大福 りす の 隠れ家

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辰刻の雫 ~蒼い月~  第90回

2022年08月19日 22時19分33秒 | 小説
『辰刻の雫 (ときのしずく) ~蒼い月~』 目次


『辰刻の雫 ~蒼い月~』 第1回から第80回までの目次は以下の 『辰刻の雫 ~蒼い月~』リンクページ からお願いいたします。


     『辰刻の雫 ~蒼い月~』 リンクページ




                                  




辰刻の雫 (ときのしずく) ~蒼い月~  第90回



両手でサークレットを持つ。 目の前に近づけ、ぐるりと金細工を見る。

「すごい・・」

金細工師が顔を輝かせた。
暫く金細工を見ていたが正面から紫水晶を見る。

「これが、あの紫水晶?」

「はい。 やはりあのままでは少々。 ですので曲線には削らせていただきましたが、必要以上には削っておりません」

にわかに信じられない。 周りに有るか無いか分からない程の金細工に囲まれている紫水晶は、綺麗に曲線を描きカットはされているが、それだけでこれほどに輝きが出るものなのだろうか。

「きれい」

「はい。 紫さまがこの石を選ばれた時から、わしと目が合った時以上に輝いております」

「え?」

紫水晶から目を離して飾り石職人を見た。

「紫さまがその石をお気に召されたと同じ様に、その石も紫さまを気に召したんでしょう。 紫さまに相応しい石になりたいと思ったんでしょうか、それとも紫さまにお気に召されたことへの喜びが内から輝きと出ているのか。 そこまでわし等には分かりませんが、わしの手元に戻って来た時には、石に輝きが増したのだけは分かります」

そんなことがあるのだろうか。 でも輝きが全く違うのは分かる。 目が紫水晶から離れない。

「いかがですか?」

「・・・いかがなんてもんじゃないです」

「はい?」

「私には勿体ないほど・・・。 本当にこれを私に?」

飾り石職人が相好を崩し「もちろんでございます」と答え、その横でも金細工師が頷いている。

「有難うございます。 大切にします」

「紫さま、おつけしましょうか?」

紫揺の後ろに座っていた葉月が言う。
本来なら此之葉が居るはずなのだが、数日前から此之葉が独唱の家に入って出てこない。 此之葉に代わって葉月が紫揺に付いていた。

「あ、うん」

そっと紫揺から受け取ると此之葉が紫揺の頭につける。 巧緻な金細工が隠れてしまって勿体ないが、横と後ろの髪の毛を上から被せる。

額に巧緻な金細工に囲まれた紫水晶が輝いた。
職人二人が納得したように頷く。

微調整に来た時にはこうして客観的に見ることは無かった。 あくまでも職人としての目でサークレットと紫揺の頭部だけしか見ていなかった。

「よくお似合いです」

飾り石職人が言う。
そして職人二人が何度も頷く。

「ホントに特注ね、すごく似合ってる」

前に回って来た葉月も言う。
こうして頭に付け紫揺全体で見ると、金細工の巧緻さも輝ける紫水晶も、紫揺の体の一部のようにさえ見える。

「そんなに見られたら・・・恥ずかしいんですけど・・・」

葉月が手鏡を持って来た。 受け取り我が身の顔を映す。 自分で自分の顔を鏡で見ているなんてところを人に見られるなんて恥ずかしいが、どんな姿を見られているのかが気になる。

「あ・・・」

石は決して大きくもなく派手なものではなかったけれど、それでも素晴らしいものだった。 だが今この鏡の中に映っているものは、自分の額の上にあるものは素晴らしいというものではない。 高嶺に咲く花だと感じていたがそうではなく、ただただ凛として不動を感じさせる。 そしてまるで今までずっと額にあったようにさえ。

(私に馴染むように作ってくれた? これが職人の手?)

