大福 りす の 隠れ家

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辰刻の雫 ~蒼い月~  第193回

2023年08月18日 21時08分53秒 | 小説
『辰刻の雫 (ときのしずく) ~蒼い月~』 目次


『辰刻の雫 ~蒼い月~』 第1回から第190回までの目次は以下の 『辰刻の雫 ~蒼い月~』リンクページ からお願いいたします。


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辰刻の雫 (ときのしずく) ~蒼い月~  第193回



そろそろとスカートをめくり上げ自分の足を確認する。 結構上まで傷がある。 高くまでスカートをたくし上げていたのを今更にして後悔する。
マツリが薬草を塗っている足が動かされる。 後ろに傷が無いかを確認しているのであろう。
最後にはマツリの手で内腿まで薬草を塗られた。 そしてその腿にも晒が巻かれる。

(これってサイアク恥ずかしい。 もっと下でスカートを括っておけばよかった。 そうなると走るに邪魔だっただろうけど)

手足に晒が巻かれ肘も膝も簡単に曲げられない。 手足を突っ張ったお座り状態のぬいぐるみのようだ。 ぬいぐるみ・・・欲を持って言えばテディベア。

・・・そこまで可愛くないか。

手足を前に出している紫揺の頭を撫でる。 どうしてだかそうしたくなる。

「痛い思いをさせたな」

「そんなことない」

言われて初めて傷の痛みを感じ始めた。 ピリピリと痛い。 薬草が効いてきたのだろうか、それともずっとこの痛みはあったのだろうか。

「杉に呼ばれただけだし」

改めて紫揺の五色としての力を感じる。 紫揺は呼ばれれば走ってしまうと言っていた。 五色と木は呼応しているということか。
その呼応の仕方は五色それぞれなのかもしれない。 きっと紫揺だから走ってしまうのだろう。 紫揺に木との呼応の落ち着きがみられれば走ることも無くなるだろう。

手足を突っ張っている紫揺を抱きしめる。
己は・・・紫揺の持つ力の支えになれるだろうか。

「・・・マツリ?」

突っ張っている手は抱き返してはくれない。
紫揺の身体を離すと童女(わらわめ)のようにマツリを見ている。 何度もその頭を撫でてやる。

「なに?」

いつものように訝しんだこ憎たらしい目が返ってくる。
頭を撫でていた手を頬に、耳の後ろに。 そして口付けた。
そっと離された唇が言ったのは「紫は女人か童女か分からんな」だった。 そしてもう一度口付けられた。

―――どういう意味だ。

言ってやろうとした時に、外で何やらがやがやと聞こえる。 その中に杠の声がある。

「杠官吏お待ちください!」

「待ってなどおられません!」

「いや、官吏さん! 今はまだ入っちゃいけねーから!」

押し問答どころか、次には何やら人が投げ飛ばされたような音が聞こえた気がする。

「杠が来たようだな」

マツリが手足の突っ張った紫揺を抱き上げ板間から下りた時に戸が開けられた。 めちゃくちゃ勢いよく。

「紫揺!!」

杉山の男達の腕を撥ね退け杠が飛び込んできた。
ん? と杠の後ろで誰もが首を傾げる。 聞き違いだろうか?

マツリに抱きかかえられている紫揺。 手足に晒を巻きその手足が突っ張っている。

「一般的な薬草は塗った。 だがそれで間に合うかどうかは分からん」

今の杠は混迷している。 マツリが小声で「紫だ」と言い、続ける。

「宿に連れ帰ってくれるか」

マツリに抱きかかえられている紫揺を杠がぶん取る。 空になったマツリの腕が悲しい。

(違う引き取り方があろうがっ)

