大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第15回

2013年07月19日 15時15分50秒 | 小説
『みち』 目次

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『みち』 ~未知~  第15回



9時少し前になると森川が

「もうそろそろ9時ね。 男性人ももう全員集まって朝礼が始まるはずよ。 織倉さんの紹介があるから 下に降りましょうか」 と言い、窓を閉め 表の事務所のエアコンのスイッチを入れた。

「これで次に上がってきた時には よく冷えてるわよ」 笑窪を見せた。

階段を下りながら 階段にある窓を全部開け

「暑い、暑い」 と団扇で扇ぐ森川。 ふと琴音を見て

「織倉さん、汗をかかないの?」 不思議そうに琴音の顔を見た。

「この程度でしたら汗は出ませんし 窓を開けていたので 涼しい風が入ってきていましたから」 琴音は自分が汗をかきにくい体質というのをよく知っていた。

「まぁ、羨ましいわ。 私なんてすぐに汗でビチャビチャになっちゃうもの」

「汗が出る方が健康的でいいですよ」

「そうかしら?」

「はい、汗をかかないことは不健康だなっていつも思ってるんです」

「でもこの暑い時に 織倉さんの涼しそうな顔は羨ましいわよ」 琴音の顔をもう一度見てまた扇子で扇ぎだした。

階段を下り、工場に入ると社長を中心に社員が集まっていた。  

今まで琴音が勤めていた会社は 大きな自社ビルで 大人数で働いていた。 それと比べると此処は大違いで 自社建屋ではあるが 今までの会社と比べると 比較にならない。 

だがそれは面接に来ていたときから分かっていた事。 琴音はあまりの人数の少なさに驚いたのだ。 それに殆どが琴音より年上か同年代であろう。 30代と見える数人が 悠森製作所での若い方の社員だ。

(これだけで全社員なの? それに平均年齢が高そう) 心の中で呟いた。 

求人募集で女性の人数は意識をして見ていたが 男性の人数や総人数は 意識をすることがなく 見ていても記憶には残っていなかったのだ。

森川と琴音を見た社長が

「おっ、降りてきたか」

「遅かったかしら?」 森川が社長に言うと

「いえ、丁度よかったですよ。 それじゃあ、朝礼はこれくらいにして 今日から来ていただくことになった 織倉さんです」 社長が琴音を紹介した。

「織倉琴音と申します。 宜しくお願いいたします」 琴音の自己紹介を聞いて 次々と一人一人が自分の名前を言って自己紹介していくが 15人ほどといっても 顔と名前を一致させて スンナリとは覚えられない。

琴音への自己紹介も終わると社長が

「形式的な自己紹介だけであって 一度で全員の名前なんて覚えられないだろ? 少しずつ覚えていくといいからね。 それまでは『あなたは誰でしたっけ?』 って聞くといいから」 

「うふふ、そんな聞き方は出来ないわよね」 森川が琴音をチラッと見て言うと

「そう? じゃ、織倉さんのことは全て森川さんに頼みますね。 さっ、それじゃあ仕事に就こうか」 社長の一声で みんな散り散りバラバラに自分の仕事場所へ移動した。

森川と琴音も3階の事務所に戻ろうと階段を上がったが 2階を過ぎた辺りの階段の途中で琴音の息が切れてきた。 

「あら、織倉さん大丈夫?」 森川が自分を扇いでいた団扇で 琴音を扇いだ。

「あ、大丈夫です。 運動不足ですね」 森川はケロッとしている。 3階までスンナリ上がれるようにならないとね。

3階の事務所へ戻ると 今度は朝のコーヒーを入れることを教えられた。

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