「ご自分で見られてどうですか?」

そっと葉月が訊いてきた。

「・・・見た時とつけた時と違う」

然もあらん、と職人が頷く。

手鏡を下ろすと再び職人を見た。

「あの、本当に素晴らしいです。 有難うございます」

お辞儀をしかけて葉月に止められた。 此之葉からの入れ知恵であろう。

「いつでも工房の方にお越し下さい。 お気に召されたものを使いお作りいたしますので」

「はい、有難うございます」

「あ、それとこちらは大きな紫水晶の敷物です。 お使いください」

絹で出来たお座部。 木箱から大きな紫水晶を出した時に下に手巾を敷いていたが、ちゃんとしたものを作ってくれたようだ。

紫揺がそれを受け取ると、これを切っ掛けに紫揺から何かを作って欲しいと言ってもらえたらと期待しながら、職人二人が満足そうな顔をして部屋から出て行った。

少しして「葉月・・・」と戸の向こうから塔弥の声がした。

「塔弥? どうぞ」

戸が開くと塔弥が座していた。

「あの・・・言いにくいんだけど、お付きたちが見た・・・」

紫揺の額にはまだサークレットがつけられている。 それが目に入ったのだろう。 塔弥の言葉が途中で止まった。

お付きたちは職人が帰っていくのを待っていたのだろう。
紫揺と葉月が目を合わせる。
止まっていしまった塔弥の言葉は、お付きたちがサークレットを見たいと言っている、そういう事なのだろう。

「あ、じゃ、外して―――」

「いえ!! そのままで!!」

塔弥の爆音声が響いた。 上げかけた紫揺の手が止まる。
塔弥の爆音声がスターターピストルになったのか、ドドドと後ろからお付きたちがなだれ込んできた。 塔弥が下敷きになっている。

一人二人と立ち上がると紫揺の部屋に入る。 最後に湖彩が立ち上がり部屋に入ると、押しつぶされていた塔弥が「お前ら・・・」と憎々し気に口にする。

塔弥の言うことなどに聞く耳を持たず、座卓を挟んでお付きたちが座し、目の前の紫揺の額に目を注いでいる。
ゴクリと誰かが喉を鳴らした音がした。 それほどに静かだ。 さっきのなだれ込んできた音が遥か彼方のことだったように。

なだれ込んできたことに呆気に取られていた紫揺だったが、ふと一人で行った書蔵の時のことを思い出した。 あの時はまだこの領土に残るか残らないかも決めていなかった時だった。

一人書蔵にいて、そろそろ戻ろうかとした時、書蔵の扉が勢いよく開いてそこに額から汗をにじませ肩で息をしていた阿秀がいた。 その後に塔弥も入ってきて膝に手を付き、荒い息を繰り返していた。 と思ったのも束の間。 突き出した塔弥の尻に二人がぶつかり塔弥が前につんのめった。 その後にもお付きたちがなだれ込んできていた。

(まるであの時と同じ。 そう言えばあの時、塔弥さんは額と鼻の頭から血を出してたっけ)

そんなことを考えていたが今はそんなことを回想している時ではない。 我に返り、静かに下りていた帳を破る。

「あ・・・あの、梁湶さん、有難うございました。 こんなにいいものを作ってもらいました」

サークレットを外そうと手を動かしかけた。

「いえ!! そのままで!!」

塔弥と同じことを言われてしまった。 一言一句違わずに。 そしてこちらも爆音声で。
どうしたらいいものかと葉月を振り返る。

葉月にしても遡ればお付き達に部屋に入って良いなどと一言も言っていない。 此之葉ならそこを窘(たしな)めただろう。 だがお付きたちの気持ちが分からないでもない。
紫揺に頷き、一つ溜息を吐いた葉月。

「梁湶、紫さまの仰ったように、思いもしないほどの物が出来た、ました。 紫さまも納得、ご納得され喜んで・・・おられます。 梁湶のお蔭よ、です。 サークレット、職人は “額の煌輪(こうわ)” と呼ぶようにするということです」