「しゆ!・・・紫さま!」

混迷している杠にマツリの声は届いていたようだ。

「杠、何でもないよ。 マツリが大袈裟なだけ」

「何でもないことなど! これほどに・・・」

紫揺が勝手気ままをしたのなら、我が妹に自業自得を教える。 だが先ほど、五色のことで何かあったらしいとマツリが言っていたと武官に聞かされた。

「宿に戻ります」

ここに居ては医者も薬草師も簡単に来ることは出来ない。 それならば無理があっても中心に戻る。

「頼む」

マツリは勿論のこと武官や杉山の者たちに見送られ、杠の乗ってきた馬に二人で乗りで宿に戻って行った。

中心に戻ってくると馬上の紫揺の姿を見た武官たちの間ですぐに噂は広まった。

「え? 崖から落ちられた?」
「いや、川に流されたと聞いたが」
「いやいや、杉のてっぺんから跳び下りられて着地失敗、でそのまま坂を転げ落ちたと」

杉山に居る武官たちは十日ごとに交代である。 丁度今日が交代の日であったから、あと十日は正しい話は伝わらないだろう。

部屋に入ると抱えていた紫揺を下ろす。 すぐに額に手を当て耳の後ろにも手を当てる。

「熱は出ていないな」

「だからマツリが大袈裟なんだってば。 それより杠は硯の山に戻って」

「この状態の紫揺を置いていく筈が無いだろう。 それに岩石の・・・硯の山は杉山ほど問題があるわけじゃない」

紫揺に合わせて岩石の山ではなく、硯の山と言い変えた。

「でも毎日遅くまで見てるんでしょ?」

「紫揺が気にするな。 それよりどんな葉だったとか、木だったとか全く覚えていないのか?」

どうしてこんな状態になったのかは馬上で聞いた。

「シダは覚えてるんだけどなぁ」

踏んづけてしまってよく滑った。

「明日まで熱が出なければいいが、それでもかぶれたり爛(ただ)れたりすることがあるかもしれない。 異常を感じたらすぐに教えろよ」

「明日まで? じゃ、明日は硯の山に行ける?」

「紫揺・・・」

「今日、杉山で問題を起こしてる人と話したの。 でね、明日硯の山に行ってもらうことにしたの。 ほら、声をかけた以上責任があるし」

「腹が減ってるだろう」

しゃがんで紫揺の頭を撫でながら言う。

「話し逸らしてない?」

「逸らしていない」

杠が持っていた包みを開ける。 宿の者に言って毎日二人分の握り飯を握ってもらっている。 だが今日は三人分。 杠が杉山に行った時、三人で食べるつもりだった。 一つは杉山に行った時にマツリに渡しておいた。

「塩がよく効いていて美味いぞ」

―――それは、おにぎり。

懐かしい。

開けた一包みを紫揺に渡しかけて肘が曲がらない事に気付いた。 ちょっと待てよ、と言い、マツリが巻いた晒を解いていく。
肘にもその内側にも潰した薬草が塗られている。 これではこのような巻き方になっても仕方がない。

「食べている間だけ、解いておこう」

開けた包みを紫揺の前に置く。 右手の晒だけを解いた。 茶碗を持つ手が別に必要なわけではない。 右手が動けば十分だ。 それに手の甲にも傷があるが、掌には怪我はない。

そっと手を伸ばし一つの握り飯を手にする。 三角の握り飯。 手にしたのは海苔が巻かれていないものだったが、あとの二つには海苔が巻かれている。 手にした海苔が巻かれていない握り飯は、ジャコと胡麻と青菜が一緒になって握られている。
一口パクリと食べる。 丁度いい握り具合。 それに胡麻の風味の中に醤油の味が程良く染み込んだジャコと青菜。

―――懐かしい。

美味いだろう、と言いかけた杠の口が止まった。 紫揺の目が潤んでいた。

「どうした?」

「美味しくって・・・懐かしくって」

東の領土からやって来てたった三日。 懐かしいは無いだろう。
だったら日本で同じものを食べていたということか。

「そうか」

俯き加減になっていた紫揺の頭を何度も撫でてやる。
とうとうポロポロと涙を流した紫揺だったが、泣きながら他の二つも食べた。 涙の塩味と相まって塩がよく効いていただろう。

