学問空間

『承久記』『五代帝王物語』『とはずがたり』『増鏡』『太平記』『梅松論』等を素材として中世史と中世文学を研究しています。

知的資産の構築

2008-06-27 | 中世・近世史
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2008年 6月27日(金)06時38分53秒

清水克行著『室町社会の騒擾と秩序 』
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中世は騒擾の世界ではなく秩序も存在した。公権力が定める制定法とは別の多様な法習慣や民間習俗を解明。外国史や人類学の成果も取り入れて騒擾の原因や秩序のあり方を探り、新たな室町社会像を描き出す。
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清水克行氏の発表は一度聞いたことがありますが、この本は未読です。
外国史の成果の中には、直接的な言及がされているかはともかく、Kanunも当然入っているんでしょうね。

清水克行氏の研究に刺激されて最も優れた論文を書ける潜在的な可能性を持った学者は、もしかしたら東欧の小国あたりにいるのかもしれないですね。
現在は日本語の壁があるから、日本の歴史学者の研究成果は、どんなにレベルの高い研究であったとしても世界中の学者が共有できる知的資産にはなれないですね。
「世界遺産」も重要だろうけど、過去の遺物の保存ではなく、将来に向かって新たに知的資産を構築して行く方が、遥かに大事なのではないかと私は思います。

ブルガリア出身でアメリカ在住の政治学者であるBranislav L. Slantchev氏は、日本の歴史や文学に大変興味を持っていて、優れたホームページを作っている方ですが、この人のように知的能力が極めて高く、意欲に満ちた人であっても、日本の歴史の概要を把握するために読んでいるのは、George Sansomの「A History of Japan」程度のようですね。
もちろん Sansomの本は立派なものではあるけれども、あまりに古くて、現在の日本の歴史学のレベルとは程遠い存在です。
しかし、Sansomの本に代わるような概説書を提供する努力すら、日本はやっていませんね。

http://gotterdammerung.org/index.html
http://gotterdammerung.org/japan/literature/classics.html
http://gotterdammerung.org/japan/history/
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