此之葉であればこう言うだろうと頭に置きながら話したが、言葉尻が葉月と此之葉がミックスされてしまった。
だがそんなことも気にすることの無いお付きたち。

「煌輪・・・まさに」

ぽつりと梁湶が言った。
単なる首輪や腕輪と違う、単なる額の輪ではない。

「紫さまがおつけになった時と、額の煌輪だけ見る時とでは全く違うの・・・ます」

「え?」

葉月に話しかけられていてもずっと紫揺を見ていたが、この時初めて葉月を見た。

失礼を致します、と言って葉月が紫揺から額の煌輪を取った。

「あ・・・」

と言う声が誰かから漏れた。

葉月が絹の座布団に額の煌輪を置き、すっと木箱を滑らせた。 お付きたちが額の煌輪を近くで見る。
葉月の言っていたことが何となく分かる。

この額の煌輪は単体で見ると素晴らしく精巧で緻密な金細工、そして光り輝く紫水晶が見てとれる。 だが・・・紫揺がつけるとそれ以上になる。 輝きが煌になり、金細工はまた違ったものに見える。

自分の額からサークレットである額の煌輪が外され、お付きたちの目から逃れられた紫揺。

「職人さんの手ってすごいですよね。 つけてて全然違和感がないし、身体の一部って言うか、生まれた時から・・・あ、それは言い過ぎか。 でもそれに近いくらいずっと一緒だったみたいな気がする」

「紫さまにそう仰っていただければ職人冥利に尽きますでしょう」

額の煌輪を正面に見ていた梁湶が言う。

「うーん、お世辞とかじゃなくて事実だからなぁ。 それ以外の言葉がないですから」

「それが何よりもでしょう」

どうしてかこんな時に、ふと思い出したことがあった。 葉月が言ったことだ。

梁湶なら女に頬なり額にキスをするだろうと。 そう言われればそんな気がする。 梁湶はいつも落ち着いている。 焦るところを見たことがない。 余裕を持っているのだろうか、それが女の人との事にも繋がるのだろうか。 それに阿秀のように相対する姿勢がスマートだ。 阿秀と違うところと言えば、どこか影を持ったような微笑みではなく・・・いや、そういう目で見ると多少似ているか。 だが阿秀は誰もに対してそうだが、梁湶は紫揺に対してだけだ。 梁湶は対、紫と言う目で見ているのだろう。 それは気遣いだろう。 阿秀とは違うモノ。

「どうされました?」

「え・・・」

梁湶の声が耳に入った。

「いえ、じっと一点を見られていたので」

その一点は己の顔だが。

「あ、何でもないです」

葉月が笑いを抑えるように横を向いた。 紫揺の心の中が丸見えだった。


塔弥と葉月はあの時、何もかもを聞いた。 いや、正確には誰がということは聞いていないが。

『首筋って・・・』

マツリと紫揺の関係・・・紫揺が言った互いに怒鳴り合うことから考えると、さすがの葉月もそれはどうかと考える。

『えっと、その後、口はなかったんですか?』

『は!? どうしてそうなるの!? そんなことしたら赤ちゃんが!』

『はい?』

はい? と訊いた葉月に、紫揺が紫揺の知る定説を恥も外聞もなく、正々堂々と説いた。 口同士でキスをすると赤ちゃんが出来ると。

『はぁ?』

葉月の呆れた声と反対に塔弥の顔がどんどん赤くなる。

『えっと・・・紫さま? 赤ちゃんがどこから生まれてくるか知ってる?』

『・・・お尻の穴からじゃない事は知ってる』

どうして塔弥の居る前でそんなことを訊かれなければいけないのか・・・。

小学校低学年の性教育のスライド授業で習った。 その感想文で “お尻の穴から赤ちゃんが生まれるって知りました” と書いた。 戻ってきた感想文の返事には “よくスライドを見ていなかったみたいね。 スライドではお尻の穴じゃありませんって言っていましたよね” と書かれていた。 だからお尻の穴から赤ちゃんが生まれるのではないと知っている。