どうして泣いているのかを訊かない杠。 泣くほど美味しかったのかと思われているのだろうか。

食べ終わると濡らした手巾で手を拭いてもらい再度晒が巻かれた。 そして最後に顔も拭かれた。 涙のあとを拭いてくれたのだろう。 こうして動けなくては殆ど赤ちゃんになったようだ。
不便極まりない。
夜になりマツリが戻ってきた。 すぐに身体の状態を視られたが特に異常は無いと言われた。

「明日の朝まで待って熱が出なければ良いがな」

「この布・・・晒はいつまで巻いておくの?」

「状態による」

「不便なんだけど」

伸び縮みする包帯なんて無いだろうが、それらしい物が無いのだろうか。

「たしかにそうだな」

握り飯を食べた時のことをマツリに言うと、マツリも確かにそうだなというように頷いている。

「肘の傷さえ治れば良いのだがな。 だが今日一日はこれで我慢しておけ。 膿んだり腫れたりしてしまっては余計長引く」

言われてみればそうである。

夕餉は三人分を部屋に持って来させた。 やはり右手の晒だけを解いてお行儀悪く、茶碗を持たずに食べた。
夕餉の席で杉山の者たちには紫揺が杉から聞いてきたことを伝えたとマツリが話し出した。

「かなり驚いておったわ」

「それはそうでしょう、杉と話せるなんて」

杠にしても以前マツリから、紫揺が大木と話したということを聞いたが、とてもじゃなく簡単には飲み込めなかった。

「守ってくれそうだった?」

「あの者たちは杉に感謝をしておる。 万が一にも試そうとする馬鹿者が居たとしても、我のような結果で終るだけだ」

「かなり怒ってたよね、川石蹴ってたし走り出したし」

「・・・」

「そうなのか?」

紫揺が杠に頷いてみせる。

「いつから見ておったのだ」

「何度も何度もUター・・・くるっと回って元の位置に戻ってるとこから」

「くるっと回って?」

真っ直ぐに歩いているつもりだったのに。

「声かけても聞こえなかったみたいだし、見えてもいなかったみたいだし」

「それは・・・反対側からは様子が見えるということか? マツリ様が川石を蹴られた時に音は聞こえたか?」

「うん」

「反対側からは全く普通ということか・・・不思議な」

杠が不思議がっている横でマツリはとんでもないところを見られていたと苦い顔をしている。

紫揺を布団に寝かせると、何度も紫揺の様子を見にマツリが部屋に訪れた。 熱を出している様子はない。 単なる切り傷に終わるようだ。
それにしてもこの身長でよくも顔に傷をつけなかったものだ、と考えていると窓の外から人の声が聞こえてきた。 耳を澄まして聞いてみると、野太い声が喉を詰まらせ泣いているように聞こえなくもない。

「ううう、紫さま・・・紫さま、うぐっぐ・・・どうかご無事、で。 死なないでぇぇ」
「むぅ、紫さまにも失敗があって・・・ぐぐぐ、当然で御座い、うぐ、ます」

マツリの瞼が半分下がる。 これを少なくとも今晩ずっと聞かされるのか・・・。
明日にでも紫揺が元気になればその姿を見せなくては堪ったものではない。 それにしても失敗とはいったい何のことなのだろうか。

翌朝になり寝不足の顔をしたマツリが紫揺の居る部屋を訪れた。

「起きておったか」

「うん」

昨日は早くに寝かされた。 充分寝た。

「よく眠れたか?」

「うん」

あの声に睡眠を邪魔されるようなことは無かったようだ。 まぁ、何度見に来ても起きる様子は見せていなかったが。

「具合はどうだ」

「どこも何ともない」

戸の外に杠が待機していたのだろう。 杠、と声をかけると桶を手に持った寝不足の顔をした杠が入ってきて、紫揺の頭をひと撫でしてから腕の晒を、マツリが足の晒を解きだす。
マツリに協力するように、腹筋を使って片足を上げようとしたが、マツリが自分の足の上に紫揺の足を乗せた。

