多くはアウシュビッツという地名さえ知らなかったとは、知らなかったです。
 3位「セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター」、最初はこれを1位にしようと思っていました。ただ、考えてみればこの作品の魅力は「映画の魅力」というよりサルガドの撮った「写真の魅力」だな、と考えてちょっと下げました。が、飢餓に喘ぐ人々の姿といい、北極海の孤島のセイウチの群れといい、ふつうの人々の住む世界がその<外側>と接するギリギリの境界の世界を撮った写真はそれたけで強烈なインパクトがあります。これも未見の方にはぜひオススメの1本。
 4位「雪の轍」は、説明しがたいですが、深い余韻あり。
 5位「マッドマックス/怒りのデスロード」のような純然たる娯楽作品をベスト10に入れるのもヌルボとしては画期的。映画賞や多くのサイト等で1位に挙げているのも当然だと思います。以下は8月25日の記事から。
 アタマで観る映画やハートで観る映画とは別に、カラダで観る映画というのがあって、21日に観た「マッドマックス 怒りのデス・ロード」がまさにコレ。しかしよくもまああんな突拍子もない発想が出てくるものです。武装トラックの前面に立って火炎を噴射する(!)ツイン・ネックのギター&ベースをかき鳴らすドゥーフ・ウォーリアーとか、山海塾みたいに(笑)ツルツル頭で白塗りの若者軍団とか、棒高跳びのようにしなうポール攻撃とか・・・、ハハハのハです。それにしても筋肉が疲れた!
 6位「神々のたそがれ」は、2012年の個人的1位「ニーチェの馬」と共通する要素がある、ワケのわからんような映画(笑)ですが、もっとグチャグチャしてて、もっと汚い(笑)です。
 7位「幕が上がる」は、黒木華が本領発揮! ももクロもなかなか頑張ってました。報知映画大賞でグループ賞受賞(→コチラ)、良かったネ!
 8位「海街diary」、こういう繊細な内面描写は日本映画の伝統か。目黒シネマ、是枝監督自身のチョイスでこの作品と成瀬巳喜男監督「鶴八鶴次郎」(1938)の2本立て上映していたのはナットク。
 9位「ストレイト・アウタ・コンプトン」を観て、「ラップを武器に闘った」というヒップホップグループ、N.W.Aをめぐる1990年前後のアメリカの状況を初めて知る。ヒップホップ好きの皆さんとはちょっと距離のありそうな私ヌルボですが、そういう人たちの青春の熱気といったものにふれたのはよかったと思います。
 10位「KANO~1931海の向こうの甲子園~」という<親日>映画を、あのすごい<抗日>映画「セデック・バレ」の馬志翔(マー・ジーシアン)監督が撮っている点に注目! 韓国映画ではこういう作品は作れないだろうなー・・・。
 [別格]の「裸の島」は、1960年の新藤兼人監督作品。乙羽信子(35歳?でも若い!)と殿山泰司をはじめセリフがない(!)のに紛れもない秀作。
 全然韓国映画がないのも気がひける(?)ので、[次点]に申し訳みたいに2作品入れましたが・・・。

 ちょっと思い直して、特別に韓国映画だけのベスト10をしかたなく載せておきます。

①傷だらけのふたり
②許三観
③明日へ
④ベテラン
⑤ハン・ゴンジュ 17歳の涙
⑥レッド・カーペット
⑦技術者たち
⑧おばあさんの花(ハルメコッ)
⑨犬どろぼう完全計画
 ⑩足球王

  [在日枠] 水の声を聞く
  [別格(旧作)] 馬鹿たちの行進森浦への道陽山道

 上のベスト10同様、いや、それ以上にヌルボ独自の視点によるベスト10だと思います。
 1位「傷だらけのふたり」は、今連続大ヒットで乗りに乗ってるファン・ジョンミン主演、2位「許三観」も快調に次々ヒットを飛ばしいてるハ・ジョンウが監督・主演した作品です。(<コリアン・シネマ・ウィーク>で観ました。) そんな当代の大人気俳優の出演作なのにアクションシーンもなく、日本ではほとんど話題にならず、「許三観」の方は一般公開もナシ。韓国内での興行成績も今イチでした。にもかかわらずヌルボが感動したのは、どちらも主人公どこまでも一途な、女性への、あるいは子供への愛情が描かれているからです。韓国映画の伝統が、いや伝統的な韓国がちゃんと息づいている、と思いました。
 3位「明日へ」は、原題は「カート」。あのスーパーの・・・。つまり大型スーパーの女性従業員たちの不当解雇をめぐる闘争を描いた事実に基づく作品で、これもとても感動した、というか義憤にかられました。日本の労働事情にも問題はごろごろありそうなのに、こういう作品は作られないのかな?

 次に、今年とくに記憶に残った俳優について。
 女優では、とくに<目ヂカラ演技>が印象的だった若手女優3人。二階堂ふみ(「この国の空」)と、藤野涼子(「ソロモンの偽証」)と、黒木華(「幕が上がる」)(←まだ「若手」と言える?)。
 男優では、篠原篤(「恋人たち」)が最近観たということもあってか強い印象が残っています。
 あ、タラタラ書いてたら今年も残り1時間切ったゾ! 年越しそばを作らなければ!
 では皆さん、よいお年を。

[参考]過去7年のベスト10

[2014年]①イーダ②グランド・ブダペスト・ホテル③ジャージー・ボーイズ④罪の手ざわり⑤ソウォン/願い新しき世界ソニはご機嫌ななめ怪しい彼女テロ,ライブ⑩ある精肉店のはなし
 [次点] 60万回のトライ
     私の少女(扉の少女・ドヒや)・祖谷物語 おくのひと

[2013年]①セデック・バレ②少女は自転車にのって③きっと、うまくいく④もうひとりの息子⑤嘆きのピエタ⑥あの頃、君を追いかけた⑦シュガーマン 奇跡に愛された男⑧ハンナ・アーレント⑨王になった男建築学概論
 [次点] 殺人の告白 ・凶悪
 [別格] 阿賀に生きる
 [多くの人に観てほしい作品] ファルージャ イラク戦争 日本人人質事件…そして

[2012年]①ニーチェの馬②ヒューゴの不思議な発明③プンサンケ(豊山犬)ワンドゥギ拝啓、愛しています⑥ロボット 完全版⑦桐島、部活やめるってよ⑧三池 終わらない炭鉱(やま)の物語⑨かぞくのくに⑩ピアノマニア 別格:春夏秋冬そして春

[2011年]①サラの鍵②テザ 慟哭の大地③愛する人④彼とわたしの漂流日記⑤アリス・クリードの失踪⑥阪急電車 片道15分の奇跡⑦牛と一緒に7泊8日⑧未来を生きる君たちへ⑨ゴーストライター⑩エンディングノート

[2010年]息もできない過速スキャンダル冬の小鳥④ゲキシネ蛮幽鬼(日)⑤実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(日)⑥告白(日)⑦瞳の奥の秘密⑧飛べ!ペンギン⑨川の底からこんにちは(日)⑩ONE SHOT ONE KILL

[2009年]①グラン・トリノ②ディア・ピョンヤン(日)③妻が結婚した母なる証明チェイサー⑥チェンジリング⑦劔岳 点の記(日)⑧チョコレート・ファイター⑨戦場のワルツ⑩牛の鈴音

[2008年]①ダークナイト②パコと魔法の絵本(日)③ウリハッキョ(日)④休暇(日)⑤シークレット・サンシャイン⑥ラスト・コーション⑦接吻(日)⑧おくりびと(日)⑨闇の子供たち(日)⑩火垂るの墓・実写版(日)
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