大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第10回

2013年07月01日 17時42分27秒 | 小説
『みち』 ~未知~  第10回


面接当日 

自転車に乗ってマンションを出ると 悠森製作所へは20分程で着いた。 

前回面接を受けた会社は 色んな会社が建ち並ぶならびにあった。 大きな門があり、広い土地の奥に建物があったが ここ悠森製作所は角地に建っていて 門などはなく道路沿いにすぐ玄関だ。 横へ回るとガレージがある。 土地は150坪ほどだろうか。

自転車を道路横に停め 悠森製作所の前に立った。 夏真っ盛りの中を自転車をこいで来たものだから さすがに額に汗が光る。 ハンカチで汗を拭きながら

「ここでいいのかしら?」 キョロキョロと会社の周りを見るが 会社看板も何も見当たらない。

「でもこの地図では確かにここよね。 ちょっと遠目から見ると分かるのかしら?」 もう一度自転車に乗り 少し離れた所から建物を見ると 3階建ての高い所に 『悠森製作所』 と大きな看板があった。

「あ、やっぱり此処だわ。 まだ時間があるわね。 ファミリーレストランでコーヒーでも飲んで時間を潰そうっと」 悠森製作所の地図には 目印としてすぐ近くのファミリーレストランが書かれていたので 少し早めに行ってすぐに分かるようであれば そこで時間を潰す予定であったのだ。 

ファミリーレストランに入ると 冷房がよく効いている。 入った途端、額の汗がスッと引いた。 

アイスコーヒーを注文し 心を落ち着かせようとした琴音であったが その必要は無かった。 緊張も何もしていない。 すぐにアイスコーヒーがテーブルに置かれ 一口飲むとやっとそれに気付いた。

「あら? どうしてこんなに平気なのかしら? え? 私ったら40歳になったから心臓に毛が生えたのかしら。 ふふ、日本髪も結えたりして。 ・・・私ったらこんな時に 何バカなことを考えてるの」 一人で思い一人で笑っていた。

15分ほど経って 「そろそろ行こうか」 と席を立った琴音であった。

最初に来た時と同じように 玄関ドアの横に自転車を置き インターホンを鳴らした。 すると「はい」 と言う声が聞こえた。

「今日面接をお願いしている者ですが・・・」 まで言うと

「はい、どうぞ そのまま中に入って3階まで上がってきてください」 と言う女性の声がした。

琴音は言われた通りドアを開け すぐ横に見える階段を上がっていった。 前回面接を受けた所の裏階段のような階段とは大違いで 大きな窓や小さな窓がある 明るく幅の広い階段だ。 

2階のドアはない。 1階の工場の天井が高く、2階を設けていないのだ。 言ってみれば本来の2階を突き抜けて1階工場の天井があるのだ。

3階まで上がると 広い踊り場に正面には大きな窓、左には大きな姿見があり 姿見の向かいとなる右側にドアがあった。 

ドアをノックし「失礼します」 とドアを開けながら言うと すぐに先程の女性であろうか 小走りに琴音のほうに向かってくる。 

冷房がよく効いている 中から涼しい風を感じた。 奥に座っていた男性が椅子を立ち「いらっしゃいませ」 と声をかけた。 琴音はその男性にお辞儀をし、そして女性のほうを見ると

「今日は さあさ、中に入ってこっちにどうぞ」 ニコニコと微笑む女性が 琴音を事務所の奥にある応接室に案内をした。

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