五感で観る

「生き甲斐の心理学」教育普及活動中。五感を通して観えてくるものを書き綴っています。

表装美術館をつくろう

2014年10月20日 | 第2章 五感と体感
美術展のカタログを開いて、いつもがっかりすることが一つあります。
それは、表装の中身、つまり本紙を描いた、又は書いた作者が中心であり、それを引きたてる為の表装の掲載が全て省かれているということです。表装を手がける者にとっては、修復の仕事に就かない限り、ひたすら美術館で鉛筆をなめなめしながらメモを取って学ぶ以外術はないのです。しかも美術館巡りで精進しようとしても、裂についての情報は皆無です。ともかく多くの表装を見て、学ぶしかありません。できることなら、美術館所蔵の裂の台帳を全て見せていただきたいくらいです。

引きたててこその表装は、時代や流行りによって使う裂が変化していますし、表装依頼者が権力者であったり、財閥の数寄者であったりすると、表装の取り合わせ好みが依頼した本人の好みやセンスがそのまま投影されます。

つまり、経師は、クライアントのセンスや要望によって学びを深めていくのです。

三井記念美術館での唐物を中心とした展覧会は、まさに表装の学習宝庫でありました。これだけの表装を望む現代の作家は、今や希少かもしれません。
ほんとうの贅沢さを一気に拝見出来る機会はなかなかありません。

華美な物を作ることよりも、いかに錆びた風合いを出すかは、とても難しいことかもしれません。
このセンスは、侘びとは何か。寂びとは何かを思索し続けていなくては持てるものではありません。

室町時代に、両極端なセンスを磨こうとした将軍足利義満。
この頃から日本特有の美が洗練されてきたと云っても過言ではないと思います。

唐物を好む文化がもたらしたものは日本人の美意識のアイデンティティに深く融合し浸透していくのです。

李朝の家具や調度品や器も、私自身の原型に触れるくらい好きなフォルムや質感であるものが多く、とても好きです。
華美な物以上に手間と時間を掛けて作られていることに、「真」と「草」の意味を考えさせられます。

職人が作るものは、どうしても風化していくことが前提という考え方があるかもしれませんが、文化継承のために、時代性の分類を見せられるような表装美術館は、そろそろこれからの日本文化の継承のためにとても大切な存在になるのではないでしょうか。

技術を学ぶ者を育てるには、先ず、「見せる」ことが大事なことでありましょう。

日本にとって大切な表装文化の灯を消さない為にも、是非とも学芸員を置く美術館をつくり、継承すべく努力をしていく時期ではないかと、深く思います。
技術だけでなくメンタリティそのものを育てていかなくては、人は育っていきません。

そのような意味においても、今行われている根津美術館での表装や器などの切り継ぎ文化を見せる企画も、一歩進んだものであると評価しています。



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