腕の晒を解き終えた杠が桶の水を染み込ませた手巾でそっと磨り潰した薬草を拭きとっていく。 腕の方はそんなに酷くはない。
左右の腕を上げたり横にしたり、まんべんなく腕の傷の様子を見る。

「膿んでいる様子もありませんし、腫れてもいませんね」

「なによりだ」

マツリを見てみると、ようやく片足の薬草を拭きだしたところである。

「桶の水を替えてきます」

桶の水は既に薬草色に変わってしまっている。

「頼む」

やっと腕が解放されたと、曲げ伸ばししようとしたのをマツリに止められた。

「肘の傷が開くとまた巻かねばならんぞ」

「バンドエイドがあればいいのに。 カットバンとか」

マツリがチラリと紫揺を見る。 頬を膨らませ後ろに手を着きそっくり返っている。 紫揺の言ったそれがどんな物かは分からないがどこの言葉かは分かる。
夕べ杠の部屋に行くと握り飯のことを聞かされた。 “帰りたいか” とは訊けない。 出来もしないことを訊いてもどうにもならない。 それに同情なんてものを欲しがる紫揺ではないだろう。
それにしてもこの画。

(杠以外には見せられんな)

そっくり返っている紫揺の足元でマツリがチマチマと薬草を拭き取っている画。

戸が開いて杠が入ってきたが、マツリの元に桶を置くと部屋を出て行った。 気を使ってくれたらしい。 それがマツリに対してなのか、紫揺に対してなのかは分からないが。
全ての傷を拭き終わり再度傷を見ると、膝下に気になる傷が幾つかあった。 それ以外は単なる切り傷で終るだろう。

「じっとしておれ」

立ち上がると戸の向こうで待っていた杠に何やら言っている。 自分の足を見ると腕とは比べ物にならないくらいにとっても賑やかだ。

「うわぁ・・・やっちゃったなぁ」

“最高か” と “庭の世話か” が見れば大変なことになる。
今日で本領に来て四日目。 東の領土には五日は戻らないとは言ったが・・・。

「もっと長めに言っておけばよかった」

「何がだ?」

いつの間にかマツリが戻って来て横に座った。

「何でもない。 もう大丈夫なんでしょ?」

少し痺れを感じる箇所はあるが、なんということは無い。

「痺れは感じておるか」

咄嗟に後ろに着いていた手で頭を覆った。
マツリが大きな溜息を吐く。

「・・・あ」

そうでは無かったのだと思い出す。

「感じておるのだな」

「・・・ちょっとだけ」

そろそろと手を下ろす。

「膝上は何ともないだろう」

「・・・うん。 膝下」

「気になる傷がある。 いま杠にそれに対応する練った薬草を武官所に取りに行ってもらっておる」

「毒のある葉っぱだったってこと?」

マツリが頷き、続ける。

「人間にとって毒であっても、あの場には必要な葉なのだろう。 他は何ともないようだがあまり動かさぬよう。 さっきも言ったがまた傷が開くかもしれんからな」

自分の肘を見てみる。 これくらい何ともないと思うが、将来の御内儀様の持つ傷ではない事は分かっている。

「今日、杠と一緒に硯の山に行っていい?」

昨日のことが気になっているのだろう。 杠からも聞いている。

「その衣装・・・衣でか?」

衣裳は宮の言葉。
ズタズタに破けた衣。 昨日の状態で着替えなど出来なかった。 まさかマツリに手伝ってもらう訳にはいかないし、元より着替えなどない。
さすがにこの衣で外に出てはいけないことくらい紫揺にも分かる。