葉月がどうしたものかと溜息を吐いた。 ここでアレコレと教えるいいチャンスなのか、今はそんなことはどうでもいいことなのか。 塔弥を見たいが、きっと顔を下げているかアワアワしているだけだろう。

紫揺は相手がマツリとは言っていない。 だが言わずとも、本領とこの領土のルールを知りたいと言っていた。 この領土というのは本領一つに絞らない為のカモフラージュだろうし、本領から帰って来てから紫揺の憂鬱は始まったのだ。 それにマツリが山の中を徒歩で送ってきたことはお付きたちから聞いている。 紫揺が言わなくとも相手が誰かは塔弥でも・・・いや馬鹿でも分かる。

マツリのことがある。 マツリとこれからどうなるかは分からない。 そんな時に口にキスをされて、想像妊娠になどに結びつかれては困る。 それにマツリのことがなくなったとしてもこれからのことがある。 この無知を放ってはおけないだろう。

『とにかく・・・どこにキスをしようとも、じゃなくて、されようとも、それが許嫁となる証にはなりません』

紫揺の訊きたがっていたことはこれだろう。

『そうなの!?』

はい、と言って頷くと、それより、と葉月が続けた。

『紫さま? 生理があるでしょう?』

『うん』

『血はどこから出てるか知ってる?』

『えっと・・・アバウトに』

『アバウトって・・・それじゃあ、日本に居る時、生理の時はどうしてたの?』

『ナプキンを適当に当ててぇ・・・そしたら大体の位置が分かるから、次に当てる時は真ん中に命中するように当てる』

『はぁ?』

『えっとね、中学卒業間近で生理が始まったの。 でもすぐに高校でクラブを始めたら止まったの。 再度始まったのは高校卒業前。 半年に一回くらいだったかな? いまもまともにないし。 三,四カ月に一回だし。 だからまだそんなにナプキンのスペシャリストになってないの』

『スペシャリストとかそんな問題じゃなくて・・・基本・・・』

言い終えた葉月の口からは溜息しか出ない。
塔弥がどんな顔をしていいのか分からないが、所在なげにどんどんと下を向いているだろうことは想像できる。 それも顔を赤くして。

『塔弥、いいわよ。 あとは私が話すから』

葉月がそう言って塔弥が席を外し、その後に葉月から性教育を受けた。 それは信じられないものだった。

『紫さまの歳まで知らなかったらショックは大きいだろうけど、これは知らなくちゃならない事ですから』

そしてこうも言った。

『いいですか、これで男を嫌いにならないで下さい。 世の中の夫婦はみんなそうして子供を授かっているんです。 汚いものでも毛嫌いするものでもないんです。 子を残すに必要なことなんです』

そう言いながらずっと背中をさすってくれていた。
葉月が気遣う程には傷ついてはいないつもりだ。 単にショックが大きかっただけ・・・。 自分の愚かさに。

よく考えればわかる話だったではないか。
恋人同士がキスをして子供が生まれるわけではない。 あ、いいや、その時には婚姻届けを出していないからだとどこかで思っていた。 結婚をした者同士がキスをすると子供が生まれると思っていた。
だがそうであったのならば、おかしなことが沢山あったではないか。 浮気して子供が出来たとか、シングルマザーとか、ワイドショーで色々言っていたではないか。

全てを繋げて考えることが出来なかったということだ。

それに地下の城家主の屋敷の屋根裏でも見た春画。 駅のホームで電車の中で畦道で、いやらしいと吐き捨てる写真や挿絵を目にしていた。 そしてテレビに映るドラマでも。
あれがそうだったんだ。

