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天皇陛下の腹話術?

2016-07-30 | 天皇生前退位
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2016年 7月30日(土)10時06分59秒

昨日のNHKニュースで、来月8日くらいに「天皇陛下がお気持ちを表される」だろうという予測が報じられましたが、私はどうもNHKのやり方が情報操作めいているように感じられて、薄気味悪いですね。
この前、NHKの「生前退位」ニュースのときにも書いたように、私は、実質的に天皇に皇室典範改正の発議権を認めるような対処は、天皇に「国政に関する権能」を認めることになってしまい、憲法違反ではないかと思っていますが、これは別に特異な見解ではなく、普通に憲法の一般的な教科書を読んだ人は同じような結論になるはずです。

NHK天皇退位報道への違和感

昨日のNHKニュースでも、

------
象徴天皇制のもと、天皇は憲法の第4条で、「国政に関する権能を有しない」、つまり、国政には関与しないと定められています。一方で「生前退位」の実現には、皇室典範の改正や特別法の制定など、国会における法律的な措置が必要になってきます。天皇陛下が退位の意向を公に表明されれば、政治的な発言と受け取られかねず、制度の改正に直結すれば、憲法との整合性も問われかねません。
このため、今回のお気持ちの表明では、天皇陛下は「退位」という言葉や直接的な意向の表明は避けられる見通しです。


と述べていますね。
そして、このNHKニュースが正しいのであれば、今後、天皇陛下が公式に発表されるであろう表現には憲法違反を疑わせる字句は一切ないけれども、しかし、国民は陛下のお言葉を文字通り素直に受け取ってはならず、その背後には実際には「生前退位」のご意向があり、従って陛下が「皇室典範の改正や特別法の制定など、国会における法律的な措置が必要」と考えられていることを理解しなければならないことになります。
一連のNHKニュースにより国民が天皇の言葉を素直に受け取れない、素直に受け取ってはならない状況が徐々に作り上げられている訳ですが、こうした情報環境は国民と皇室の関係として健全なものなのですかね。
天皇陛下の腹話術、といったら不謹慎ですが、国民が天皇陛下のお言葉を素直に受け取れず、どこから出ているかも分からない声にも耳を傾けなければならないとすれば、それは決して健康的な状況ではなく、現憲法下でそれなりに安定した皇室制度を傷つける可能性が大きいのではないか、と私は懸念します。

>キラーカーンさん
亀レスですが、私はキラーカーンさんと異なり、天皇の地位が「主権の存する日本国民の総意に基く」(憲法1条)ものである以上、正規の憲法改正手続きを経て主権者である国民の意思が示された場合には、天皇制度の廃止も可能、即ち憲法改正の限界を超えるものではないと考えています。
また、現憲法下で「治天」などという地位を論じる余地は全くなく、無意味な混乱を招くだけと思っています。
私とキラーカーンさんの見解を混同する人は実際にはいないでしょうが、以前、某歴史研究者が私と筆綾丸さんの見解をごちゃ混ぜにして妙な批評をし、迷惑に感じたことがあるので、天皇という微妙な問題を扱っていることも考慮し、念のため、私がキラーカーンさんに賛成している訳ではないことを述べておきます。

ラウンド君の教訓

※キラーカーンさんの下記二つの投稿へのレスです。

譲位等々 2016/07/15(金) 23:41:54
確かに、純砲理論的には

>>実質的に天皇に皇室典範改正の発議権を認めるような対処は、天皇に「国政に関する権能」を認めることになってしまい

になってしまいます。
ただ、逆に、皇室典範については

皇族の身分に関することだけに「臣下」の国会議員が改正を議論すること自体が不敬

という心理状態に陥っている人も、ツイッターランドでは見受けられますし、
「当事者」である天皇・皇族の意向に反する典範改正議論ができるのか
という実際的な議論もありますので、

皇室典範が「法律」であることの妥当性についても疑問なしとはしません
皇室典範は「宮内庁令」とした方がよいのかもしれません

憲法的には摂政又は国事行為の委任で事足りるので「退位」が唯一絶対の解ではないのですが、
「太上天皇」として何らかの活動を行いたいという希望がおありなのであれば
天皇陛下自身の「(身心)の責任能力」がないことが前提となる摂政や国事行為の委任は
都合が悪いということになるのでしょう。
(太上天皇としての活動ができるなら、摂政や委任の必要はないということになります)

ネットのどこかで見ましたが今上陛下限定の「特別措置法」という方法もあるという気もしてきました。

建前的には、宮内庁長官・次長のように、「陛下の発言」の存在を否定して「一般論」として
皇室典範改正議論を進めるという方策を採らざるを得ないでしょう。

個人的には、皇室典範のみならず、
1 国事行為、公的行為、私的行為の整理(7条解散の明記、「総選挙の告示」という誤字の訂正を含む)
2 憲法尊重義務を天皇、摂政だけではなく、皇族を含める
3 皇位継承件を有する皇族が絶えたときには、最近親の「旧皇族」およびその男系子孫に継承
4 太上天皇の位置づけ
等々、この際に憲法まで改正したほうが「美しい」法体系になるとは思いますが

追伸(駄レス)
>>呉の海軍工廠における武蔵の竣工式
文中にあるように、武蔵は三菱長崎での建造なので、竣工式は三菱長崎ではという気がします
(一番艦の大和は呉工廠での建造でしたが)

>>艤装員長
艦艇が艤装段階になれば、乗組員要員は艤装員として、竣工に備えます
ということで、一般的には、艤装員長になれば、そのまま「初代艦長」に横滑りします。

諸々 2016/07/19(火) 00:16:14
>>その部分を変更するのであれば、本格的な憲法改正の問題になってしまいますね。
「なしとはしない」というもって回った表現になったのは、まさにそういうことなのですが・・・

>>天皇に関する第一章は国民主権の裏返しの問題ですから、
ということで、象徴天皇制の改正は 「憲法改正の限界を超える」 というのが個人的見解です
(憲法学上は、「天皇制の廃止は憲法改正の限界内」というのが「定説」ですが、
 それは、憲法学会内の「反天皇制」という「空気」を反映しているのではないかと推測しています)

比較憲法上
「国政に関する権能」がなくても、君主や元首であるの明らかなのにもかかわらず
天皇が君主(元首)か否かは「定義による」とするのが、憲法学会上の「定説」となっているのは
「天地がひっくり返っても」天皇を、君主とも元首とも呼びたくないという
反天皇制イデオロギーという憲法学会の「悲痛な叫び」であると個人的に解釈しています。

>>上皇が係る政争
譲位により、天皇と治天の君が分離されるとなれば、興味深い展開になります。
譲位が認められていない現行法制では

天皇=治天

となるのでしょうが、現行憲法上、皇室の長は何ら規定がないので

天皇≒治天

となっても、憲法上は許容される可能性があります
で、皇位継承規則と治天継承規則とが異なっていても、憲法上許容される可能性があります

>>野心的な天皇が退位して政治運動に身を投じ、総理大臣になったら困る
ブルガリアでそんな話があったような・・・

そもそも、譲位の習慣自体が「ガラパゴス」的継承だったのが、
「ジャパンオリジナル」の「国政に関与しない君主」という象徴天皇制が、
第二次大戦後の「立憲君主制」のスタンダードとなったから、
他国でも譲位が行われるようになったといえます。

(『英国王のスピーチ』でも、「前国王が健在の中即位した【初の】英国王」というせりふがありましたから)

日本国憲法の条文で、世界が手本にしたのは、「第9条」ではなく、
【象徴天皇制】だったという、「護憲派」からすれば、【あってはならない】現実だったわけです。

コメント
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