「無茶をせんと約束するか?」

言ってきくような紫揺ではない。 マツリが杉山に行った後に何をしでかすか分かったものではない。 それならば無茶をさせないように約束させる方がいいだろう。

「うん」

「我は今日も杉山に行かねばならん。 我が出た後、市が開いてから杠と衣を買って岩石の山に行くといい」

「うん、分かった」

市は朝一番には開かない。 岩石の山に行くのが遅れるが、それは致し方ない。 それに杠に付き合わせて悪いとも思う。 昨日も半日で終わらせてしまったというのに。
杠が見たというのに気が済まないのか、紫揺の腕を取って傷を見だした。

「ふむ、足もそうだが、あの薬草はよく効いたようだな」

塗らなければこれほどに治っていなかっただろう。 赤く筋が残っている程度だ。

戸の外から声がした。 杠だ。

「よいぞ」

戸を開けて入ってきた杠が不思議なものを持っていた。 片手の木箱は分かる。 あの中に薬草が入っているのだろう。 だがもう片方の手に持っている風呂敷の包みはなんだろうか。

紫揺のスカートは膝上までめくられているが、先ほどのように太腿まで見えているわけではない。 それに膝下に薬草を塗るとさっき言っていた。 早々に部屋を出る必要は無いだろう。
木箱をマツリに渡すと風呂敷を下に置き、どかりと座ると風呂敷を開けだした。

「早馬で宮から丁度着いた所だった。 女官殿からだそうだ」

「え?」

マツリも何が入っているのかと、まさかこれだけ大量の菓子ではないだろうなと、木箱を開けながら杠の手元を見ている。
すると風呂敷から出てきたのは紫揺の衣だった。

「え? うそ!?」

宮を出る時に頼んでおいた衣?
杠が取り出して手を伸ばしてきた紫揺に渡す。
間違いない。 下穿きの端っこを引っ張るとキュロットになっている。 注文したのはそこだけだった。 上衣までは言っていなかったが、紫揺の今着ている衣と同じような物を縫ってくれている。 色違いのセットが二セット。
この短期間に。

「母―さんがー夜なべーをして・・・の世界じゃない」

今度また宮に来た時まででいいと言っていたのに・・・。
分からないことを口ずさんいる紫揺だが、日本の歌なのだろか東の領土の歌なのだろうか。

「変わった形だな」

「宮を出る時に頼んでおいたの。 これなら女人の衣に見えて動きやすいから。 でもこんなに早く出来上がるなんて思ってもみなかった」

「ふーん、たしかに女人の衣では馬に乗りにくいだろうな」

「走りにくくもあろうな。 紫に女人の衣を着せるのがそもそも間違っておるのかもしれんわ」

どういう意味よ、と言いたかったが自分でもそう思っている。

「ほぉー、あの者たちはほんによく気が付くな。 菓子も入っておるではないか」

風呂敷の中にはしっかりといつもの袋が入っている。 やはり菓子が入っていたかとは思うが人並みの量である。
マツリが木箱の中の瓶を取り出し、同じく木箱の中に入っていた匙で気になる傷に塗りだす。

「朝餉の前に食べるのではないぞ」

袋に手を伸ばそうとしかけていた紫揺の手が止まる。
杠が微笑んで紫揺の頭を撫でてやり「あとでな」と言うと袋を座卓の上に置いた。

両足に薬を塗り終え、木箱の中にあった晒に手を伸ばそうとした時、今初めて気付いたその手が止まった。

「何かの間違いか?」

「いいえ、それが、どうしてもこれでと。 その、紫さまは女人だからと」

普通、包帯のように巻く晒は白である。 それが・・・

「女人だからと言って、どうして・・・」

どうして濃い桜色なのか。

「紫揺に生き返っ・・・お役に立ちたいからと、用意をして待っておりました」

夕べの嗚咽交じりの嘆きの呪詛をまざまざと思い出す。
紫揺が木箱を覗き込む。

「わっ、可愛い」

可愛いのか?

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