何も考えようとしなかった、気付かなかった。 そんな自分の愚かさに。

話を聞き終えたとき

『欲しい子供の数だけしなくちゃいけないってことなんだ』

そう言ったら 『どうでしょう?』 と少し笑った葉月だったが、それ以上言及する元気はなかった。



本領で楽しく過ごしその後に思いもしないことがあったが、紫揺に何があろうとそれでも日は過ぎていく。
東の領土の祭が終わり一月経った満月の夜がきた。
数日前に立てられていた櫓(やぐら)、それと紫揺が上がる台。

民が年に二度、三月と四月に作るものだ。 各領土でも本領でも三月を三(み)の月、四月を四(よ)の月というらしい。

三月生まれの紫揺だから誕生の祝いの祭は三月にあってもよさそうだが、東西南北の領土において、この東の領土は春を治めている。 春は三月。 だからして三月は領土の祭が行われる。

三月に領土を上げての祭があるが故、三月生まれの紫揺の誕生祝は翌月に繰り越される。 そして祭の日は満月の日と決められている。

台の上に紫揺が上がった。 そして祭が始まった。 櫓の上で音楽が奏でられる。 日本にはない楽器で。 民が思い思いに紫揺への誕生の祝いを身体で踊りで表現している。 日本の盆踊りとは全く違うが、櫓の周りを周って移動しているのは同じだ。

この光景を初めて見たのは、まだこの地に残るということを決めていない時だった。 それを知らない民が、紫揺が紫として東の領土に帰って来た、紫揺に会えた喜びを表現した踊りが三日続いた。
一日目はそんなこととは知らず見ることがなかったが、二日目、三日目は目にした。 そして昨年の誕生の祝の祭。 今年でこの踊りを四度見たことになる。

踊り終わった民が紫揺の反応を待つ。 初めての時には花を咲かせ、二度目の時には声を張り上げて有難うと言った。 そして昨年の祭でも声を張り上げこう言った。

『紫は領土に居ます、これからもずっと。 皆の幸せを願っています』 そう言った。

櫓の周りには踊り終えた民がいる。 額の煌輪は遠くにある櫓からでは見えない。
紫揺が声を張り上げる。

「今から皆さんの所に行きます! 一緒に踊りましょう!」

先月の領土の祭の時にも民と踊っていたが、今回は紫揺の誕生祝の祭だ。 領土の祭は楽しく過ごす。 紫揺の誕生祝の祭は・・・。 何十年と待ってやっと戻てってきた紫なのだ。 紫さまの誕生を祝いたい、ただそれだけが民の想いだった。 紫揺はそれを分かっている。

紫揺の声に民が歓声を上げる。

「紫さま、それは!」

昂揚してしまった民が紫揺に雪崩れ込むかもしれない、紫揺に危険が生ずる。 紫揺が台を下りようとしたのを領主が止めた。

「大丈夫です。 先月も一緒に踊りましたから」

「ですが! 春の祭と紫さまの祝いはまた違います!」

「額の煌輪を皆さんに見て欲しいんです。 職人さんの手を皆さんに見て欲しいんです」

「職人の手の良さを民は知っています!」

「うーん・・・。 でもこの額の煌輪は今までになかったものと思いますよ?」

「父さん」

領主と紫揺の声を静かに聞いていた我秋が進み出た。

「職人が初めて紫さまに作った物です。 そして今までになかった額の煌輪です。 それを民に披露しても良いのではないですか?」

「・・・」

「ご心配なく。 お付きと私が紫さまにお付きします」

「紫さまに万が一が無いように出来るか」

「はい。 なだれ込む全てを止めます。 この身を呈して紫さまをお守りします」

いや、そんな仰々しいものじゃないから・・・そう言いたかったが言える雰囲気ではないし、そんなことで口論していたらいつまで経っても皆の元に行けない。 額の煌輪を見てもらえない。

いつの間にか秋我の後ろについていたお付きたち。 そのお付きたちが頷く。

「領主さん、えっと・・・皆さん弾けることなく迎え入れてくれると思います・・・よ?」

「紫さま・・・」

領主がこめかみを押さえる。 “・・・よ?” では困る。

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